インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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一日目 後

夜、義之は一夏と一緒に温泉に浸かっていた。

 

「あー……いい湯だなぁ……」

 

「確かに……ここの温泉、疲労回復にいいらしいぞ……」

 

「そりゃ有り難い……今日は疲れた……」

 

二人はのんびり浸かりながら、のんびりと会話していた。今は、周りに気を使う必要もないため、のんびり出来た。

 

「なあ、義之……確か、沢井さんと付き合ってるんだよな?」

 

「あ? ああ、そうだな……二年目になるかな? まあ、その前から付き合いはあるな」

 

一夏からの突然の問い掛けに、義之は僅かに片眉を上げると、そう答えた。

 

「その前から?」

 

「ああ……麻耶は、俺が居たクラスのクラス委員長でな。そん時は、委員長って呼んでたんだ……俺を含めた問題児達を上手く纏められるってことで、先生達からは期待されてたんだとよ」

 

「義之が……問題児?」

 

一夏は義之が自身を問題児と言ったのが信じられなかったようで、少し驚いた表情で義之を見た。一夏からしたら、義之は頼りになるお兄さんという印象と立ち位置である。その義之が、問題児だったというのが信じられなかったのだ。

 

「おおよ。悪友に巻き込まれた形が多いがな、時々手伝いもしたしな……まさか、花火を上げるとは思わなかったが」

 

「学校で、打ち上げ花火……?」

 

流石に、学校で打ち上げ花火をするのは中々予想出来ないことで、一夏は呆然としていた。しかし、無理もない。花火が打ち上げられた時は、義之も呆然とした。

 

「俺は所属してなかったが、一人が非公式新聞部ってのを率いててな。神出鬼没で、しかも情報網も凄くてなぁ……時々、何処からその情報を持ってきた? って言いたくなるからなぁ」

 

「非公式の意味はあるのか……?」

 

一夏の疑問は最もである。

 

「んで、そんな俺達が居たクラスを唯一纏めたのが麻耶だったんだな……いや、改めてみると、個性的なクラスだわな」

 

「個性的過ぎないか?」

 

一夏の言葉に、義之は笑わざるを得なかった。個性的過ぎて、下手したら誰かの存在感が霞む。

 

「付き合い始めたのは、付属三年。つまり、中学三年だな……ある意味、俺が天枷を起こしたのが理由だ」

 

「天枷を、起こした?」

 

「ああ……前に説明したろ? 天枷は、今から50年前に造られたロボットだって……その頃はな、ロボットに対する当たりが激しかったらしい……だから当時の責任者は、天枷を眠らせたんだ……未来では、ロボットに対する当たりが無くなることを信じて……それを、俺が偶然起こしちまったんだ……さっき言った悪友のせいでな……」

 

「そういえば、中学の先生が言ってたな……反ロボット運動……だったか?」

 

一夏は思い出すように、視線を上に向けて呟いた。義之は、一度頷いてから

 

「更に言えば、ロボット排斥運動もあった……そいつらのせいで、麻耶も大変な思いをしたしな……」

 

と言った。その表情は、怒りが滲んでるのが伺える。

 

「沢井さんが?」

 

「ああ……麻耶の親父さんは、天枷研究所でロボットの開発をしてたんだがな……詳しくは言えないが、自殺しちまったんだ……」

 

「つっ……」

 

義之の話を聞いた一夏は、驚きで目を見開いた。まだ会ってそんなに経っていないが、麻耶の朗らかさを知っており、そこからそんな過去とは予想出来なかったのだ。

 

「しかも、麻耶のお母さんは麻耶とまだ小さい弟を育てるために一生懸命働いて……体を壊しちまって……未だに一日の大半は寝たきりなんだ……」

 

「心配だろうに……IS学園に来て、大丈夫なのか?」

 

「今はアパートを引き払って、俺の家に住んでるし、こっちには医療に詳しい人も一緒に住んでるから、大丈夫だ」

 

