整備室で義之は、美夏の整備を麻耶と一緒にやっていた。
「義之、A20のベアリング頂戴」
「ほれ」
麻耶が告げた部品を手渡して、義之はカタカタとパソコンを操作していた。そもそも美夏を整備しているのは、定期整備もあるが、さくらから言われたからだ。
天枷研究所内で、不審な部品と電波が確認されたから、美夏ちゃんも念の為に確認して、と。
今のところ、美夏の部品の内半分の検査は完了し、不審な部品は見つかっていない。ついでに、ある程度摩耗した部品は交換している最中だ。
勿論、交換する前に確認しているので、予備部品も不審な点は見当たらない。
義之は美夏から変な通信が出てないか、ログを確認しているのだ。
とはいえ、変な通信があったら美夏が気付く筈だから、そうそう無い筈である。
実際、常時天枷研究所にデータを送る為の通信機能にも、特に変なログは確認されていない。
その他、データ通信量にも変化は見られない。
(杞憂だったかな)
と義之は思い、キーボードを叩いた。
麻耶も、開けていた扉を閉めて
「今のところ、変な部品は見つかってないわね」
とため息混じりに告げた。
実際、見つからない方が良いのは確かだ。
そこに、音姫が両手でペットボトルを持って現れて
「お疲れ様、二人とも」
と義之達に差し出してきた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
二人は受け取ると、飲み始め、音姫はまだ眠ってる状態の美夏を見て
「整備はどう?」
「今の処は順調」
「はい。変な部品も見つかってません」
音姫からの問い掛けに、二人は素直に答えた。
音姫も天枷研究所での一件は知っており、義之達に整備室での作業を許可した。
そして責任者として、時々確認に来ているという形だ。
(流石に、美夏ちゃんは大丈夫かな……弟くんと沢井さんが専属だし……)
音姫は、義之と麻耶の事を信頼していた。
まず、二人の成績は風見学園でもそうだったが、IS学園でも上位に入る。
実は、楯無が義之か麻耶を生徒会に引き込もうとしているが、二人とも天枷研究所の職員でもあるので、土台無理な話なのである。
何せ二人は、日常的に自室で最新技術の開発も行っている。
正確に言えば、二人の部屋で使われてるパソコンは、独自の回線で天枷研究所に繋がっており、二人が考案・設計すると、天枷研究所の他の研究員が添削、最適化し、返信。そこからさくらに送られ、実物化するという事をやっている。
そして美夏をアップデートし、同時にデータ収集。
そこから、他の天枷研究所製のロボットにも採用されるのだ。
特に最近では、IS学園に採用されたμに採用されており、動き等で体調不良を看破出来て、治療出来るようになっている。
治療に関しては、初音島の水越病院が全面監修し、今のところ、看護師仕様のμと並んでデータ収集中。動き等で体調不良を看破するのは、美夏から得られたデータを基に義之と麻耶が開発したシステムである。
このように、義之と麻耶は学生でありながら、既に幾つもの技術を確立した実績を持っている。
だから、二人が自覚してないだけで、二人は機械化工学の分野では既にさくらに並ぶ有名人なのだ。
そして実は、近い内に機械化工学のシンポジウムに参加する予定の二人である。
それはさておき、義之と麻耶は音姫と会話しながら美夏の整備を進めていく。
そして
「よし、問題無し」
「こっちも、変な部品は無かったわ」
と二人とも、美夏の整備を終えた。
そして、再起動コードを入力すると
「む……終わったのか」
と美夏が起きて、整備台から降りた。
「おう、何の問題も無しだ」
「消耗してた部品も、全部交換したわ」
「ああ、ありがとう。あ、音姫さん」
「はい、美夏ちゃん」
音姫は起きた美夏に、バナナを使ったデザートを差し出した。美夏は定期的に、バナナを摂取し、更にゼンマイを巻く必要がある。
それを音姫も知っていた。
「まあ、二人が確認してるから、美夏は心配してなかったがな」
「念の為だよ」
「ええ」
美夏の言葉に、義之と麻耶は機材を片付けながら美夏に告げた。
もし二人が知らない間に、誰かが手を加えていたら防げないからだ。とはいえ、美夏のスリープコードは義之と麻耶。そして水越女史とさくらしか知らないから、その確率は無きに等しいが。
そして四人は、その整備室から出て就寝する為に部屋に戻っていったのだった。