魔法少女リリカルなのは ~ So close, yet so far ~ 作:SAIHAL
小高い丘。そこに二人の女性が立っていた。
一人は先日〈ソウルゲイン〉と渡り合った、鬼面にチャイナドレスの女性。腕を組み、足を鳴らし、表情は見えずとも明らかに不満げな様子だ。
もう一人は透き通るような緑色の長髪を持ち、ボディスーツを纏った女性。直立不動で、じっと視線の先にあるものを見つめている。
視線の先には白い近代的な意匠の建造物。名をホテル・アグスタと言った。
「ったく。たかが陽動に、なんで私まで。あんたがいれば十分だったんじゃない?……
「確かに。ですが、雇われの身でありながら仕事に従事しない、というのもどうかと思われますが」
W17と呼んだ女性の冷静な切り返しに、鬼面の女性は言葉を詰まらせる。
その言葉の通りに、仮面の女性は雇われの身だ。それもW17と同じ組織にである。
しかし、出来ることといえば戦闘以外ほとんどない。頭脳労働も得意だが、自分以上の人間が複数いるなら、別にやらなくてもいいとも思っていた。そうであるからこそ、つい先ほどまで彼女は惰眠を貪っていた。そこを隣に立つ女性に叩き起こされたのだ。
「……いいじゃない。この間、アクセルに届け物したし。それにしても、あんたも気の毒よね。帰ってきて早速お仕事だなんて」
仕返しとばかりに皮肉を交えて言いながら振り返る。周囲には二人以外にも人がいた。否、それは人の形をしながらも、人ではなかった。
Wシリーズ。この組織の中核を担う天才科学者が生み出した、人造人間にして主力兵士である。隣にいるW17は特に優れた兵士であり、こういった個体はWナンバーと呼ばれる。
「今まで任務をこなせなかった、その清算をするいい機会です。それに我々は、そのために生まれてきた。従わない道理はありません」
冗談も通じない。生真面目な切り返しに鬼面の女性は面白くない顔をする。だから、こいつら―――Wシリーズと一緒の仕事は嫌なのだ。人間の姿をしながら人間味に欠け過ぎている。何かと言えば、任務優先。
(そのために生まれてきたのは知ってるけど、それだけに生きろって決められてるわけじゃないでしょうに)
「
「了解。〈フュルギア〉隊及び〈ガジェット・ドローン〉各機に攻撃命令を」
そんな会話が、思考の海から鬼面の女性を引き上げた。どうやら任務が始まるらしい。
傍らに立っていたW17はすでに愛機を起動させていた。紅のマントが風に揺れる。その手には鞘に納められた大剣。
「ヴァイサーガ、出る!!」
W17。ラミア・ラヴレス。
四年の歳月を経て、再び彼女は戦場に立った。
~第10話 「ホテル・アグスタ攻防戦(後編)」~
今、ティアナ・ランスターは足止めを余儀なくされていた。
「アナタ、銃型デバイスを使う人?」
「えぇ!そうよ!!……このっ!」
それも傍らにいる少女のせいだ。何故か彼女は避難せず、ティアナにしがみついている。
しかも、戦闘中だというのに質問ばかりしてくるのだ。答えるティアナもティアナだが。
「見たところ陸戦。ランクと得意な魔法は?」
「そこっ!!……えっと、陸戦B!射撃と、幻術が少し!!……あぁ、もう!!」
今すぐ彼女を避難させたいところだが、飛来するミサイルが多すぎる。撃ち落とすには両手でなければ間に合わない。
しかし、彼女を抱えるにしろ、手を引くにしろ、その間は片手で対応するしかないのだ。それではやられる確率が高い。
応援も難しいだろう。スバルはⅢ型二機を相手取っているし、エリオはスバルを援護しつつキャロを守るので手一杯のはずだ。
副隊長やザフィーラも正体不明のホバータンクや今までとパターンの違うガジェットの戦術に苦戦している。
つまり、ティアナは自身の力だけで、この状況を打破しなければならない。
(アクセルさんと約束した!無茶はしない、確実性をとる……けど)
このままではジリ貧だ。いずれやられる。
焦燥感に駆られる中、ふと、少女が袖を引っ張った。視線だけ向けると、何やら空色の縁取りがなされたカード状のものを、無言のまま差し出している。
誘導弾を六つ生成して、撃ち出す。操作はクロスミラージュに任せる。これなら少女に向き合う時間は作れるはずだ。
「これは!?」
「戦況を変える可能性。適合性は分からないけど、一応アナタは条件をクリアしてる。どうする?」
ティアナの目の前で、少女はそのカードを、誘うかのように振る。あくまでティアナの判断に任せるらしい。
一瞬考えて、決めた。
「分の悪い賭けは好きじゃないけど……乗ったわ!!」
ティアナはカードを受け取った。それを見た不機嫌そうな少女の顔がほころぶ。
だが、それも一瞬。何かに気づいたように目を見開いた。
何事かと思うと、こちらへ飛来するミサイル群。数は六つ。
(迎撃は……間に合わない?!)
