復興しつつも、IS学園は文化祭の準備を進めていた。予想外の襲撃で開催期間をズラす必要は出たものの、開催はする、と生徒会は決めた。
崩れた壁は応急処置をしてから、準備に入った。
料理の選定に、使う材料。衣装の運び込みと、大分突貫作業だった。
「おーい、そこには衝立を置いといてくれ。そこから向こうは、スタッフスペースにするから」
「はい。まず第一陣の衣装が来たから、サイズを確認して試着して! 調整が必要なら、被服部に言って調整してもらって!」
一年一組の主な指揮は、義之と麻耶がしていた。
本来は一夏がするべきだが、一夏は資材の交渉や各クラスとの調整に奔走している。
義之と麻耶の指示出しは的確で、まさに大黒柱となっていた。
「桜内君! このロッカーは何処だっけ!?」
「それは向こう!」
「沢井さん! これ、誰のか分からない!」
「え、そんな筈……これ、天枷さんのね……」
「む? なぜ美夏のまで?」
「ふっふっふー。私が発注したのだー」
「よーし、のほほんさん。そこに正座だ」
「あれー?」
クラスメイトが勝手に発注したりして、時々トラブルはあったが、順調に準備は進む。
そんなある日
「桜内君、ちょーっといいかな?」
「あれ、生徒会長? 脱走した?」
指示出ししていた義之を、いつの間にか入り口に居た楯無が呼んだ。
義之の記憶では、楯無は大量の書類の整理を虚の監視下でしていた筈だからだ。
「脱走じゃないわよ。溜まってた分は、全部終わったの」
「本当かな……」
イマイチ信用出来なかった義之だが、このままでは楯無が呼んだ要件が分からないので流す事にした。
とりあえず義之は、楯無に歩み寄り
「んで、要件はなんだ?」
「桜内君もだけど、沢井さんも部活か委員会に入ってないでしょ? 一応、IS学園では何らかの課外活動に所属するのが校則なのよね」
楯無はそう言って、義之に二枚の入部届けを差し出した。そして義之は、以前読んだ校則にそんな校則が有ったのを思い出した。
「とは言ってもな……俺も麻耶も、外部。天枷研究所の研究員で、割と機密性の高い研究もしてるからな……」
「それは分かっているわ。だから、名前だけ所属するって手もあるわ」
「幽霊部員ってやつか……」
楯無から告げられた手段、幽霊部員。
名前だけ所属しておき、まったく顔を出さないのを幽霊部員という。
風見学園でも、廃部の危機にある部活に名前だけ所属させて、実際は居ない、という手段で部活を存続させていた、という部活が幾つかあった。
しかし、真面目な麻耶を考えたら、所属すると決めたらちゃんと顔出し等はするのが予想出来る。
さて、どうするか、と義之は考えた。
「なんだったら、この文化祭で所属する部活や委員会を決めるのも手ではあるわ」
「なるほどな……」
実は、IS学園の委員会・部活は総数100を超えており、その規模は風見学園に近いだろう。
そしてその中には、もしかしたら義之や麻耶に有用な部活があるかもしれない。
そして何より、この文化祭ではあらゆる委員会・部活は何らかの研究・成果発表をする必要があるのだ。
その為、部活棟や一部のスタジアムでは部活や委員会が発表の為の準備を進めている。
「まあ、麻耶にも伝えておくよ」
「はい。お願いね」
それで要件は終わったのか、楯無は教室から去っていった。
「さて……準備を進めるぞー! そこ、サボるな」
「うぐっ、気付かれた……」
そうして、文化祭の準備は進んでいく。