「さて、これより実機訓練を行う」
と告げたのは、ジャージ姿の千冬だ。
その千冬の前には、一組と二組の生徒。約60名が整列している。一夏からしたら、かなり目のやり場に困る姿。ISスーツを着ている。ISスーツはISを装着する時には必ずと言っても過言ではないレベルで着るスーツで、見た目は最早水着に等しい。しかも、かなりピッチリしているので、各人のスタイルが際立つ。
「オルコット、鳳、前に出ろ」
そう言われて、セシリアと鈴が前に出た。すると、二人が
「何をするのですか?」
「まあ、何でもやるけど……」
「そう急くな……これからお前達には」
セシリアと鈴の問い掛けに、千冬が答えようとした。そこに
「ひゃあぁぁぁ! ど、退いてくださぁい!?」
と何やら情けない声が聞こえた。それを聞いた義之は、反射的に声が聞こえた方向を見た。すると、バランスを崩した様子の山田先生が墜落してくる。
それに気付いてないのは、一夏のみであった。
「一夏、グッドラック」
義之はそう言って、急いで離れた。
「は? ……って、そういうことかぁぁぁぁ!?」
一夏が気づいた時には、時既に遅し。一夏が居た辺りに、ラファール・リヴァイヴを纏った山田先生が落着した。
落着の際に発生した土煙で一、帯が見えなくなっていたが、少しすると見えた。
奇跡的に、一夏は大した怪我もなく無事だった。
しかし、問題が一つ。どういう訳か、倒れた山田先生の上に一夏が覆い被さっていたのだが、山田先生のその胸に一夏は顔を埋めていた。
「う……」
「お、織斑君……その、こういう場で無ければ応えたいところなんですが……」
山田先生は一体、何を言っているのか。しかし、ようやく我に帰ったらしい一夏は、自身がどういう状況か把握し
「す、すいません!」
と慌てて、体を起こした。その直後、何やらガシャンという音が聞こえた。
具体的に言えば、鈴の機体。甲龍の武装。双天牙月の合体音が聞こえた。
「い・ち・かぁ!?」
「待て待て!? 死ぬぅ!?」
双天牙月を連結させた鈴は、一夏に狙いを定めて、全力で投擲した。それを見た一夏は、上体を某映画張りに大きく反らして回避。
何とか回避した一夏は、安堵した。しかし、すぐにあることを思い出した。
連結させた双天牙月は、くの字になり、ブーメランのように戻ってくるのだ。
それを思い出した一夏は、振り向いた。すると、投げた双天牙月が大きくUターンして戻ってきていた。
一夏は回避しようとしたが、それより早くに押し倒されて
「当てます」
と山田先生の声が聞こえた直後、二発の発砲音が響き渡った。
そして、山田先生が撃った二発の弾丸は、見事に双天牙月に命中。撃ち落としたのだった。
「織斑君、大丈夫ですか?」
「は、はい……ありがとうございます……」
起き上がった山田先生に答えながら、一夏は立ち上がった。すると、千冬が歩み寄り
「山田君は、これでも最高クラスの代表候補生だったんだ。今程度の事は造作もない」
と告げた。
「あはは……結局は代表候補生止まりでしたけど」
千冬の言葉を聞いた山田先生は、困ったような笑みを浮かべながら、頭を掻いた。その間に、鈴は双天牙月を回収。セシリアと一緒に来ると
「それで、結局何をするんですか?」
と千冬に問い掛けた。
「何、簡単なことだ。二対一で模擬戦をする。お前達対山田君だ」
千冬のその言葉を聞いて、セシリアと鈴は固まった。確かに彼女達はまだ学生だが、そこまでは弱くないと思っているからだ。しかし、千冬は
「なに。今のお前達ならば、山田君の相手にならん」
と告げた。
それを聞いたセシリアと鈴は、ムッとした表情を浮かべた。そこまで弱いとは、思っていないからだ。
「では、構えろ」
千冬がそう言うと、セシリアはブルーティアーズを展開しライフルを構え、鈴は腰を軽く落とした。そして山田先生は何時もからは予想出来ない真剣な表情で、両手に銃を構えた。その直後
「試合開始!」
という千冬の宣言が響き渡り、三人は同時に一気に上昇。空中戦を開始した。それを見ながら、千冬は
「デュノア。丁度いいから、山田君が纏っている機体の説明をしろ」
と近くに居たシャルルに言った。
「あ、はい。山田先生が使っているのは、フランスの企業。デュノア社が開発した、第二世代ISのラファール・リヴァイヴです」
千冬に言われた通りに、シャルルは模擬戦を見ながら、ラファール・リヴァイヴの説明を始めた。
義之はそれを軽く聞き流しながら、模擬戦を見ていた。
模擬戦は終始、山田先生が有利に進めていた。
セシリアと鈴は、セシリアが後方から支援。鈴が切り込んでいた。それ自体は、別に何ら不思議ではない。
しかし山田先生は、鈴の動きを上手く誘導し、セシリアの攻撃を妨害。そして、二人に適宜攻撃。
そして、攻撃を外した鈴に至近距離でショットガンを連射。吹き飛んでセシリアにぶつかると、ショットガンを消して、連装式のグレネードランチャーを展開した。
「ああ、説明ご苦労。そろそろ終わるぞ」
千冬がそう言った直後、山田先生が二発のグレネードが二人に直撃。二人はそのまま、地面に落ちた。
「此のように、IS学園に居る教師は、大体が腕利きの元代表や元代表候補生だ。敬意を持って接するように」
千冬のその言葉の後、多少のトラブルは起きたものの、実機訓練は無事に終了した。
しかし義之は、ラウラが一夏を終始睨んでいることに気付いていた。