インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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美夏の紹介と食堂にて

「というわけで、1年1組のクラス委員は織斑一夏君に決定しました! あ、1繋がりで調度いいですね」

 

と朗らかに言っているのは、山田先生だ。しかし、1組のクラスメイト達はそんな話よりも、気になることがあった。

それは、義之の隣に居る小柄な少女。美夏だ。

なお一夏は、力なく頭を机に乗せている。どうやら、もうどうにでもなれ、という境地らしい。

 

「……天枷、自己紹介をしろ」

 

「うむ! 美夏は、天枷美夏。桜内のISだ!」

 

千冬が促すと、美夏は自信満々といった様子で胸を張りながら、自己紹介した。

すると、義之が

 

「あー……正確には、まず天枷は約50年前に作られたロボットで。その天枷にISとしての機能を組み込んだんだ……」

 

と説明したのだが、それが更に混乱を加速させた。

 

「50年前のロボット!?」

 

「嘘!? 人間にしか見えない!?」

 

「天枷研究所、凄すぎ!?」

 

「更にそこに、ISとしての機能を組み込んだ!?」

 

「どんな技術集団よ!?」

 

女子達は驚きながら、美夏に視線を集中させた。

その直後、千冬が机を強く叩いて

 

「やかましい! 静かにしろ、貴様ら!!」

 

と怒鳴った、それだけで、一気に静かになった。

恐るべし、千冬のカリスマ力(?)。

 

「では、授業を始める……の前に、いい加減に起きろ!」

 

「いってぇ!?」

 

千冬の出席簿アタックを受けて、一夏は起き上がった。

そして、時は経ち昼休み。

 

「あ、頭が割れる……!」

 

「バシバシ叩かれていたな……」

 

一夏は頭を抱えながら、机に頭を乗せていた。

授業中に、千冬に何回も叩かれていたからだ。

そして、食堂に来て

 

「しかし、相変わらず旨いな」

 

「うむ」

 

一夏の言葉に、箒は同意するように頷いた。

どうやら、食堂で働いている人達はかなりの料理の腕前らしく、かなり美味しい料理を提供している。

その腕前は、家事力が高い一夏も認める程だった。

そこに、僅かに遅れて

 

「おーっす」

 

と義之が来た。その後ろには、簪が居る。

 

「遅いと思えば……」

 

「その子は?」

 

一夏が問い掛けると、簪が

 

「1年4組のクラス委員、更識簪……」

 

と短く名乗った。

すると、一夏が

 

「よろしくな、俺は」

 

「……知ってる、織斑一夏君でしょ? 有名」

 

名乗ろうとしたが、それを遮るように簪がそう言った。確かに、一夏は有名だろう。

 

「それにしても、桜内さんはどこで彼女と?」

 

「ん? 整備室……天枷を点検してたら、簪が機体を組み上げてたんだ」

 

箒の問い掛けに、義之はけんちんうどんを飲み込んでから答えた。

マナーとして、食べながらは避けたのだ。

なお、簪は天ぷらうどんを食べている。

 

「む? 普通は、組み上げられてから引き渡されているのでは?」

 

「それなんだがな……ある意味、一夏も理由だ」

 

「へ、俺?」

 

義之の言葉に、一夏は思わず首を傾げた。

確かに、初対面の簪の機体が組み上げられてない理由と言われても、分からないだろう。

 

「一夏、お前の機体を組み上げたのは、倉持技研だったよな?」

 

「ああ、千冬姉からはそう聞いてる……待て、まさか……」

 

白式の待機形態のガントレットを見た一夏は、何かを察したようで目を細めた。

 

「そ……一夏の機体を組み上げるために、簪の機体の開発を停止。その人員を、回したようだ」

 

「うあぁ……それは、なんて言うか……すまん……」

 

一夏自身が悪い訳ではないが、一夏は思わず頭を下げた。すると、簪は首を振って

 

「織斑君が、悪いわけじゃない……気にしないで……」

 

と告げた。

しかし、責任感が強い一夏は納得いかないらしく

 

「そうは言われてもなぁ……」

 

と渋面を浮かべた。すると、箒が

 

「ならば、一夏が手伝えることをしたらどうだ?」

 

と提案した。

それを聞いた一夏は、指を鳴らして

 

「それだ! 更識さん、俺に手伝えることがあったら、遠慮なく言ってくれ!」

 

と言った。すると、簪は

 

「簪でいい……お姉ちゃんと、ごちゃまぜになるから……」

 

と言って、天ぷらを食べた。

 

「お姉ちゃん?」

 

「IS学園生徒会会長だよ~」

 

一夏が首を傾げていると、いつの間にか居た本音が教えた。

 

「生徒会会長が、簪のお姉さんなのか?」

 

「その通り~。更識楯無会長~」

 

箒の問い掛けに答えると、本音は蕎麦を啜った。

そして簪だが、本音が話している間は意図的にだろう。丼で顔を見えないようにしていた。

そこに

 

「いやぁ、本当にここの食堂は料理が豊富なんだな!」

 

と美夏がオムライスを持って現れた。

すると、箒が驚いた表情で

 

「天枷、料理を食べられるのか!?」

 

と声を上げた。

 

「ああ、食べられるぞ? 可能な限り、人間に近づけて作られているからな!」

 

箒の問い掛けに答えてから、美夏はオムライスを口にした。

すると、簪が

 

「……調べたい……!」

 

と興味深い表情で、美夏を見つめていた。

そこに、義之が

 

「一応言っておくと、俺が居る時なら、ある程度だが見れるぞ」

 

と教えると、簪は義之の手を握り

 

「見させて!」

 

と懇願してきた。

 

「分かったから、放してほしい。飯が食えんから」

 

という義之の言葉で我に返ったのか、簪は顔を赤くしながら素早く手を放した。


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