インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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前に

激動のタッグ戦から、数時間後。食堂

 

「あ、シャルル。胡椒取ってくれ」

 

「はい、どうぞ」

 

一夏に請われて、シャルロットは近くに置いてあった胡椒のビンを一夏に差し出した。受け取った一夏は、胡椒をラーメンに掛けてから、すすり始めた。

その時、入り口付近のモニターを見てた女子達が

 

「タッグ戦……中止……」

 

「あの話も、無し……」

 

「賭けも……」

 

と何やら落ち込んだ様子で、券売機に向かった。それを見た一夏は、麺を飲み込むと

 

「なんだったんだ、あれ?」

 

「さあ……僕も知らないや」

 

一夏が首を傾げると、オムライスを飲み込んだシャルロットも首を傾げた。

女子達が言ったのは、タッグ戦で優勝した女子は一夏、義之、シャルロット(シャルル)の何れかと付き合えるという噂のことだ。

それに合わせるように、一部では誰が優勝するか賭けまで行われていた。しかし、ラウラの暴走により、タッグ戦は全員の力量を知るために最初の一回戦分は行うが、それで終了ということになったのだ。

すると一夏は、モニターの前で未だに立ち尽くしている箒を見つけた。だからか、スタスタと箒に歩み寄り

 

「箒、あの話だが……付き合ってもいいぞ」

 

と話し掛けた。

その直後、ギュルリと勢いよく箒は振り向き

 

「本当か!?」

 

と問い掛けた。

 

「ああ。幾らでも付き合うぞ、買い物位」

 

一夏がそう言った直後、見事に腰が入ったボディーブローを箒は一夏に見舞い

 

「そんなことだろうと!」

 

一夏が体をくの字に曲げた直後に、顎にアッパーが炸裂。

 

「思ったわ!!」

 

箒の見事な連撃に、一夏は苦痛の声を漏らすこともなく、沈んだ。

一連を見ていたシャルロットは、思わずといった様子で

 

「……狙ってやったのかな?」

 

と呟いた。しかし、カレーを食べた義之が

 

「ただの天然だろ」

 

と一蹴した。その間に、箒は券売機に向かい、一夏は気絶したのかピクリとも動かない。

その時だった。入り口に山田先生が現れて

 

「わあっ!? 織斑君!? どうしたんですか!?」

 

と倒れている一夏に気付いて、一夏の体を揺らした。しかし、動く気配が一切無いためか、少し考えてから近くの空いていたボックス席に寝かせた。そして、義之とシャルロットに近寄り

 

「あの、織斑君に何があったのか知ってます?」

 

と問い掛けた。

 

「乙女の純情を弄んだ末路です」

 

義之はそう言うが、場面を見てなかった山田先生は首を傾げた。そして、分からなかったのか、一度頭を振ってから

 

「えっと、桜内君とデュノア君には伝えて起きますね。今日の午後9時から、一時間。男子の入浴時間が設けられることが決まりました」

 

とその連絡事項を告げた。それを聞いた二人は、時計に目を向けた。事件の聴取があった為に何時もより夕食が遅く、今は午後8時30分を少し過ぎた辺りだった。

 

「調整に手間取りまして、遅くなりました」

 

「ああ、いえ、お疲れ様です」

 

山田先生が軽く頭を下げると、義之は労りの言葉を掛けた。よく見れば、山田先生の目許に僅かだが隈が見えたのだ。恐らく、ここ数日は入浴時間の調整の為に四苦八苦していたのだろう。

 

「えっと、織斑君を医務室に運んだら大浴場のカギを開けて、貼り紙を貼りますので、食べ終わって着替え等を持ったら来てください」

 

山田先生はそう言うと、一夏をヒョイっと肩に担いで食堂を後にした。流石は元代表候補生。見た目は華奢だが、体は鍛えてあるらしい。そんな山田先生を見送った二人は、顔を見合わせて

 

「さて……どうすっか」

 

「どうしよう」

 

と声を漏らした。何せ、シャルロットは女の子だ。義之からしたらある程度は慣れているが、シャルロットは恥ずかしいだろう。

とりあえず、料理を手早く食べ終わると部屋に向かい、着替え等を回収。二人してあーだの、うーだの声を漏らしながら大浴場に向かった。

三人集まれば文珠の知恵とは言うが、悲しいかな。二人では解決案は浮かばず、無情にも大浴場に到着してしまった。

 

「あ、来ましたね。では、ごゆっくりどうぞ」

 

山田先生はそう言って、自作らしい貼り紙を大浴場の入り口に貼ると、戻っていった。

少しして義之は、頭を掻いてから

 

「しゃあない……シャルロット、君が入りな」

 

と言って、一度籠に入れた着替え等に手を伸ばした。

 

「え……?」

 

「俺は少し時間測ってから、自室に戻ってシャワー浴びるわ」

 

義之はそう言って、ドアから顔を出して、左右を確認した。恐らく、誰か居ないか確認しているのだろう。

もしかしたら、まだ男子の時間を知らなかったり、知っていて突撃しようとしてくる女子が居る可能性が有るからだ。

この時二人は知らなかったが、実は階段に千冬が陣取っており、凄まじいプレッシャーを放っていたりする。

そして義之が僅かに、体を外に出した時

 

「あの、桜内君……桜内君が入っていいよ」

 

とシャルロットが、義之の裾を掴んだ。

 

「いいのか?」

 

「うん……いっぱいお世話になったし……」

 

義之が問い掛けると、シャルロットは微笑みながらそう告げた。それを聞いた義之は、少し黙考してから

 

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

とドアを閉めた。

そして、数分後

 

「おお……マジで広いし、こんなん映画だけかと思った」

 

義之は大浴場の広さとお湯を流すライオンの彫刻に、驚いていた。そうして、手早く体を洗ってからお風呂に浸かった。数十人が一斉に入ってもまだ余裕が有りそうな浴槽に、今入ってるのは義之一人。

 

(贅沢過ぎるなあ……)

 

そう考えると義之は、とりあえずボーとしながら天井を見ていた。その時、不意にドアが開く音がして

 

(一夏が復活したか?)

 

と思った。しかし、義之の耳に入ったのは

 

「お、お邪魔するね」

 

という、シャルロットの声だった。

 

「ふぁっ!?」

 

「あ、こっち見ないで……恥ずかしいから……」

 

完全に予想外だった義之は、思わず奇声を漏らし、シャルロットは顔を真っ赤にしながら湯船に浸かった。そこから少しの間、二人は沈黙。そして先に口を開いたのは、シャルロットだった。

 

「あのね……桜内君のお陰で、未来が拓けた……ようやく、希望が見えてきたの……」

 

「ん、そうか……」

 

「だからね……これからよろしくね、お義兄ちゃん」

 

シャルロットは何処か恥ずかしそうに、そう告げた。

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