インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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特訓

「ほらそこ、バランスを崩したらただの的になってしまいますよ!?」

 

「くうっ!?」

 

GWが明けて、二日後の第二アリーナ。そこでは、一夏がヴィシュヌの指導の下で訓練中だった。ヴィシュヌの専用機、ドゥルガー・シン。機体としては、近接戦闘よりの第三世代機だ。ヴィシュヌのヨガによって鍛えられた柔軟性を活かすために装甲は最低限のみにされ、それによる予想外の避け方をされる。今も一夏が繰り出した袈裟懸けの一撃を、ヴィシュヌは身体を大きく反らすことで回避。避けられたことでバランスを崩した一夏に、しなるように振られた回し蹴りが炸裂した。

 

「すげぇ蹴りだ……!」

 

「母親譲りでして!」

 

何とかバランスを建て直した一夏だったが、すでに肉薄していたヴィシュヌの乱撃が放たれる。

ヴィシュヌの母親はその昔、名の知られた格闘家で、人間凶器。または、肉体凶器の二つ名が与えられた格闘技選手だった。ヴィシュヌはその母親の遺伝子を余さず引き継ぎ、非常に高い身体能力と格闘戦闘能力を示していた。

 

「せあっ!」

 

「踏み込みが甘いですよ!!」

 

体勢を立て直した一夏は、右から左へと雪片を振るった。だが、ヴィシュヌは僅かに後退するだけで回避。次の瞬間、ヴィシュヌの蹴りで雪片は蹴り飛ばされ

 

「……参りました」

 

「一度休憩しましょうか」

 

ドゥルガー・シンの非固定(アンロック)ユニットが砲口を覗かせていることに気付いた一夏は、素早く両手を挙げた。一夏は雪片を回収すると、箒や鈴音が待つピットに向かった。そしてヴィシュヌは、義之が待つピットに入った。

 

「んで、一夏はどうだ?」

 

「……時間を考えれば、まだ隙だらけなのは仕方ないと思います……しかし、成長速度が異常と言えます。特訓の最中に、あり得ない速度で成長しています」

 

義之の短い問い掛けに、ヴィシュヌは神妙な表情をしながら振り返った。二人の視線の先では、箒と鈴に何やら世話をされている一夏の姿がある。

 

「やっぱり、そう思うか」

 

「はい……こう言っては何ですが……まるで、そうあるべし……という風に、作られてる(・・・・・)としか、思えません」

 

ヴィシュヌのその言葉に、義之は

 

「確かにな……嫌な予感がするレベルだ」

 

と同意した。そして義之は、背後のベンチに置かれてあった包みを掴んで

 

「そんじゃあ、飯にすっか。腹減ったろ」

 

と言って、ヴィシュヌの前に掲げた。

 

「しかし、そんな暇は……」

 

「向こう、一夏が気絶したが?」

 

「え」

 

義之の言葉に驚いたヴィシュヌは、一夏達が居たピットを見た。確かに、一夏が倒れ伏している。

 

「……見てなかった間に、何が……」

 

「どうせ、一夏がバカ言ったんだろ?」

 

ヴィシュヌは困惑するが、義之はにべもなくそう言うだけだった。まあ、当たっているのだから、仕方ない。

 

「……分かりました、いただきます」

 

「おう、食え食えー」

 

ヴィシュヌの言葉を聞いた義之は、一角で包みを開いた。そして、中の重箱を開けた。中に詰められている食べ物は、全て片手で食べることが考慮されたものだった。

 

「これを、全て……?」

 

「おう。俺の得意分野だからな」

 

ヴィシュヌが驚いた表情を浮かべていると、義之はグッと親指を立てた。そうして義之は、準備が終ると

 

「ほれ、好きに食っていいぞ」

 

と言って、自身もおにぎりを掴んで食べた。それを見たヴィシュヌも、爪楊枝が刺さっている唐揚げを口に運んだ。次の瞬間、驚きで目を見開き

 

「お、美味しいっ」

 

と声を漏らした。

 

「お、そりゃ良かった。タイの料理はよく知らないからな」

 

「……基本的な料理技能は、私より高いですね」

 

「まあ、そういうのは個人差ってもんさ」

 

ヴィシュヌの言葉に、義之は何かを思い出すように語った。確かに義之も料理上手だが、やはり音姫には敵わない。そこは、個人差として仕方ないと思っている。

 

「自分は自分。そう考えれば、比べるのがバカらしくなるさ」

 

はっきり言ってしまえば、義之も羨ましいと思うことがある。自分より料理上手な音姫。何事も要領よく出来る由夢。しかし、やはり上ばかりを見たってどうしようも出来ないことを知っている。だから、比べるのではなく、自分は自分と割り切っている。

 

「……なるほど……」

 

「まあ、なんだったら、今度料理を教えるさ」

 

そして二人は、料理を食べることに意識を向けた。なお天枷は、簪の機体の開発を手伝ってる最中である。

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