インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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鈍感の厄

『あんたなんか……狸の置物に頭をぶつけて、死んじゃえぇぇぇ!!』

 

『なんでだー!?』

 

そんな叫び声が聞こえたのは、鈴が来た日の放課後の寮でのことだった。

 

「……何事?」

 

そう呟きながら義之は、自室から出た。その直後、廊下を鈴が駆け抜けていった。

しかも、涙を流しながら

 

「……一夏が、なにかやらかしたか?」

 

「……あれは、無いな……」

 

義之の呟きに、気絶している一夏の足首を掴んで引きずってきた箒が首を振っていた。

そして箒は、何が起きたのか義之に教えた。

まず鈴は、一夏と箒の部屋に来て、箒に部屋を変わるように言ってきた。

しかし、一存で変われる訳がないために拒否する形になる。

そこは、後々交渉することにすると鈴は結論して、談話室で思い出語りすることにした。

最初は、本当に思い出語りだった。

転校してきた直後、鈴の名前をパンダみたいに呼んで笹を机の上に置いてイジメてきたりした奴を、一夏がノシていたり、千冬の帰りが遅かった時は鈴の実家の中華料理店でお世話になっていた。という会話だったらしい。

そこまでは普通だった。

しかしそこで鈴が、中国に帰国する直前にしたという約束のことを振った。

鈴は

 

《また会ったら、毎日酢豚を作ってあげる》

 

という風に約束していたのだ。

だが一夏は

 

《毎日酢豚を食わせてくれる》

 

という風に覚えていたのだ。

箒は鈴がどういう意味で約束したのかを察し、恋敵だが思わず同情してしまった。

そして鈴は、先の叫び声を上げながらその小柄な体躯からは予想出来なかった威力の拳を一夏の腹部に叩き込んで走り去っていったのだ。

それを聞いた義之は、額に手を当てて

 

「なんて言うか……鈍感め……」

 

と溜め息混じりにしか、言うことが出来なかった。

箒は義之の言葉に同意するように頷くと、まだズルズルと一夏を引きずって部屋に戻っていった。

それを見送った義之は、頭を掻いてから

 

「……痴話喧嘩には、関わらない方が吉だな」

 

と結論着けて、自室に戻って読書を再開した。

そして、翌日

 

「腹が、痛い……」

 

「自業自得だ、バカめ……」

 

鈴の一撃がまだ痛むらしく、一夏は腹を抱えながら机にうつ伏せになっていたが、そんな一夏に箒はそう言いながら軽く頭を叩いた。

そしてこの日、クラス代表戦のトーナメント表が発表された。

その中に、簪の名前が無い。その理由だが、簪の打鉄弐式がまだ完成の目処すら立っていないからだ。

その完成のために、天枷研究所の協力が得られないか現在交渉中である。

 

「初戦から鈴かぁ」

 

「……生きろ」

 

初戦の相手が鈴だと一夏が確認していると、そんな一夏の肩に義之は手を置くことしか出来なかった。

そして当日

 

「やべ……緊張してきた」

 

「そんなタマだったんか、お前」

 

緊張しているらしく、一夏はガタガタと震えていて、義之は一夏が緊張で震えてることが予想外で驚いていた。

そこに、放送で

 

『ただ今より、クラス代表戦を開催します! 一回戦は……』

 

と虚の声が聞こえた。

どうやら、放送の係も勤めているらしい。

 

『まずは、1年5組代表……』

 

「ほれ、一夏。いい加減しゃっきりしろや」

 

「おごふっ」

 

義之は震えてた一夏の頭に、肘打をかました。

そして一夏が頭を抱えていると

 

『試合終了! 勝者、1年5組!』

 

と薫子の声が聞こえた。

どうやら、解説役らしい。

そして、一夏の番が来た。

 

「こうなりゃ、やるしかない!」

 

「その意気で行ってこい」

 

義之がそう言った後に、一夏はISを展開。カタパルトに機体の足を固定し

 

「白式……行くぜ!」

 

と気合いと共に、空に舞った。

 

『来たみたいね、一夏……』

 

既に待っていた鈴は、両手に青龍刀を持っていた。

見える武装はそれだけだが、両肩辺りにある浮遊ユニットが気になる。

 

「まあ、引く理由が無いからな……」

 

『乙女の約束を曲解してる奴なんて……ぶっ飛ばしてやるわ……』

 

二人がそう会話している間に、紹介が終わったらしく

 

『試合……開始!!』

 

と薫子の声が響き、二人は同時に前に動いた。

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