インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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初音島

ゴールデンウィーク二日目、時刻は12時50分。

三日月形の島、初音島に一隻のフェリーが到着し、大勢のお客が次々と降りていく。その中で、目立つ人物が降りてきた。

 

「久しぶりに帰ってきたな、初音島」

 

「ここが……あの有名な……」

 

桜内義之と少女の姿のシャルロット・デュノアだった。二人は朝早くに、IS学園を出発。バイクとフェリーで、初音島まで来たのだ。

 

「いや、長旅だったな。大丈夫か?」

 

「あ、はい。大丈夫です……けど、本当に桜が咲いてるんだ……」

 

義之の問い掛けに答えながら、シャルロットは周囲を見回した。桜はおおよそ三月から四月に掛けて咲く花で、今は既に5月。時期は過ぎているが、まだ咲いていた。

 

「さて、知り合いが来てるはずなんだが……」

 

「よ、義之」

 

義之が周囲を見回そうとすると、一人の青年が声を掛けてきた。全身を黒い服で統一し、左目に眼帯を着けた人物だった。

 

「おお、裕也」

 

「久しいな、義之……」

 

「どうした?」

 

裕也と呼ばれた人物は、シャルロットを見て固まった。そして携帯を取り出すと

 

「まゆきさんに電話しないと」

 

「なぜに、まゆき先輩?」

 

「義之が、いたいけな少女を拐かしてきたと」

 

「やめろ、ふざけんな」

 

青年の言葉に、義之は割りと本気でそう言った。すると、シャルロットが

 

「あの、桜内くん……彼は?」

 

と義之に問い掛けた。すると義之は、青年と取っ組み合いをしながら

 

「ああ、こいつは裕也。俺とは、義理の兄弟に当たる奴だ」

 

と紹介した。

 

「初めまして、お嬢さん。俺の名は防人裕也。今義之に紹介された通り、義之とは義理の兄弟になるな」

 

「は、初めまして! ボクはシャルロット・デュノアと言います!」

 

シャルロットが頭を下げると、裕也は

 

「そんなに畏まらなくていいさ、おおよその事態はさくらさんから聞いている」

 

と告げた。

 

「ほほう……つまり、知っててさっきのを……」

 

「おう、俺なりのどっきりだ」

 

「どっきり過ぎるわ!?」

 

二人の会話には、どこか気安さが感じられる。義理の兄弟というのは、本当なのだろう。

 

「だかな、義之……一つ、残念な知らせがあるんだ」

 

「なんだよ……」

 

「あちらをご覧ください」

 

裕也が示した先を見て、義之は固まった。シャルロットも見てみれば、その先には二人の少女が居た。

一人は身長はシャルロットと同程度だが、眼鏡を掛けた理知的な雰囲気の少女。そしてもう一人は、少し高い身長の快活そうな雰囲気の少女だった。

 

「ま、麻耶にまゆき先輩……なぜ、ここに……」

 

「恋人を迎えにくるのが、おかしいかしら? 義之?」

 

「あたしは、たまたま初音島に帰っててね。そこに、弟くんが帰ってくるって聞いたからね」

 

義之が冷や汗を流しながら問い掛けると、麻耶は笑みを浮かべながら。まゆきと呼ばれた少女は、手をヒラヒラと動かしながら理由を述べた。

義之はどうしようか悩んでいるようだが、麻耶はため息を吐いて

 

「まあ、その娘に関しては、天枷さんから連絡は受けてるわ……」

 

と言った。

 

「は? 天枷から?」

 

「ええ……一緒の部屋になったって」

 

麻耶のその言葉に、義之はビシリと固まった。

 

「さて、義之……どういうことか、説明してくれるわね?」

 

「……はい」

 

麻耶と義之が会話している間、もう一人の少女。

高坂まゆきが

 

「やっほ、初めまして。あたしは、高坂まゆき。弟くんの先輩だね」

 

「あ、はい。よろしくお願いします!」

 

とシャルロットに話し掛けていた。まゆきは麻耶に怒られている義之を見ながら

 

「まあ、弟くんも相当無茶したみたいだしね……まあ、怒られるのも仕方ないか」

 

と頭を掻いた。その隣には、裕也がいつの間にか居る。シャルロットは、そんなまゆきに

 

「あの……ボクのことは……」

 

とたどたどしく聞こうとした。だが、まゆきは

 

「ん? まあ、何らかの厄介事を持ってきたんでしょ?」

 

どこか、あっけらかんとそう言った。

 

「まあ、弟くんなら大体の事態には対処出来るから、安心してるし……」

 

「……」

 

まゆきの言葉に固まっていると、裕也が

 

「まあ、この初音島ではISなど大して興味ないという人が多い……まゆきさんもそうだしな」

 

と語った。

 

「あははー。あたしは、ISなんかより陸上一本だよ! 今は、裕也っていう彼氏も出来たしねぇ」

 

「俺としては、まさかまゆきさんからとは思いませんでしたが……」

 

ISをなんかよりと言ってのけたまゆきに、シャルロットは驚いた。

確かに、以前から話には聞いていた。初音島では、今の風潮たる女尊男卑は通用しない。

約10年前と同じように、男女平等が続いている。

その結果が、今目の前に居る。まゆきから告白されたという裕也と、その裕也と普通に接しているまゆき。

確かに、女尊男卑の様子は無い。それに、麻耶と義之も、麻耶が偉そうにしている様子は全く無い。

確かに説教しているが、それは心配しているからこそと分かる。

 

「まあ、裕也はよくあたしを補佐してくれたしね。陸上部も風紀委員会も」

 

「まあ、他の誰も着いていけなかったから……になりますね」

 

とまゆきと裕也が話していると、説教が終わったらしく

 

「改めて、初めまして。シャルロット・デュノアさん。私は、沢井麻耶です」

 

と麻耶が、シャルロットに声を掛けてきた。

 

「あ、はい! よろしくお願いします!」

 

とシャルロットが畏まっていると、麻耶が

 

「そんなに畏まらなくていいわ。年は、そんなに離れてるわけじゃないし」

 

とシャルロットの肩に手を置いた。

そこに

 

「お姉ちゃん!」

 

と子どもの声が聞こえた。

 

「優斗!」

 

全員が視線を向けた先から、一人の子どもが走って来ていた。

 

「優斗、お母さんは?」

 

「ん、大丈夫。今は、寝てるよ」

 

麻耶の問い掛けに、子ども。沢井優斗はそう答えた。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「よ、優斗。久しぶりだな」

 

優斗は義之に気づくと、嬉しそうに義之に飛び付いた。

 

「おお? 少し、重くなったな?」

 

「うん! 身長も、伸びたよ!」

 

義之の問い掛けに、優斗は嬉しそうに返答。そして、シャルロットに気づいて

 

「お姉さん、誰?」

 

と首を傾げた。

 

「少しの間、芳野家に泊まるシャルロット・デュノアさんよ。ご挨拶なさい」

 

「初めまして、沢井優斗です」

 

麻耶に言われて、優斗は自己紹介しながら頭を下げた。

 

「初めまして、シャルロット・デュノアです」

 

「さてと……そろそろ我が家……芳野家に向かうかな……」

 

「優斗。少しの間、お母さんをお願いね」

 

「うん!」

 

その会話を最後に、義之達は芳野家に向かった。

そこで、大事な話をするために。

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