「凄いな、この会社……まるで一つの町の縮図だ」
簪の案内で歩いていた一夏、そんな感想を漏らした。倉持技術研究所に入る為には、基本的に電車か車だ。電車の駅は物流拠点でもあるらしく、大量の物資が荷揚げされている。
その荷揚げにフォークリフトだけでなく、ISも使われている。
「……あのISは、倉持技研の新型ね……多分、試験も兼ねて荷揚げ作業してる……」
「新型の試験って、色々あるんだな……」
簪の説明に、一夏は思わず言葉を漏らした。
「……多分、マニュピレーターの強度と力加減を試してる……後、データリンク」
「戦術データリンクの?」
「……うん。データリンクでコンテナの位置とかを指定してると思う」
戦術データリンクは本来、戦闘の際に味方と情報共有する為に使われる技術だが、それの平和的利用だろう。
そうして歩いている内に、ある場所に到着し
「え、これって……発電所?」
「……最新の浸透圧発電所……ISの開発や試験は、何かと電気を使うから……」
浸透圧発電
これは、塩水と淡水の浸透圧の差を使って行われる発電で、詳しい技術は公開されていない。
しかし、世界中から注目されている発電で、ダムや火力発電所程の設備も要らない事から、日本では増えてきている。
この発電技術にも、さくらが携わっている。
「はぁ……本当に、ISの開発には金が掛かってるなぁ……」
「……だから、国家的研究になってる……」
一夏の呟きに、簪はツッコミを入れた。
そうしてまた歩いていると、何故か釣り堀が見えた。
「え、なんで釣り堀? しかも、居酒屋まであるし……」
「……研究のデータ収集には、時間が掛かるから、暇潰しように釣り堀を設置したんだって……居酒屋はついでに、釣った魚を持ち込んで料理して、栄養の偏りを無くす為だって……」
「栄養気にしてるのか……」
意外と栄養まで気にしてる事に、一夏は驚いていた。
一夏の勝手なイメージだが、研究者というのは寝食を削って研究に没頭するイメージがあったからだ。
なお、もしそんな事を天枷研究所でやろうものならば、気付けばベッドに縛り付けられている事になる。
その時、近くの研究施設で爆発が起きて、反応出来なかった一夏を簪がカバーして、物陰に押し倒した。
「な、なんだ!?」
「……大丈夫……開発五課なら何時もの事だから……」
慌てた様子の一夏だが、簪は冷静に体の埃を払っている。
「何時もの事!?」
「うん……開発五課、通称キワモノ五課……浪漫を追い求めて開発してる部署……少し前に、300ミリレールカノン開発しようとして、研究所全体を停電させてた……」
「……浪漫かぁ……」
一夏も男の子だから、浪漫武器は分かる。
ゲームでやるあるロボットゲームでは、よく浪漫武器と言われるパイルバンカーや大火力武器を使う事があったからだ。
しかし、こういう事があると怖かったりする。
「ほら……対処班が来たよ」
「本当に慣れてるんだな、早い……」
爆発して僅か数分足らずで、消火班が来た。
明らかに慣れてる動きで、瓦礫をどかし、火を消していく。すると、地面の一箇所のマンホールが開き
「ふう……地下通路を用意しておいて、正解でしたな」
「何がいけなかったのか、データ検証しなければ」
と煤で汚れた白衣を着た研究者達が出てきた。
恐らく、五課の人員だろう。
そんな人員の頭を何人かが叩き、何処かへと連行していった。余りにも慣れ過ぎていた。
「……多分、来週には施設も復旧してる……」
「早いな、本当に」
そんな会話をしてから、二人はその場から離れた。
一夏の倉持技術研究所の見学は、始まったばかりである。