せめて少女だけでも、と覆いかぶさるティアナ。衝撃に耐えるため、瞼を閉じかけた。
その一瞬、瞳が蒼い影を捉えた。
「狙いはばっちりなんだな、これが!!」
聞き覚えのある声が響く。どこか軽い印象を与えるその声に、ティアナは安心感を覚えた。
同時に爆音。見ると、空間に青い粒子が尾を引いていた。
放たれた方向に顔を向ける。そこにはやはり、見慣れた蒼き巨人。
「アクセルさん……!」
〈ソウルゲイン〉をまとう、アクセル・アルマーその人だ。
「っと、無事か?ティアナ……と見知らぬお嬢さん」
避難誘導を近くにいた男性局員に任せ、アクセルは迎撃に出た。命令違反にあたる行為だろうが、この場合は情状酌量の余地もあるだろう。
青龍鱗でミサイルを撃ち落とし、ティアナたちに近づく。ほっとしたティアナとは対照的に不機嫌そうな少女。
「助けていただき感謝します。私はFI社代表取締役社長、マーチ・フレモント。失礼は承知ですが、そのデバイスは何処製で?見たところ、まだ試作段階の全身装着型のようですが?貴方の滑らかな動作から、すでに幾度となく実戦投入がされているご様子。当分野では他社より先を行く自負がある我が社ですら、実機の運用にようやく目途が立ったところであるというのに……」
ティアナの陰に隠れながら、そう一気に捲し立てるマーチという名の少女。
だが、アクセルが口を開く前に、ティアナが驚いた顔をしてマーチを向いた。
「え、嘘?!あなた、FI社の社長だったの?チョコ落として落ち込んでたのに?」
「甘いものは頭脳労働に欠かせないから……じゃなくて」
言葉を切りアクセルを、〈ソウルゲイン〉を睨む。
どう答えようか悩んでいると、〈ソウルゲイン〉が熱源を感知した。
「悪いけど、説明している時間はないみたいなんだな、これが」
「えっ……あれは!」
森から影が現れる。その数は五体。
その内、四体は知っている。鬼面の女性と〈ゲシュペンスト〉だ。
だが、残りの一体は見たことがない。
まるで西洋の騎士を思わせる風貌。真紅のマントがその存在をより強調している。
手に持った剣を引き抜き、鞘を捨てる。地面に落下する前にその形は崩れ、光となって消えた。
《聞こえますか、アクセル隊長。こちらはW17、ラミア・ラヴレスです》
(また、あの回線から……)
先日、鬼面の女性が繋げてきた通信回路。機密通信装置が再び起動した。
若い女性の声。おそらくは西洋騎士からだろう。どことなく、シグナムに声が似ている。
しかし、W11だのW17だの、何を指している番号なのだろう。
《聞こえてるけどな、あんたら何者?俺と何か関係あるわけ?》
そう返すアクセル。ティアナたちに感付かれないよう、同じ回線を使う。
すると、鬼面の女性が肩をすくめた。
《……ほらね、言った通りでしょ?自己暗示か何か、使ってるって》
《……フフ、それでこそ、隊長。疑われないための偽装も完璧。ならば、私も自分の任務を遂行するまで!》
《あんたって、任務が関わると途端に熱くなるわよね。普段から、そのぐらい……ハァ……まぁ、いいわ。あんたたちは他の相手をしなさい》
