数日後、簪と一夏の二人は倉持技研に来ていた。
その理由は、二人のISの定期メンテナンスだ。
「ここが倉持技研か……」
「ISでは、国内有数の研究所……織斑くん、そこ、気を付けて」
「へ?」
一夏が首を傾げていると、簪が一夏の腕を引っ張った。その直後、生垣の向こうからISスーツの上に白衣を着た女性が現れ
「へーい! 若人達! 私と気持ちいい事しない?」
と声を挙げた。一夏が呆然としていると、入り口から一人の研究員が慌てた様子で出てきて
「ああもう! こんな所に居た! 篝火主任!」
彼女の名前は、篝火ヒカルノ。実は千冬と束の同級生で、さくらや束に隠れてしまっているが、日本でも有数の天才研究員である。
性格は、お察しの通り破天荒だ。
「ごめんね、二人とも! 気にしないようにしてくれると有り難いかな? 見ての通り、変態だから!」
部下からも見放されているのが、彼女である。
余りの事態に、一夏が困惑していると
「……篝火主任、とりあえず中に入りますよ」
「あ、待って待って、首はやめて」
いつの間に背後に回った簪が、ヒカルノ首に腕を回して締めていた。慣れすぎていた。
十数分後、一つの研究室に入り
「さくら先生から話は聞いたよ。ごめんね、簪ちゃん。試験用の予備PCのまま渡してたなんてね」
「……私も、強引に引き取ったので、仕方ないかと……今は天枷研究所製にAIのおかげで、大分楽に運用出来ます」
まず最初に、簪の打鉄弐式の検査が始まった。
その間、一夏は白式を展開し、他の研究員がハンガーに固定を始めている。
「ふむふむ……もう少しで、セカンドシフトしそうだね……」
「……分かるんですか?」
「ISコアの反応速度が、大幅に上がってる。これ、セカンドシフトする前兆なんだよ。最近判明した事柄だ」
簪に説明しながら、ヒカルノはある一点を指差しながら説明した。前回のデータと比較すると、確かに5割増位で反応速度が上がっている。
そして、確認が終わったのか
「ふむ……全体的に、部品が消耗してるね。交換が必要だ。1時間位で終わるかな」
そのタイミングで、一夏の白式も固定が終わり、検査が始まった。
すると、次々とデータの表示が始まり
「ふむ……やはり男が扱ってるからかな、珍しいフラクトマップになってるね……」
フラクトマップというのは、ISコアの性格に起因するとされるもので、一つ一つ違いがあると束が発表はしていた。
しかし、それがどう影響しているかは、まだまだ謎に包まれている。
「きみを解剖してみたい……あ、ごめんなさい」
物騒な事を呟いた直後、簪が首筋に刃物を当てていた。良いストッパー役である。もし居なかったら、一夏にはどうしていいか分からなかっただろう。
「ふむ……こちらも、部品が大分消耗してるね。こっちも、交換に1時間ってところかな」
とヒカルノは呟いた。一応この研究所には、様々な娯楽の為の部屋がある。その理由は、研究員というのは時間を気にせず研究に没頭している事が多く、中々研究所から離れない。
ならば、研究所内で運動や娯楽が出来るようにしてしまおう、という暴論で、研究所内に娯楽敷設やジム、買い物や食事が出来るようにと増築されまくったのだ。
更に言えば、本屋やカフェ、寮もある。
「……時間を潰しに行くよ」
「お、おう」
ヒカルノが要らぬ事を言わないように、簪は拳銃をわざと見えるように脇に装備して、一夏と一緒に研究室から出た。
「……私の扱い、酷くない?」
「残当です。主任」
「ほら、さっさと始めますよ」
部下からの扱いも残念なヒカルノだった。