思ったより、魔王様の口調が……
「おはよー」
「おはよ! ……もう十年か」
我輩は魔王。最も、元であるが。
簡単に説明すると勇者にやられていつの間にか、この少女の体に入っており力も殆ど失っていた。
しゃべり方は昔と変わらずこんなもの。
最初は自分らしさが残っていることに嬉しさを感じたが、いざ話そうとすると標準の言語になってしまう。
最近は意識すれば今と同じような言語で話せるが面倒なのでしていない。
それと年齢はもう1000を越えてから数えてない。
そのため我輩は周りの人間と比べて浮いていた。
それでも小学のときに仲のよい小娘が出来た。
「……マーちゃん?」
「な、何でもないよ!」
この小娘……いや『
我輩だけではなく、他の小娘とも仲が良いそう。
佳奈ちゃんに我輩の正体を言っていない。言う必要がないからな。
「あ、学校が見えてきたよ!」
昔を振り返っているともう学舎に見えてきたようだ。
それにしてもこの少女の体に入ってから時間が短く思うようになった。
人間の寿命は短いと聞いたことがあるので、それも関係しているのだろう。
だから……
「……あ」
学舎が見えてきたので、横断歩道なるものを気にせず走らないでほしい。
そのようなことをしていると、今のように自動車が走行してくるのでな。
佳奈ちゃんの注意不足でその短い寿命をさらに短くすることはやめてほしい。
そのためには我輩は……
「『時止め』」
躊躇なく力を使わせてもらおう。
先ほど『力を殆ど失った』と言ったが、まだほんの少し残っているのである。
日に日に多少回復しており、いつかはこの惑星を破壊出来る程度の力は集まるのだろう。
と言うが、それほどの力が集まるのは400年後程だろう。
だが我輩はこの世界での恩人の佳奈ちゃんを助けるために毎回使っている。
昔は世界征服もしていたが、今はもう興味が失せた。
そもそも征服したところで反乱が起こることにこの体になってから気づいた。
「佳奈ちゃん、無理したら駄目だよ!」
我輩はもう一度力を使い、身体を強化した。
佳奈ちゃんを抱き抱え、横断歩道を通った。
自動車を動かそうとも考えたが、この非力な体だと何重にもしなければならず力が足らない可能性もあるのだ。
「『解除』」
それと同時に自動車が勢いよく走りだし、塀に激突した。
……そうえば先日
全く、前の世界より平和なため『大丈夫だろう』という慢心がこの世界の人間達にはあるのだな。
「……あれ?」
佳奈ちゃんは自動車にぶつかったと思っているようだ……まぁ我輩が助けなければそうなっていたであろう。
ここは惚けるか。学舎に遅刻してしまうからな。
「佳奈ちゃんどうしたの?」
「え? う、うん! 何でもないよ」
どうやら気のせいだと思ったようだ。
本人は少し違和感を覚えているだろうが時期に忘れてくれ。
「……じゃあ今日も授業始めるぞ」
学舎とやらに来て感じたが、様々な人間がいるのだと知った。
肌が黒い人間、運動が異様に得意な人間、他の人間を信じられない奴等様々である。
生活していた地域にもよるようだが、我輩は人間を『種類』ではなく『個』と思っていたのもあるだろう。
人は『勇気』と『恐怖』その二つのみの感情を持っていると思っていたがそれは間違いであった。
これはこの世界に来てから発見した大きなことだと思う。
「って、アイツは今日も居ないのか」
アイツ?あぁ、まだ我輩が見たことない人間か。
実は我輩は転校生とやらであり、最初に居た小学の学舎で馴染めなかったのを気づいた親と一緒に移動してきたのである。
引っ越しと言うようだが、我輩はずっと同じ城にいたのでしたことがなかった。
「……あ、鬼崎は斎藤の家の近くに住んでるよな?」
鬼崎と言うのは我輩であり【
斎藤と言うのは、遭遇したことは無いが学舎に来ていない人物である。
……そうえば近くの標識に『斎藤』と書かれた文字があったな。恐らくはそこであろう。
「はい、そうです!」
「悪いが斎藤に今日のプリントとかを届けてくれないか?
本来なら俺が届けるんだが、学校に残らないと終わらない仕事が……」
教師というのは大変だな。
国民から提出される金で働いている代わりに、中々帰れないとは。
教師に限った話では無いがそういうのは『ブラック企業』と言うらしい。
佳奈ちゃんにその事を話したら不思議がられた。恐らくは理解していないのだろう。
佳奈ちゃんには難しかったのであろう。
「分かりました!」
我輩は佳奈ちゃん以外友達がいないので、これを機会に作るのも良いかもしれない。
そうして今日は少し嬉しい気持ちで学舎で授業を受けるのであった。
「……ここなんだ」
学舎が終了し、佳奈ちゃんと途中で別れて斎藤とやらの家に着いた。
ふむ……確か『インターホン』とやらを押せば繋がるのであったな。
それにしてもこれはどのような作りになっているのであろうか。
前の世界では魔法が発達していたが、この世界では科学が発達しているようだ。
これはとても気になるな……おっと、押すのを忘れていた。
『はい、どちら様ですか?』
「○○小学校の鬼崎です。斎藤ちゃんにプリント届けに来ました!」
そう言うと、母親らしき人物が玄関から姿を現し我輩を家に招いてくれた。
我輩はプリント類を提出すると、母親に斎藤のことを聞いてみることにした。
「斎藤ちゃんは今何処に?」
問いただすと、母親が顔を一瞬暗くしたが話し始めた。
「あの子、前はとても元気だったんですけど……
とある日から少しずつ家にいるようになってね。
最近は学校にも行かずにずっと部屋にいるの。
学校に行って貴方見たいに可愛い子と仲良くなれば良いのに……」
ふむ……我輩は少しその斎藤とやらに興味が湧いた。
これも友達を作る試練だと思えばいいのだろう。
「斎藤ちゃんに会ってもいいですか?」
母親は一瞬躊躇ったが、我輩を部屋に入れることを許可してくれた。
斎藤の部屋まで来ると母親は先程我輩と一緒に居た部屋に戻っていった。
恐らくは一緒にいると我輩の話を聞いてもらえないと感じたのであろう。
それにしても……この部屋にはとてつもない違和感を感じる。
実はこの家に入ったからそうである。
我輩の家にいても分からなかったのは、弱体化しており気配の察知能力が格段に落ちたのだと思う。
「まずは入ってから確かめるか!」
何時でも力を使えるようにし、ゆっくりと扉を開けた。
部屋を見るとゲーム機とやらの類いがそこらじゅうに散らばっているのが分かる。
そして何よりその部屋の中央にいる人間に目を見開いた。
髪はボロボロで少し眺めの金色をしている。
だが其処らはどうでもよい。先程から感じている違和感はコイツであろう。
その人間が此方に気づいたようで、振り向いた。
我輩はその人間……いや、人物を驚愕した。
何故だ……何故コイツがこの世界に居るんだ!
「この感覚……」
その人物も感覚で感じたのか、
そうして我輩と同じように驚愕した。
「勇者、どうしてこの世界に居るのだ!」
「ま……まさかお前は魔王!?」
「……ま、いいや」
そうして勇者はポーズという文字を削除した。
それと同時に音楽が流れてきた。
我輩はこの勇者を異様に殴りたくなった。
次回予告
こんにちは! 鬼崎マロだよ!
まさか勇者と遭遇するなんて思わなかったね!
それにしても何だか勇者の様子が……?
次回【え、続き?そんなもの知らないよ】
だよ! って、え?