西洋騎士が剣を構える。それを見て鬼面の女性もため息をつきつつ、日本刀を構える。
三体のゲシュペンストは同じ道を引き返した。おそらく他の場所に向かったのだろう。
シグナムたちには悪いが、数が減って安堵を漏らす。
とは言うものの、以前苦戦した相手と正体不明の騎士。厳しい戦いになることは免れない。
「ティアナ。お前はマーチちゃんを連れて退避しな。その分の時間は、きっちり稼いでみせるさ」
「でも!」
「いいから!それに隊長たちを呼んでくれれば、こっちが有利になる―――行け!」
「……っ、はい!」
ティアナがマーチの手を引いて駆け出す。それを視界の端に収めつつ、アクセルは眼前の二人に向き直る。
どれだけの時間が稼げるかは分からない。
しかし、それでも。
「やるさっ!」
〈ソウルゲイン〉のブースターを噴かす。同時に両手にエネルギーを集中。
狙うは鬼面の女性。西洋騎士と違い、彼女は身を守る装甲がほとんどない。
先制によるゼロ距離での一撃。例えパワーが同等で、スピードが上だろうと、これならばいける。
「目標行動パターン、予測……自己暗示をかけていようとも、やはり動きは変わりませんね、隊長」
「な、にっ!」
途端、西洋騎士が前に出て、剣を横なぎに振るう。
とっさに防御行動を取るアクセル。左腕に衝撃が走る。何とか間に合いはしたが、無理な挙動で態勢が崩れた。
そこを逃すほど迂闊な輩はここにはいなかった。
「その隙は、逃さない!」
日本刀を上段で構え、接近してくる。その踏み込みの速さは尋常ではない。
右腕を上方にし、その一撃を受け止める。片手では支えきれないパワーであることは理解していたが、ここは耐えてみせる。
左右両方からこちらを両断しようと、すさまじい重量がかかった。
すでに両者の顔がほぼ眼前にあるという超々接近した状況だ。
「ずいぶんとなれなれしいな。もしかして、あんたらのどっちかが、俺の恋人とか?」
軽口をたたいて相手を苛立たせる。いわゆる口撃というやつだが、期待はしていない。
何となくだが、そんなものが通じる相手ではない気がする。
「余裕、ということか、隊長。しかし、あなたにはアリシア様がいらっしゃる。冗談でもそのようなことは言うべきではありません」
「そうよ、隊長さん。アリシアが怒ると怖いのは、身に染みてるでしょ?」
(くそ、こいつらといい、あの美女といい……なんで俺を隊長って呼ぶんだ?それにアリシアって……)
考え事はあとだ。今はこの状況をどうにかしなければ。
〈ソウルゲイン〉に命じ、両腕を回転させ始める。初めは弾かれないようにと更に力を込めていた二人だが、やがてトップスピードを迎えた回転にはかなわない。
自ら身を引き、バックステップ。再び構える。
アクセルは腕を回転させたまま、こちらから攻めようとする。
だが、その時だ。
「ハルバートランチャー、シュート!!」
そんな女性の声が背後から聞こえ、振り返る。その顔の横を放射状に放たれた閃光が通り過ぎる。
輝く閃光は西洋騎士たちに降り注ぐ。
だが、アクセルはそちらに目を向けていなかった。
その瞳は上下に別れた銃身を構える、人型の機動兵器に向けられていた。
(あれは、あの機体は……!)
