責任を背負った者に自由な休息を。
「「「「乾杯」」」」
グラスをぶつける音が木霊する。
4つのグラスが小気味よく鳴る。
「…思ったより甘いなこれ」
「私は好き、かな」
「わーちゃんは甘党ですからね。珈琲に砂糖入れないと飲めませんし」
「ちょっと、スプリングフィールド!?」
それぞれが舌鼓を打つ。
今思うと、美少女侍らせて酒飲んでるとか大層な身分だなと思う。
(…見た目は美少女でも、皆戦友なんだよな…)
修羅場を潜り背中を預けた仲なのだ。
変に遠慮がなく心地良い距離感。
「ジョージさん」
「…ん?どうした?」
「えへへ、何でもないです」
トカレフがあぐらをかいて座っていた俺の上に座り、胸に背中を預けてきた。
「何でもない癖に随分と距離が近いな」
「…何となく、です」
「そうか」
頭をポンポンと叩く。
この子も、だいぶ安定はしてきたなと思う。
…でも、大抵この子の前で無茶して泣かしている事実もある。
(クルーガーに悪いけど、タイタンの話は蹴るべきだろうか)
興奮剤の使用が前提となるあの外骨格。
明らかに俺の寿命は削れている。
(これ以上の使用はホント、どうなるか)
酒を飲みながら考えがどんどん悪い方に向かっていく。
体質、ドリーマーと考える事が山積みだ。
特にドリーマー。
(あいつなーんで俺なんかに固執してんだ…?)
最大の謎はそこである。
人間を殺害する為の命令を受けている筈の鉄血製人形達。
それが何でまた目に付いた者ではなく特定個人を狙うのか。
(…考えても埒が明かねーや)
酒が入るとどうしても思考が後ろ向きになる。
そんな時、トカレフがじっとこっちを見ていたのに気が付いた。
「…どうした?」
「…他の女の事考えてますね!?」
「「何ですって!(ガタッ」」
「座ってろ」
何だこれ。
「私と言うものがありながら他の女にうつつを抜かすとは良い度胸ですね。そろそろ教育が必要かしら」
「春、待て落ち着け。目の色変わってんぞ」
「ジョージ。死ぬまで相棒でしょ?
「わーちゃんは酒に弱いなぁ…」
「ジョージさぁん…」
「トカレフは可愛いなぁ(逃避」
「誰の事考えてたんですか」
「真顔でなんてこと言うのトカレフちゃん」
そんなに強いアルコールじゃない筈なのになんか三人ともリミッター振り切れてないか?
「言わないとぎゅってしますよ」
「されたい所だけど手が、春っ、あっ、ちょっと、首、それ首っ!!」
「ぎゅー」
「トカレフ、離して!逃げられない!」
「一生離さないわよ相棒!」
「素面で言われたかったよ相棒!」
ぎゃーぎゃーと屋上が一気に喧しくなる。
すると、屋上のドアが乱暴に蹴り開けられた。
「うるさい!今何時だと思ってるの!!」
パジャマ姿のグリズリーに鉄拳を貰った。
解せない。
…なお、三人とも今日の事を覚えてなかったらしい。
後日聞いたら三人とも顔を赤くして知らないと答えた。
新たなオチ要員、グリズリー。
凄い今更なんですが、基地のメンバーの紹介とか要りますかね…?