IS学園にも、ゴールデンウィークというのは存在する。その初日、一夏は外出届を出して昔からの友人。五反田弾の家に来ていた。
「それで……女の園での……生活はどうだ?」
「気を使うことばっかり……だよ……鈴や箒が居るけど……ぬぉ、そこでそう来るか」
今二人は、大人気ゲーム。インフィニット・ストらトス/バーストスカイ。通称、IS/BSをやっている。
簡単に言えば、過去のモンド・グロッソ参加の各国代表のISを使って対戦するゲームだ。
「ああ、そういやぁ、鈴が来たんだったか……ちぃ、今のを返すか!?」
「変わってなかったよ……甘い!」
どうやら、二人の対戦は一進一退らしい。かなり白熱している。
「そういえば、更に男子が見つかったんだっけか? こなくそ!?」
「おう、桜内義之とシャルル・デュノアな……貰った!!」
画面には、1PWINと書かれてある。どうやら、一夏が勝ったらしい。しかし、弾は
「桜内……義之?」
と一夏が告げた名前が気になったらしく、コントローラを置いた。
「どした?」
「もしかして、この人か!?」
一夏が問い掛けると、弾は本棚から一冊の雑誌を出して、一夏の前で開いた。
そこに写っているのは、確かに義之だった。
「そうそう」
「うおぉぉぉ! マジかよ!?」
一夏の言葉を聞いて、弾は何やら興奮し始めた。
「なんだ、どうした!?」
「義之さんは俺の憧れの人なんだよ! 三年前の音コロで優勝したバンドの一人だ!」
「音コロって、あの音コロか!?」
音コロというのは略称で、正式には音楽コロシアムという。簡単に言えば、日本全国の若手バンドが一堂に集まり、自らの腕を競いあう企画だ。かなり長く続いており、今年で50年目になる。優勝したバンドの中には、デビューしたバンドもある。所謂、登竜門のような企画だ。
「ああ……三年前、義之さんの所属するバンドは当時無名で初出場だったにも関わらず、複数あった優勝候補を下して優勝した……俺にとっては、正に目標の人だ!」
一応一夏も、それなりにバンドには興味あり、一時期は弾ともう一人の友人の御手洗数馬と一緒に活動したことがある。もしIS学園ではなく、藍越学園に行ったら、一緒にバンドを組もうと言った程だ。
(しかし、三年前……ああ、あの時期か……)
一夏はわりと音コロは見に行っていた方で、何故義之を知らなかったのか気になったが、すぐに分かった。三年前のその時期は、ちょうど第二回目のモンド・グロッソが行われていて、そして一夏はある事件に巻き込まれていた。だから、義之のことを知らなかったのだ。
「なあ、一夏! 頼む! 義之さんのサインを貰ってきてくれ!」
「待て待て! 落ち着け!? 義之なら、そろそろ!?」
弾にガクガクと揺すられながら、一夏はあることを言おうとした。そこに
「お兄、一夏さん、お客さんだよ」
と弾の妹、五反田蘭がドアを開けた。そして、二人が視線を向けると
「よ、一夏。いや、合っててよかったよ」
と義之が現れた。
その直後、弾が興奮して奇声を上げ、蘭に五月蝿いと怒られた。
「うおぉぉぉ! 桜内義之さん! 俺、貴方のファンなんです! サインください!」
「いやいや、俺大したことないぞ? まあ、やるけどさ」
義之は弾から受け取った雑誌の自身が写っているページに、サインした。それを受け取った弾は
「ありがとうございます! 宝物にします! あ、三年前の音コロ見に行ってました!」
「ああ、あそこに居たのか」
弾の言葉に、義之は納得。そして義之は、部屋の隅にギターを見つけて
「ちょっと、触らせてもらうよ」
とそのギターを手に取った。そして、数回鳴らすと
「んー……ちょっと、調整が甘いかな」
と呟いてから、少しチューニングした。そして軽く鳴らすと
「ん、これかな?」
「お、おぉぉぉ……」
義之の手際の良いチューニングに、弾は何やら感銘している様子。そして、またチューニングして軽く鳴らすと
「これでよし……ただ、弦が痛んでるみたいだから、新しいのに交換した方がいいよ」
「ありがとうございます! 今度買います!」
義之からギターを受け取った弾は、そう言いながら頭を下げた。そして、何か気になったらしく
「そういえば、、一緒に参加していた人達は?」
と問い掛けた。
「ん? 小恋に渉、ななかのことか?」
「そうです!」
「小恋は、看護師になりたいって、今は本土の看護学校に通ってて、ななかと渉は初音島の学園に通ってるが……」
「出来れば、その人達のサインも欲しいです!」
弾がそう言うと、義之は少し考えてから
「んー……まあ、明日初音島に行くし……確か、小恋も一度帰省するって言ってたし……まあ、いいか」
「ありがとうございます!」
義之の言葉に、弾は深々と頭を下げた。
ここまで、一夏はと言うと
「よし、この技難しいんだよな……けど、コツが掴めてきた」
一人で、ゲームの練習をしていた。