「無事ですか、アクセルさん!助けに来ましたよ!」
一瞬、記憶の靄が晴れそうになったが、そんな声に現実に引き戻される。
声は目の前の機動兵器から聞こえた。しかも、聞き覚えがある。
「てぃ、ティアナ?!おま、なんでそんな?」
アクセルがよく知る少女。ティアナ・ランスターがその機体を駆っていた。
「いいの?」
時間は少し戻る。
アクセルの指示通りにマーチを連れて退避したティアナだったが、そんなマーチの一言に、足を止める。
「……そんなわけないじゃない。私だって、あの人を、アクセルさんを助けたいわよ」
だが、自分にはそこまでの力はない。理解している。例え援護に向かったとしても、足手まといになるだけなのだ。
昔の自分からは成長した。だが、それだけだ。彼らの戦闘に入れるレベルには達していない。
「だったら。これ、使う?」
「えっ……あ、それって、さっきの」
マーチは再びカードを差し出してきた。それは日光に照らされ、輝いていた。
その輝きにティアナは見惚れる。そして、確信した。
これがあれば、例え自らの技量が低くとも、彼を助けることができると。
「マーチ!」
「了承。あなたのデバイス、貸して」
言われた通りに相棒を待機形態にして渡す。
マーチは〈クロスミラージュ〉とカードを重ね、ティアナにそれを返す。
それから、空間にディスプレイとパネルを投影する。
「……〈クロスミラージュ〉、だったね?アナタの方でもこちらとの調整をして」
《OK. Connect start》
「プログラム『灰色の救世主』始動。フィードバック開始。システムを対象へ適合。機動外郭チェック。全武装チェック……」
空間に映し出されたパネルを尋常ではないスピードで打つ。
ティアナは唖然として口を開けた。
チョコを落として沈んでいた少女の姿からは程遠い。
これが彼女の本当の姿。FI社代表の姿。
「リンク終了。全システム、オールグリーン。〈アシュセイヴァー〉起動……!」
マーチの指がエンターキーに触れた。甲高い電子音が聞こえたと同時に、ティアナの身体が光に包まれる。
次の瞬間には彼女の姿はなく、代わりに人型をした機動兵器が佇んでいた。
「私はここでモニターしてる。武器の説明は順次するから。行って」
「……ありがとう!」
「礼はいい。行って」
向きを変え、滑空走行を始める〈アシュセイヴァー〉。
ティアナは気が付いてた。お礼の言葉を口にした時、顔を背けながらも、ほのかに頬を赤らめていたマーチのことに。
やはり年頃の少女。顔には出やすい。
「よし、行くわよ!〈クロスミラージュ〉、〈アシュセイヴァー〉!」
《Yes, sir!》
〈クロスミラージュ〉が応え、〈アシュセイヴァー〉が双眼を輝かせた。
「てぃ、ティアナ?!おま、なんでそんな?」
ティアナはマーチに指示された通り、ハルバートランチャーという武装を目標に向けて放っていた。
「質問もお叱りもあとでお願いします。今は、敵に集中しましょう!」
その言葉に〈ソウルゲイン〉が振り返る。
そこにはマントで仮面の女性を庇っている西洋騎士の姿。
見る限りダメージは少ないらしい。あのマントは何製なのだろう。
《へぇ。まさか『こちら側』に稼働段階までいってる機体があったなんてね。しかも、ASK系か》
《ソードブレイカーを装備している指揮官仕様。声紋に該当者あり。搭乗者は―――ティアナ・ランスター、か》
《こういうのを運命っていうのかしらね》
機密通信装置から、二人の会話が聞こえてくる。妙に納得したような口調で、ティアナが纏う機体のことを口にしている。その上、ティアナのことまで、まるで既知かの如く話していた。
(どういうことだ。俺が関係あるのは分かる。だが、何故ティアナまで?)
