臨海学校二日目
場所は、砂浜。そこに、一年生全員が集まっており、その前に千冬が立っていた。
「これより、臨海学校二日目。IS実機練習を行う! ……が、その前に……おい、遅刻者」
「は、はい!!」
なんと珍しいことに、今朝はラウラが寝坊したのである。恐らくだが、こういった経験が初めてだから、興奮して寝れなかったのかもしれない。
「ISの機能の一つ、双方向通信ネットワークに関して説明してみろ」
「はい! 双方向通信ネットワークは……」
千冬に指摘され、ラウラは言われた項目の内容を言った。そして、言い終わると
「ふむ。模範的な説明だな。今回の遅刻は不問にしておこう」
千冬のその言葉に、ラウラは安堵した表情を浮かべた。
「では実機訓練を開始する前に、訓練機組と専用機組に別れろ。訓練機組は、あちらに居る教師達の所に集まれ」
千冬に言われ、一年生達は専用機組と訓練機組に別れた。のだが、何故か専用機組の中に箒の姿が有った。
「あの、織斑先生……なんで、箒がこっちに……」
箒が居ることを不思議に思い、簪がそう問い掛けた。すると千冬は、渋面を浮かべながら
「それはだな……」
と説明しようとした。その時
「ちーちゃーん! 箒ちゃーん!!」
となんとも、喧しい声が聞こえた。その声を聞いた千冬は、深々と溜め息を吐いた。千冬の後方、崖の方からあの束が土煙を上げながら走ってきている。
千冬は振り返ると同時に右手を上げて、飛び込んできた束の頭を掴んだ。
「やあやあ、ちーちゃん! 久し振りだねぇ! さあさあ、ハグをしようか! ハグを……グエェェェ!?」
束は千冬と抱き合いたいらしく腕をジタバタと動かしていたが、頭蓋骨から鳴ってはいけない音が響き渡り、呻き声を挙げ始めた。
「束……私は言った筈だ……私は静かに目立たずに来いと……それがなんだ、あのニンジンロケットは……! 中庭に落として……! あの中庭の修理代を、誰が支払うと思っている……!?」
「そんなこと、束さんが知ったことじゃ……アアアアァァァァァアァアァァァ!?」
束の言葉に怒ったのか、千冬は血管を浮き上がらせる程の力を込めて、束の頭にアイアンクローを叩き込みながら、高々と持ち上げた。それから少しすると、束から力が抜けたので、千冬はそんな束を投げ捨てた。
「ち、ちーちゃん……前より、握力上がってない……?」
ダメージが大きいのか、束はフラフラと立ち上がると、そんな束の頭を掴んで
「なに……今までお前に痛め付けられた胃のお返しをしようと、秘かにな……ハッハッハ、その甲斐があったと言うものだ!」
「まさかの再度!? 待って待って!? 束さんの頭は、リンゴじゃなアアアアァァァァァアァアァァァ!?」
その後、千冬が落ち着くまで数分を要した。
「さて、篠ノ之。前に出ろ」
「は、はい!」
千冬に呼ばれ、箒はフラフラしている束のほうに近寄った。すると束が指を鳴らし、その直後に地中から一つの金属製の箱が出てきた。
箒がその箱に視線を向けると同時に、箱が開いて中から一機のISが姿を見せた。
赤い紅いISだった。
「箒ちゃん専用、
「だ、第四世代!?」
「今ようやく、世界中で第三世代の開発が軌道に乗り始めたばっかりなのに!?」
束が告げた言葉を聞いて、専用機組は驚愕していた。
しかし、無理もない。今シャルロットが言ったように、世界各国でようやく、第三世代ISの開発が軌道に乗り始めたばかりだというのに、束はその一世代先の第四世代ISを開発し、出してきたのだから。
「第四世代は、単独で
束がそう言った時、義之は嫌な予感をヒシヒシと感じていた。
まるで、取り返しのつかない場所に、足を踏み入れたように。