…事前にジョージには言わない。
もし、ヤツと繋がってしまっているならどんな影響があるか分からない。
気取られず、迅速に。
頼んだぞ、WA2000。
ジョージと談笑していたM4に目配せする。
…顔が少し強張っていたが、AR-15を連れて部屋から出てくれた。
「それで、どうしたんだリサ?」
ジョージがいつもと変わらない調子で私に問いかけた。
胸が締め付けられる。
「別に。ただ…聞きたいことがあって」
いつもと変わらない様に、相棒として接している様に務める。
「聞きたいこと?」
「…AR小隊、
「…バレてた?」
恥ずかしそうに首をかく。
「アンタと会ってもうすぐ一年。私が見抜けないとでも?」
「敵わねぇな相棒」
私や一部の人に見せる、気を許したような笑顔。
…昨日から渦巻いている黒い感情が鎌首をもたげる。
渡すものか。
「ねぇ、ジョージ…肩、大丈夫?」
悟られるな。
ジョージは感情の機微に敏い。
少しでも油断すれば必ず気付く。
「肩?何だよ相棒、この歳で四十肩の心配か?」
落ち着け。
まだだ。
まだ動いてはいけない。
これで確信した。
ジョージは
「………そう。最近、夢…見てる?」
「え?…まぁ、見てる」
歯切れが悪い。
「その割には叫んで無いみたいだけど」
悪夢を見ていると言う前提で問いかける。
「あー、それか…ちょっと前から毛色が変わってな」
「へぇ、どんな?」
声が震えていないか心配になる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
お願い、違うと言って。
「…オイオイ相棒、いつからお前カウンセラーになったんだ?ちょっと怖いぞ」
「良いから言いなさい!!」
やってしまった。
堪え切れずに激昂してしまった。
恐る恐るジョージを見る。
「わ、判ったよ…なんと言うか、拷問される夢じゃ無くなった。…段々とアイツに意識が向けられてる様な、そんな感じの夢だ」
ぷつん。
私の中で何かが切れる音がした。
まだ、まだよ…堪えて。
「…原因、判る?」
「原因?何でだろうな…っ!?」
ジョージが、急に肩を抑えた。
…ああ、駄目だ。
「あの女…ッ!!」
視界が赤く染まる。
口が、足が、止まらない。
体が言うことを聞かない。
ひっきりなしに電脳が警告を発する。
プロトコルに抵触しようとしているからだ。
「私から仲間を奪って、プライドも、武器も、居場所も、何かもかもズタズタにして!」
ジョージが後退る。
逃さない。
「全て奪って!その上で…」
逃さない、逃さない、逃さない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
「その上でアンタまで奪おうっての!?」
「お、おいリサ…落ち着け」
「もう、これ以上…!!」
………ふと、思ってしまった。
私は…コイツのこと、好きなんだ。
どうしようもなく、愛してるんだ。
「私のモノを奪われて堪るか!!」
右手がジョージの腹部に、めり込む。
お願い、気を失って。
「が、ふっ…!?」
ぎりぎり踏み止まり、膝を着いた。
…ダメ、か。
「ジョージ…恨んでもいいわ。でも、アンタがアイツのモノになるなんて絶対許さない…!!」
「ゲホッ、相…棒…」
「ごめんなさい」
腰からナイフを抜く。
頭が、痛い。
でも、でも…!
私が、私がやらなきゃいけない。
私が、ジョージを救うんだ…!!
ぶすり、と嫌な感触と共に、そんな湿った音がした。