IS学園文化祭は、毎年多くの一般人と企業の人間が訪れ、各々の目的を果す為に行動している。
一般人は普段はお目にかかれないISの事を知る為に、整備課の生徒達がやっている解説のブースに向かったり、競技場に向かってISスーツに関する解説を見たり、中には生徒達と仲良くなる為に声を掛けたりと様々だ。
そして企業の人間は、自社の製品を使ってもらう為に生徒達に売り込んだりしている。
「えっと……」
そんな中、一人の女子が周囲を見ながら歩いていた。
小柄な体躯に、長い紺色の髪をツインテールにしている。
すると
「あ、クリサリスさん。こちらですわ」
とセシリアが、その少女に声を掛けた。
「あ、オルコット先輩。お久しぶりです!」
「はい、久しぶりですわね」
その少女。シノ・クリサリスはセシリアが魔法魔術学園に在籍していた時の後輩で、本来は中学一年生の年齢だが、もう中学三年生と同レベルの学習をしている天才飛び級少女だ。
そしてクリサリス家はオルコット家と同じく、イギリスを守護する魔法使いの家系であり、表向きは政財界だけでなく、優秀なスポーツ選手、研究者も多数輩出してきた家柄だ。
そして魔法使いとしてのシノの特技は、空間魔法。
しかも、鏡面空間を得意としている。一度発動し対象を閉じ込めてしまえば、よほど相性が悪い相手でもなければ、脱出はほぼ不可能。
その魔法により、シノは幼いながらも幾多の凶悪魔法犯罪者を捕縛してきた実績を持っている。
更に凄いのは、シノ本人とシノが認めた人は鏡面空間を通って、一瞬で遠くに移動出来るのだ。
それが、シノの空間魔法である。
「それにしても、流石はIS学園ですね。先進技術ばかりです」
「ええ。私も最初は驚きましたわ」
シノの言葉に、セシリアは同意した。
道案内用に、何箇所かにホログラムを使った地図が表示されていたり、時間制限付きでインストールされたアプリを使えば、出店の案内もある。
シノからしたら、先進技術ばかりだ。
そしてシノが一回指を鳴らすと、2人の居る場所だけ音が消えた。
空間魔法の一つ、遮音と視線外しの魔法を同時に発動したのだ。
「それで、オルコット先輩……私が呼ばれた理由は……」
「今回の文化祭、闇の魔法使いが来る可能性が非常に高いので、無力化した後の拘束ですわ」
「承りました……申し訳ありません。私、戦闘魔法はあまり得意ではないので……」
「得手不得手は仕方ありませんわ……そちらは、私達に任せてください」
シノは空間魔法使いとして優れているが、反面、戦闘魔法は威力があまり高くない。
しかし、その不得手を上回る利点が空間魔法だ。
「さて、騒動が起きるまで観光していきますか?」
「そうですね、そうしましょうか」
セシリアの言葉に頷き、シノは遮音と視線外しの魔法を解除。
セシリアの後に続き、1組に入ったのだった。