時は経ち、タッグ戦当日。厳正な審査の末に、くじ引きが行われて初戦の試合相手が発表された。
そして義之とシャルロットの二人は、それを割り振られたロッカーで見ていた。一回戦の相手は、専用機持ちでもクラス代表でもない四組の生徒二人だった。
「まあ、この二人だったら勝てるかな?」
「油断は禁物だぞ、桜内。ISの習熟度では、桜内は低いからな」
義之が首を傾げながら言うと、美夏が少し睨みながら苦言を呈した。確かに、美夏の言う通り、相手のほうがISの習熟度が高いだろう。
「それで、織斑君とギャラクシーさんの対戦相手は……え?」
シャルロットは一夏とヴィシュヌの対戦相手を見て、眼を見開いた。何せ、その対戦相手が箒とラウラのペアだったからだ。
「あっちゃあ……箒は、あまりコミュニケーション能力が高くないからな……交友関係の低さが仇になったか……」
実はこのタッグ戦だが、もし期日までにペアが組めなかった場合は、残った生徒でランダムに組むと通達されていたのだ。そして箒は決められずに、残っていたラウラと組むことになったのだろう。
「こりゃ……色々と試されそうだな、一夏は……」
義之はそう言いながら、頭を掻いた。そして、一夏達より先に義之達の試合の時間が訪れた。だから義之は、美夏と手を繋いで
「桜花、展開」
と呟いた。その直後、義之の体にISが展開されていた。それを確認していると、義之は一度武装欄を開いて確認した。
「んあ? 新しい武装がある?」
そしてその一覧の中に、以前は無かった武装の名前が書かれていることに気付いた。
『ああ、沢井が新たに用意した代物だ。何でも、火力を上げるため、と言っていたがな』
「ほうほう」
美夏の説明に、義之はその武装の種類を把握した。確かに、桜花は近接戦闘能力は高かったが、遠距離系は乏しかった。そこから、麻耶が用意してくれた。そう考えた義之は、内心で
(ありがとうな、麻耶……勝ってみせるさ)
と麻耶に感謝の言葉を言いながら、勝つことを誓った。そして、義之とシャルロットはカタパルトを使って出撃。その二名と交戦。結果を言えば、勝利した。
「うしっ。出だしは上々だな」
「そうだね」
「む、織斑達の試合が始まるようだ」
美夏はそう言いながら、入れ替わる形で出撃した一夏とヴィシュヌのペアが映された。一夏は少し緊張した表情だが、それをヴィシュヌが宥めているようだ。しかしそれより気になったのが、先に出撃してきていた箒とラウラのペアだった。
「箒は……少し緊張気味だが、真剣なことが分かるが……」
「ボーティヴィッヒさん……何て言うか、軽蔑……ううん、軽視してるね……篠ノ之さんも織斑君も」
モニターに映るラウラを見て、二人はそう思った。今のラウラの目には、負の感情の光があった。
「さて、どうなるか……」
と義之が言った直後に、試合が開始。それと同時に、一夏が最高速で突撃した。だが、その突撃が不意に止まった。
「開幕初撃は読まれてたみたいだね」
「あれが、AICか」
AIC、正式名称をアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。ISに採用されているPIC。パッシブ・イナーシャル・キャンセラーとは真逆の性能を有する、ドイツが開発した
「確かに、強力な能力だな……一対一だったら、確実に負けだ」
「けど、これはタッグ戦だから」
シャルロットがそう言った直後、上空からまるで彗星を彷彿させる速度で、ヴィシュヌがラウラに蹴りを放った。それこそが、AICの欠点だった。AICは発動するのに、非常に高い集中力を必要とするのだ。先の開幕初撃は、確かに攻撃の意図もあったが、一夏は自分から囮になったのだ。ラウラは、最初から一夏を執拗に狙っていた。それを逆手に取り、一夏が囮になっている間に、ヴィシュヌは高度を取り、遥か頭上から飛び蹴りを放ったのだ。
「AICの欠点……一対多には向かない……流石に気付いたか」
「うん、それに……ボーティヴィッヒさんは篠ノ之さんを無視してる……あれじゃあ、戦いにならない」
そう言っている間に、フォローに箒が入り、長刀をヴィシュヌに振り下ろしたが、それは間に入った一夏によって防がれた。しかしその直後、箒の足にラウラが放ったワイヤーが絡んで放り投げた。
「ダメだ、あいつ……完全に一対多……いや、一対一をやってるつもりだな」
「自分の力を絶対だって思ってるんだね……」
「あれでは、勝てる戦いも勝てないだろうに」
エネルギー補給が終わった美夏が戻ってくると、箒にヴィシュヌの蹴りと一夏の零落白夜が直撃。活動を停止した。それは、一夏とヴィシュヌの作戦勝ちだった。
こまめに入れ替わり攻撃しつつ、先に箒を撃破。その後、ラウラに最大攻撃を叩き込むというもの。そして、第一段階はクリアした。後は、ラウラを撃破するのみ。
「さて、ここからだが……」
「二人とも、前衛格闘型……息つく暇もないラッシュが有効……かな?」
「どうやら、織斑達も同じ答えらしい」
美夏が言った直後、ヴィシュヌと一夏がほぼ同時にラウラに攻撃を仕掛けた。まさしく、息つく暇もない連撃がラウラに襲いかかった。
ヴィシュヌの見事な蹴りに一夏の剣撃。互いに邪魔にならかいように配慮しながらも、見事にラウラを追い詰めていく。
「あー……これは、二人の勝ちかな?」
義之がそう言った直後、一夏の攻撃がラウラのレールカノンを破壊し、そこにヴィシュヌの蹴りがラウラの胴体、側頭部に直撃した。こうなってしまえば、最早態勢の立て直しも難しい。ラウラは、いいように二人の攻撃を受けていく。一夏が零落白夜じゃないのは、エネルギー消費の関係からだろう。
だがその時、義之は背筋に悪寒を感じた。その発生源は、ラウラ。
「この魔力……!?」
「え、魔力……?」
義之の呟きに、シャルロットが反応した直後。劇的な変化が始まった。そして、第二幕が上がる。