「さてと……部屋に戻るかな」
放課後、特に用事もない義之は寮に戻ろうとした。
そこに、山田先生が現れて
「よかった、間に合いましたね」
と義之を見て、安堵していた。
「実はですね、1年生寮に空きが出て、それの調整が終わりまして、桜内君を1年生寮に移すことになったんです」
「おお、そうでしたか」
空きが出たというのは、早いが退学者が出たのだ。
とはいえ、致し方ないのだ。
その少女だが、整備士志望でIS学園の試験を挑み、無事に合格。入学したが、少し前に父親が不当に解雇されてしまい、学費を払えなくなってしまったのだ。
そうなれば、学校に通えなくなるのが道理で、IS学園を退学することになったのだ。
なおその父親は、ある島のある研究所からスカウトされて、その少女もその島に移住するのだとか。
閑話休題
「だったら、荷物を運ばないと……」
「それでしたら、既に搬入しましたので、大丈夫ですよ」
義之の言葉を遮るように、山田先生は笑みを浮かべながら教えた。
それを聞いた義之は、頭を掻いてから
「天枷の部屋は……」
「それに関しては、まだ二年生寮になります……すいませんが」
義之の問い掛けに対して、山田先生はそう言いながら美夏に頭を下げた。
すると、美夏は
「いや、それは先生が謝ることではない。美夏が予定外に来たのだからな」
と告げた。
なお美夏だが、最初は一人部屋だったが楯無の部屋に移動。
義之は、二年生寮から一年生寮に移動となった。
「しかし、また一人部屋か……まあ、どうにかなるか」
義之はそう言って、その日は就寝することにした。
そして、翌日
「転校生?」
「そ。二組にだって」
クラスメイトの話を聞いて、義之は思わず首を傾げた。
話によれば、隣の二組に中国の代表候補生が転校してきたらしい。
「中国かぁ……鈴は元気にしてんのかな?」
と呟いたのは、一夏だ。どうやら、中国に知り合いが居るようだ。
「でもさ、今各クラスのクラス委員で専用機を持ってるのは、一組と四組だけだから、クラス代表戦は有利だよ!」
「目指せ、優勝! そして、優勝賞品の半年間デザートフリーパス!」
と鷹月と日南が言った直後
「その情報、古いわよ!」
と威勢のいい声が響き渡った。前側の入り口を見てみれば、そこには茶髪をツインテールにしている小柄な少女が居た。
「何せ、二組の代表はこの私。
その少女、鳳鈴音の姿を見て一夏が
「おお! 鈴じゃないか! 久しぶりだな!」
と気さくに声を掛けた。どうやら、知り合いのようだ。
しかし、義之は
「とりあえず、後方に注意だな」
と鈴に指摘した。
「は? 後ろがどうしたのよ」
と義之を軽く睨んだ直後だった、何かが鈴の後頭部に振り下ろされて、凄まじい音が響いた。
「いったぁ……誰よっ!?」
と振り返りながら、鈴は声を張り上げて、固まった。そこに居たのは、千冬だったからだ。
「もう予鈴は鳴っているぞ。早く自分の教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
鈴にとって、千冬は恐怖の対象でもあった。
確かにIS最初の世界最強だが、同時に意識する一夏の姉であり、同時に初めて鈴が手も足も出なかった人物たったからだ。
「なんなら、もう一発いってもいいが?」
「戻ります」
千冬が出席簿を掲げながら言うと、鈴はダッと自分の教室に向かうために走り出した。のだが、後ろ側のドアが開き
「また後で来るから、逃げるんじゃないわよっ!」
と一夏を指差しながら言った。
その瞬間
「早く行け!」
「ぶっ!?」
鈴の顔面に、出席簿がめり込んだ。一体、どういう素材で出来ているのか。
そして、次の休み時間
「一夏、あいつは誰だ?」
と箒が、一夏に問い詰めていた。なおその頭には、見事なたんこぶが鎮座している。授業中に他の事を考えていた挙げ句、千冬が呼んだことにも気付かなかったので、出席簿アタックを喰らったのだ。
「んー……言うならば、セカンド幼馴染みかな?」
「セカンド……幼馴染み?」
何が言いたいのか分からず、箒だけでなく義之、美夏、セシリアですら首を傾げた。
すると、一夏は
「ほれ、箒は小三で転校しちまっただろ? 鈴は箒と入れ替わりに転校してきたんだ。でも、中二末に中国に帰ったんだ。いやぁ、変わってなかった」
と説明した。
そして、昼休み
「遅い! 麺が伸びちゃうじゃない!」
「待ってたんかい!」
食堂に向かえば、既にラーメンが乗ったおぼんを持った鈴が居た。
そんな鈴に、義之が思わず突っ込みをしてしまった。
「んで、一夏。そいつら誰よ」
「えっと、まずは俺の第一幼馴染みの篠ノ之箒。次にクラスメイトのセシリア・オルコット。そして、二人目の男子の桜内義之。そして義之のISの天枷美夏だ」
一夏が軽く説明しながら、鈴は四人の顔を見て
「……IS?」
と美夏を見詰めた。
「ああ、間違いないぞ。正確には、美夏はロボットなのだがな」
「ロボット……」
美夏の言葉に、鈴は固まったのだった。