爆破現場(と書いて、第五課と読む)から離れた一夏と簪は、倉持技研巡りを続けていた。
「ここは……」
「ISの基礎研究をする第一課……」
一夏の呟きに反応し、簪が簡潔に答えた。
通称で基礎研究第一課。
基礎研究を突き詰める事で、ISの機能を上げる為に建てられた研究部署になる。
最近では、スラスターの燃費向上と各関節部分のレスポンス向上という成果を上げている。
「ここは、爆発とかは……」
「……滅多にしないから、安心して……」
「する時はするのか?」
簪の答えに、一夏は困惑していた。
爆発しない、と断言しなかったのが不安らしい。
その時、窓ガラスが割れて轟音が響いた。
「……えぇ……」
「……研究者の中には、我が道を行く人も居るから……」
簪がそう言った直後、ドアが開いて中から研究者達が出てきて、何らかのスイッチを押した。
すると、何処かから消火仕様のμがやってきて、消火を開始した。
「あ、μだ」
「……倉持も導入してたのね……」
何気に拡張性が高く、色々開発している天枷研究所である。
ホースで水を掛けるだけでなく、何やら発射すると泡が部屋の中に満ちた。
「特殊消火剤、ってやつか?」
「……多分……」
数分としない内に大部分消火したのか、中に突入していくμ。そこに、新たに人員がやってきて、研究者達に事情聴取を始めた。
慣れた動きで、現場検証も始まっている。
「……次、行くよ」
「お、おう」
簪に促されて、一夏は簪の後を追いかけた。
とは言え、次に来たのはよく町でも見かける某喫茶店だった。二人は適当に注文すると、席に座り
「……なんか、疲れた……」
「……お疲れ様」
背もたれに身体を深く預けた一夏を、簪は労った。
簪は慣れたからどうとも思わないが、慣れない一夏は気疲れを起こしていた。
そこに店員が、紅茶とコーヒー。軽食でサンドイッチやパンケーキを置いて離れた。
一夏はコーヒーとサンドイッチを見て
「最初から、ここで時間潰せば良かったか……」
と遅まきながらも気付いた。
そして、一息吐いてから
「……倉持技研……個性的過ぎないか……?」
「……最初が、何か尖った物を造ろうって考えの人達の集まりだから……」
一夏の呟きに、簪は僅かに視線を逸らしながら教えた。
つまり、変態の集まりが最初だという事である。
そこに更に変態や変わり者が集まり、今に至る。それは個性的過ぎる集まりになる。
「……キ◯ラギ……」
「……A◯3のあの会社と……同じかな……」
一夏の呟きに反論しようとした簪だったが、むしろ同意してしまった。
それ程までに、似ていたのだから仕方ない。
改めて一夏は、喫茶店で倉持技研に関して調べ始めた。
倉持技研
正式名称は、倉持技術研究所。
最初は簪の言った通りに、何らかの尖った物を造りだそうという考えの下に、様々な分野の研究者達が集まり、素材や機械の研究・開発を始めた。
そんな矢先に、束がISを発表して、国からの命令もありISに関する研究を開始。
途中でヒカルノが入り、ソフトウェア方面の研究・開発も開始。
第一世代の暮桜の開発に携わり、その経験から打鉄を開発。
そして、暮桜のデータから白式を開発し、打鉄を高機動化し新たな武装を追加して、打鉄弐式に改良した。
「……こうして見ると、打鉄タイプ以外は確かに尖ってるな……」
まず暮桜だが、シールドエネルギーを消費し、相手に大ダメージを与える。これは白式にも受け継がれているが、実は他にも、機体のレスポンスが余りにも高く、千冬以外は使えないという大きな欠点が存在した。
もし千冬以外が使おうものなら、その過敏なレスポンスに振り回され、大惨事は免れないだろう。
そして、ある意味暮桜の後継機の白式。
こちらは、レスポンスは大分抑えられ、代表や代表候補生でも扱える仕様にはなっている、
しかし、武器が剣一本のみという尖った仕様に、今まで誰も試験運用すらやりたがらなかった。
その結果、倉庫片隅で埃を被っていたのだが、急遽一夏用に調整され、一夏専用として引き渡されたという経緯があった。
「……だから、一部からは変態企業って呼ばれてる……」
「やっばり、キサ◯ギじゃねぇか……」
簪の注釈に、一夏は思わず突っ込んだのだった。