義之が言った医療に詳しい人というのは、束のことである。束は薬を調合しつつ、綾の体にナノマシンを投与。それにより、少しずつだが綾の体調は回復に向かっていた。

 

「なあ、一夏」

 

「なんだ?」

 

「お前はさ、魔法を信じてるか?」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

場所は変わり、女子風呂。麻耶は一年生の中でも特に関わりの強い女子達と一緒に入浴していた。既に女子のほぼ全員が入浴が終わり、今入ってるメンバーは千冬と少し話していたために入るのが遅れたのだ。

 

「ふむ……いい湯加減だ」

 

「本当……」

 

箒の呟きに同意したのは、簪である。

簪は少し前に、ようやく専用機が実践運用段階になったからか、以前より表情と言葉が柔らかくなった。

 

「海が見えながらの御風呂というのも、中々優雅ですわね」

 

「同意します……こういうのを、露天風呂……と言うんでしたか……」

 

「そうね……」

 

上から、セシリア、ヴィシュヌ、鈴である。だが鈴は、まるで肉親を殺されたかのような表情で二人。正確には、二人の胸を見ていた。

 

「シャルロット。鈴は、なぜあんな表情なんだ?」

 

「うーん……なんて言ったらいいのかな……」

 

ラウラは鈴の表情が気になりシャルロットに問い掛けるが、シャルロットはどう教えるべきか迷っていた。

本人が気にしてる事を話題にするとなると、非常にデリケートとなるのである。

迂闊に話した内容が聞こえたらどうなるか、押して知るべし。だからシャルロットも、言い方に困ったのである。

 

「美夏には、よくわからんな」

 

「天枷さんは、それでいいのよ」

 

体を洗いながら美夏は首を傾げ、麻耶は星空を見上げた。都会の光の無い星空は、少し手を伸ばせば星を掴めそうだ。

 

「沢井さん、一つ聞きたいことが」

 

「ん、なにかしら?」

 

気付けば、簪が麻耶に近付いてきていた。

 

「天枷研究所の所長……芳野さくらって、どういう人?」

 

「さくらさん? そうね……優しく、面倒見のいい人ね……それに、教育熱心だし勉強熱心……研究熱心」

 

「聞いた話だと、複数の博士号を持ってるって……」

 

「その通りね。機械、植物、生物学、語学、量子……確か、全部で10は持ってるって聞いたわね」

 

麻耶も勉強熱心な部類だが、その麻耶から見てもさくらは更に上を行く。

 

「その人が考えた技術だから、芳野理論……そのどれもが、画期的かつ実用的……世界各国で採用されてきてる……」

 

「その呼び方、さくらさんは恥ずかしいみたいね」

 

芳野理論という呼び方を聞いた麻耶は、かつて恥ずかしそうに頭を抱えたさくらを思い出した。

 

「さくらさんからしたら、風見理論って呼んでほしいみたいね」

 

「けれど、もう芳野理論という呼び方が定着してるから、無理……私も見たけど、どれも凄い技術だった」

 

「そういえば、簪は科学者だったわね」

 

「沢井さんや桜内君には負けるけど……」

 

「私達は、電子系に特化してるわ。貴女は電子だけでなく、機械、生物も得意でしょ?」

 

「……よく知ってる」

 

「普段を見てれば分かるわ」

 

実は簪は、一夏に特訓をする際に怪我をしてもすぐに治療していた。治療というのは、簡単なものから難しいものまで多彩にあり、簪はその何れも的確に対応していた。

 

「貴女は、それを誇りなさい……怪我を治せる人がいるっていうのは、大きいわ」

 

麻耶はそう言って、簪の頭を撫でた。予想してなかった行為に、簪が固まっていると

 

「あ、ごめんなさい。弟が居るから、つい」

 

「ううん……昔を思い出しただけ……大丈夫」

 

実は簪と楯無だが、喧嘩して未だに仲が悪いのだ。

これは簪が誤解しているのが原因だが、未だに気づいていない。

 

「明日は、機体訓練か……何も起きないといいけど……」

 

麻耶はそう言って、再び星空を見上げたのだった。

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