「ん……これは、夢か……」
その日、義之は夢を見た。
別に、夢を見ること自体は何ら不思議なことではないだろう。夢というのは、寝ている間に行う記憶の整理から起きることだから。
しかし、何故夢だと理解出来たのか。
それは、その夢の内容が知らない場所だったからだ。
義之の能力、他人の夢を見る能力だ。
「さて、誰の夢だ……というか、寝不足確定だな……」
しかし、この他人の夢を見る能力は見せられているのが現実で、他人の夢を見せられている間は起きているのと同等で、寝不足になってしまうのが辛い点である。
『お母さーん!』
そこに現れたのは、長い金髪を揺らす小柄な女の子だった。場所は少し、山よりなのだろう。緩やかに傾斜しており、多数の石垣が見える。
『あらあら、シャルロット。どうしたの?』
『お母さんにお手紙が来てたよ!』
母親に問い掛けられると、その女の子は肩から掛けていた小さいバッグの中から手紙を取り出して差し出した。
『ありがとうね、シャルロット……』
『えへへー』
母親に撫でられて、女の子は朗らかに笑みを浮かべた。
そこで光景は歪み、変わると
『お母さん、嫌だよ……』
『ごめんなさいね、シャルロット……』
病室らしい白い部屋で、先程の母親が弱った様子でベッドに横たわっていた。どうやら、病気のようだ。
そのベッドの傍には、幾らか成長した先程の女の子が居たが、泣きそうな表情だ。
病室に父親らしい人物の姿が無いために、母子家庭だと思われる。
そこでまた場面が変わり、成長した少女がお墓に花束を置いていた。
そこに、一台の黒い車が停まって、中から黒い服を着た男達が出て、その男達に守られて、一人の男性が出てきた。
その男性は、少女に歩み寄ると
『君が、シャルロット・マロース……だね?』
と問い掛けた。
『……貴方は、誰ですか?』
少女が警戒した様子で問い掛けると、男性は申し訳なさそうな表情をしながら
『私の名前は、アルベール・デュノア……君からしたら、父親……に、なるね』
と告げた。
その直後、視界が歪み始めた。
「目覚めるか……」
そう言った数瞬後、義之は目覚めた。すると、義之に僅かに遅れて
「おはよう、桜内くん」
と隣で寝ていた、シャルル・デュノアが起きた。
「おう、おはよう」
挨拶に答えながら、義之は
(デュノア……ねぇ……)
と背伸びしているシャルルを見た。
デュノアという姓だけでなく、シャルルとシャルロット。更には、声まで同じ。
(……何を企んだ……?)
と義之は、首を傾げた。
その後、朝食を終えてクラスに行った。
そして、HRが始まったのだが
「えー……このクラスに、またしても転校生が来ました……」
と山田先生が、何やら疲れた様子で告げた。
「幾らなんでも、立て続けすぎない!?」
「二日連続だよ!?」
流石に二日連続で転校生となると、困惑せざるを得ないだろう。クラスメイト達は驚きの声を挙げた。
すると、千冬が
「静かにしろ!」
と一喝すると、一気に静かになった。そうして、静かになったのを確認し
「入れ」
と入室するように促した。
そして入ってきたのは、長い銀髪に小柄な体躯。そして何より、右目に着けている眼帯が特徴の少女だった。
「挨拶しろ」
「はい……ラウラ・ボーディヴィッヒだ」
千冬に促されて、彼女。ラウラ・ボーディヴィッヒは名前だけを告げた。すると、山田先生が
「……え、それだけですか?」
と少し驚いていた。
「自己紹介など、この程度で十分だ」
ラウラはそう言うと、一夏を見て
「貴様が……!」
と怒気を滲ませながら、一夏に詰め寄って手を振り上げた。そして振り下ろされた手は、恐らくは条件反射だろう上げられた手で防がれた。が、一夏の体勢は大きく崩れて、それを一夏は、片足で踏ん張って耐えた。
「いきなり何するんだ!?」
と一夏が抗議すると、ラウラは
「認めるか……貴様が教官の弟などと、認めるものか!」
と一夏を睨んだ。
「ボーテヴィッヒ……そこまでにしろ」
「は、わかりました……」
千冬が僅かに怒気を滲ませながら静止すると、ラウラは素直に従って後退した。
その一連の光景を見て、義之は
(あいつ、軍人か……? で、織斑先生が教官として育てたってところか?)
と二人の背景を考えた。
だが、眠気が強くなったからか、欠伸をして
「ったく……面倒事は勘弁してくれ……」
と呟いたのだった。