翌日、義之が起きると既にシャルロットの姿は無くなっており、机の上に
(先に教室に行っておいて byシャルロット)
と書かれたメモが置いてあった。それを一読した義之は
(ということは、今日か……まあ、成るようになるか)
と自身を納得させ、制服に着替えると食堂に向かった。そして手早く朝食を済ませると、教室に向かった。そこには、既に一夏の姿があったのだが、何やら首に手を添えて頭を左右に動かしている。恐らく、首に違和感を覚えているのだろう。
「さて、どうなるかな」
義之はそう呟くと、少し遅れてやってきた美夏の調子を確認するために、美夏に端末を接続。確認を始めた。それから少しすると、チャイムが鳴り山田先生が入ってきたのだが、何やら疲れた様子で
「はーい、朝礼を始めます……そして、皆さんに紹介する人が二人居ます……入ってください」
と半ば投げ槍に、ドアの方に声を掛けた。そして入ってきた二人は、義之がよく知る二人だった。
「まず、転校生です」
「初音島から来ました、沢井麻耶です。一応天枷さん専属の整備士になります。よろしくお願いします」
麻耶が自己紹介すると、教室がざわめき
「初音島ってことは、桜内くんと同じ……」
「そうだった、天枷さんってロボットだったわね……」
という言葉が聞こえた。結構忘れられているが、美夏はロボットだ。
「次に、編入……って言っていいのか……」
「芳野シャルロットです。改めて、よろしくお願いします」
麻耶の隣に居たのは、女子用の制服を着たシャルロットだった。
「というわけで、男の子ではなく、女の子でした……部屋割り、どうしましょう……」
山田先生が頭を抱えると、麻耶が山田先生の肩を叩き
「山田先生、私は義之と同じ部屋で大丈夫ですよ」
と進言した。すると、山田先生が困惑した様子で
「しかし、異性と同じ部屋は……ん? 名前呼び?」
と首を傾げた。すると麻耶が、右手を挙げて
「私と義之は、恋人ですから、問題ありません」
と告げた。よく見れば、右手の薬指に指輪が嵌められている。それを聞いた数人が、驚いた表情で義之に視線を向けた。すると義之は、胸元に手を入れて、チェーンに通された指輪を取り出した。
その直後
「えええぇぇぇぇぇ!?」
「ウソぉぉぉ!?」
「既に恋人が居たの!?」
「通りで、誘惑してたのに一切反応しなかったはずよ!!」
「やっぱり、いい男には恋人位居るわよね!?」
「あ、あれはロシア式ね……中々博識なのね、桜内君って」
と阿鼻叫喚となった。そして義之は、何人かの言葉を聞いて
(あ、誘惑されてたんか……気付かなかった)
と思っていた。そして義之が指輪をチェーンに通していた理由だが、至って初歩的なミスだ。実はペアリングを買う際に麻耶のサイズは測っていたが、自分のは測り忘れていて、サイズが合わなかったのである。
なんとも、お粗末な話である。
その時、轟音と共に後ろのドアが吹き飛んだ。全員が一斉に視線を向けると、そこに居たのは甲龍を展開した鈴だった。
「い、ち、かぁぁぁぁぁ!?」
何故か、大変ご立腹の様子。すると一夏は
「待て待て待て!? なんで怒ってるんだ!?」
と問い掛けた。その問い掛けに、鈴は
「そいつ、女だったみたいじゃない! しかも、昨日は男の入浴時間があったわよね!?」
とシャルロットを指差しながら、怒鳴り付けた。それを聞いて、一夏は
「待てって! 俺は昨日、気付いたら気絶してて、気が付いたのは夜11時頃だったんだよ! その後、シャワー浴びてすぐに寝たし……」
と説明を試みた。しかし
「問答無用!! 吹っ飛べ!!」
鈴はそれを一蹴し、甲龍の
「天枷」
「うむ」
義之が美夏の名前を呼びながら、鈴を指差した。すると、美夏は一気に鈴の懐に入り
「はっ!!」
とその拳を、鈴の胸部に叩き込んだ。
「がっ!?」
「忘れてないか? 美夏とて、一応はISなんだぞ? 機能の限定使用位は雑作もない」
美夏の一撃で、龍咆の発射は強制的にキャンセルされ、鈴は二三歩後退。その間に美夏は、僅かに後退し手の感触を確かめるように手を振った。そこに
「それに、私の教室でよくぞ無断でISを展開したな。鳳」
「げ」
いつの間にか、鈴の背後に
「それに、教室のドアも破壊……さて、これの請求も考えなくてはな……鳳、解除しろ」
「……はい」
千冬の指示に、鈴は泣きそうになりながらも甲龍を解除した。それを見た千冬は、鈴の首根っこを掴み持ち上げ
「山田君、続きは頼む。私は、このバカに反省文を書かせる」
と告げて、去っていった。それを一同が見送っていると、その後ろのドアが有った場所を通り抜けて、一人の女子が現れた。他でもない、ラウラだ。
「む? ここに、ドアが有った筈だが……」
ラウラはドアが無いことに気付き、不思議そうに首を傾げたが、すぐに一夏に視線を向けて
「居た」
と近付いた。一夏は僅かに身構えたが、ラウラの雰囲気が前と違うことに気付き、構えを解いた。一夏の前に立つと、一度クラス全体を見回し
「……済まなかった」
と頭を下げた。一同が困惑していると、ラウラは頭を上げ
「……私が間違っていた。力だけが全てではない……私は、知らないことが多すぎる……だから、私に色んなことを教えてくれ……私も、私に出来ることをやるつもりだ……お願いする」
と言って、再度頭を下げた。それを見た一夏は、一度クラスを見回してから、ラウラの頭に手を置いて
「おう、俺達に教えられることは、教える。だから、一緒に頑張ろうぜ」
と言って、再度クラスを見回した。ラウラが頭を上げると、クラスメイト達は、全員親指を立てたりしながら
「これからよろしく!」
「ボーデヴィッヒさん、かわいい!」
「一緒に、青春を過ごしましょ!」
と言った。それを見ていた義之は
「どうだ、麻耶。なかなか面白いクラスだろ?」
と隣に立っている麻耶に問い掛けた。すると麻耶は、フフッと笑みを溢しながら
「そうね。いろいろ楽しみになるわね」
と同意した。
「さて、義之。さっきの入浴時間に関して、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「おっと、次は教室移動だ」
「逃がすとでも?」
「デスヨネー」
義之の明日はどっちだ。