疑問が浮かぶアクセル。自身が何かしらの関係者だということは想像がついている。
しかし、ティアナは機動六課に帰属してから知り合った。これまでの遭遇から、ティアナが関係している要素は何一つなかった。しかし、ASK系と呼ばれる機体を駆って来た途端、この反応。
いったい何なのかと訝しむ間にも彼女らの話は進む。
《……W12から連絡。目標の奪取に成功したようです》
《ふ~ん。じゃあ、もう用はないわね……アクセル!また会いましょう!》
《隊長。貴重な戦闘データが取れました。感謝します》
「おい!待て!!」
仮面の女性を抱きかかえる西洋騎士。空中へ浮かび、そのまま高速で去って行った。
あっという間だった。何時の間にか周囲の爆音も消えている。
任務が完了したのだ。無駄に戦闘を長引かせるほど愚かではないということか。
アクセルは〈ソウルゲイン〉を待機状態にし、座り込む。
「ふぅ……」
「……大丈夫ですか?」
〈アシュセイヴァー〉を待機させたティアナが近寄ってくる。
隣に体育座りする。どことなく申し訳ないという表情と雰囲気をしている。
俯きながら、遠慮がちに口を開き始める。
「あ、あの。すいませんでした……指示を無視して。結局、何の役にも立てませんでしたね」
「……そんなことはないんだな、これが」
えっ、と驚き顔を上げる。そんなに驚くことでもないだろう。
確かに指示無視はどうかと思うが、それは自分自身にも言えることであった。
それを思い出して、部隊長からのお小言を想像して肝を冷やしつつ、ティアナに語りかける。
「ティアナは奴らの不意を突いた。おかげで、困惑させることが出来たし、それに結果として撤退させたじゃないか」
「で、でも……」
「それに、俺も命令違反したしな……実は避難誘導、ほっぽり出してきちまったんだな、こいつが」
顔を曇らせたままのティアナを慮って、正直に話す。同じだろ、とついでに笑って見せた。
ぽかんとばかりに口を開くティアナ。間を置いて吹き出した。
「あははっ。駄目じゃないですか、仕事を放りだしたら」
「お、言うねぇ。俺の指示を無視ったくせに」
お互いに軽口をたたき、同時に笑う。
二人は副隊長やフォワードメンバーがやってくるまで笑い合っていた。
「ん~、やっぱいいなぁ」
小高い丘。数時間前までラミアらが陣取っていた場所。
そこに少女はいた。
長い髪は蒼く、それを所謂ツインテールにしている。つり目の瞳はルビーのように真っ赤だ。
着ているものは黒のレオタードのようなボディスーツに青いベルト、それと同色のマントを羽織っている。
少女は丘の端に座り、崖から両足を出して揺らしていた。
その視線はやはりホテル・アグスタに向いている。
正確に言えば、敷地内の広場。そこに集まっている機動六課の面々だ。
「あの騎士っぽいのもカッコいいけど、やっぱりあのロボットが一番カッコいいね」
視線の先では正座しているアクセルとティアナ、それにマーチがいた。はやてを始めとした各隊長から説教を受けている。
前二人は仕方がないという表情だが、マーチはなんで私までとばかりに不機嫌そうだ。
「あの筋肉……僕も鍛えれば、手に入るかな?」
「馬鹿言わないでください。鍛えても手に入るわけないでしょう」
背後から聞こえた声に蒼い少女は顔をほころばせて振り向く。
そこには栗毛のショートカットをした少女がいた。まっすぐにこちらへ歩いてくる。暗い紅を基調としたその服の中央には薄紫のリボンがつけられていた。
少女は立ち上がり、歩み寄ってくる彼女に抱き着く。
抱き着かれた彼女はため息をつきつつも、優しく抱き返した。
「シュテるん!今日のお仕事は終わり?」
「えぇ。ですから呼びに来ました……王はまだ
「あれは昼寝じゃないよ、もう半日くらい寝てるじゃん!」
「落ち着きなさい、レヴィ。まぁ、その通りですが……」
仲睦まじく抱き合いながら会話を続ける。
仲良し姉妹、という言葉がとてもよく似合っていた。
「じゃあさじゃあさ!帰った時に起きてなかったら、砲撃ぶちかまして起こせばいいんだよ!それくらいしないと起きないって!」
「……それはいい考えです。私も乗りました。我等も少しばかり、引き締めなければなりませんからね」
「急いで帰ろ!くぅ~、楽しみだなぁ!王様の唖然とした顔が目に浮かぶよ!」
レヴィという名の少女は急ぐように飛び上がる。
シュテルと呼ばれた彼女は、レヴィを追う前に視線をちらと六課の面々に向ける。
彼女の視線は一人のみを映していた。自身と同じ、栗色の髪を持つ女性。
「舞台が整うまで……あなたと魔導を競うのは我慢しましょう。タカマチナノハ」
早く早く~、とレヴィが叫んでいる。手足をじたばたさせ、シュテルをせかす。
もう少し落ち着くことを覚えなさい、とため息をつき彼女を追った。
小高い丘。そこにはもう誰もいない。