束による箒への第四世代IS、紅椿が披露され、箒が試験運用をしていた時だった。
「お、織斑先生! 緊急事態です!!」
と山田先生が、端末を掲げながら走ってきた。
「どうしました、山田先生」
千冬が問い掛けると、山田先生は端末を千冬に差し出して
「これを見てください!」
「これは……」
山田先生が差し出した端末を見た千冬は、山田先生と手話を始めた。その内容が分からず、義之は首を傾げた。数秒後、美夏が
「桜内、不味いぞ」
と小さく呟いた。
「どうした?」
「……アメリカ軍とイスラエル軍が協同開発した新型機が、謎の暴走を起こしたらしい……その撃破命令が、IS学園に通達されたようだ」
「…………マジかよ…………」
美夏の言葉を聞いた義之は、深々と溜め息混じりに呟くことしか出来なかった。
美夏が手話の内容を解読したことに関しては、どうせ杉並辺りが教えたのだろう、と義之は判断して、突っ込まなかった。
その時、千冬が
「専用機持ちと指定した生徒以外は、別命有るまで各部屋にて待機! 教師陣は、何時でも動けるように準備をしておけ!」
と指示を飛ばした。その後、専用機持ちと指定された生徒。本音、麻耶の二人がひとつの部屋に集められていた。恐らくは、宴会場なのだろう。その部屋に、管制機器を運び込んだようだ。
「これより、状況を説明する! 今から数時間前、アメリカ軍とイスラエル軍が協同開発した最新鋭機たる
千冬のその話で、一気に生徒達に緊張感が走った。麻耶はかなり緊張しているが、それに気付いた義之が麻耶の頭を撫でた。
その時、ラウラが手を挙げて
「織斑先生、相手の詳細なスペックを!」
と進言した。
「許可する。ただし、今居る作戦メンバー以外に口外すれば、卒業まで監視が付くことを教えておく……朝倉先生」
「はい」
名前を呼ばれた音姫は、キーボードを叩き、対象機。銀の福音の詳細スペックを表示させた。そのスペックを見て、その場に居た生徒達は唸り声を漏らしながら
「この機体……高機動砲撃重視型ですね……厄介な……」
「コンセプトとしては、私のブルーティアーズと同じですわね……」
「この威力……下手したら、一撃で絶対防御が発動しかねんぞ……」
「専用の防御パックが有っても、長くは保たないかな……やるなら、短期で撃破するしか……」
「……なあ、こいつさ……格闘兵装が無いって明らかにおかしいだろ……アメリカさん、隠してる可能性が高いだろ、これ……それを考慮すると、単機は危険だ。最低でも、小隊編制が無難だ」
と意見を交わしていく。そうしていく内に、案が纏まったのか、義之が手を挙げて
「織斑先生、今回は小隊による高機動戦を提案します」
と告げた。
「その理由は?」
「この相手。福音ですが、単機または二機連携では対処が厳しいと判断します。幾ら試験機とは言っても、兵装がひとつだけな訳が有りません。この中で一番早いのは恐らく、箒の機体……しかし箒はまだ、機体に慣れておらず、腕に不安が残ります」
千冬に促された義之がそこまで説明すると、箒は僅かに顔をしかめながら、義之を軽く睨んだ。だが義之は、そんな視線を軽く受け流し
「そして、次に早いのは一夏の白式と俺の桜花、シャルロットの白百合です。ならば、その三機と箒の四人による小隊を編制し、事に当たるべきと判断しました。麻耶と本音の二人ならば、調整も手早く終わらせるので、可能と判断します」
と説明した。それを聞いた千冬は、腕を組んで少し黙考し
「……分かった。お前の案を採用する。沢井、布仏、四機の調整を」
「分かりました」
「分かりました~」
千冬の指示を受けて、麻耶と本音は頷いた。
そして、十数分後。砂浜に、四機のISを纏った四人が布陣していた。その四人の前に、千冬が立ち
「これより、作戦を開始する。以後の小隊指揮は、桜内に一任する」
「俺ですか?」
「お前ならば、突発的な事態にも冷静さを失わないと判断したからだ。やれるな?」
「まあ、やりますが」
義之の返答に、千冬は頷いた。そして、改めて四人を見てから
「今作戦、全員の帰還を以て、成功とする! 作戦開始!」
と力強く告げた。その直後、四人は一斉に出撃していった。それを見送った麻耶と音姫は小さく
「義之……」
「無事に、帰ってきてね……」
と呟いた。だが、その願いは虚しくも守られなかった。