インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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裏にて

銀の福音撃破作戦から、約4時間後。

仮司令室。

そこで千冬は、山田先生と一緒にモニターを睨んでおり

 

「山田君……あれから、福音はどうだ」

 

と山田先生に問いかけた。

 

「少し前、ようやく場所が判明しました……戦闘域から西に約20km程の場所にて、動きを止めています……アメリカとイスラエルが新たに開示した情報から考えて、ナノマシンによる損傷の修復中だと思われます」

 

「両国め……情報を秘匿するなど……事態の重要性が分かっているのか……!」

 

山田先生の報告を聞いた千冬は、怒りの声を滲ませた。二ヶ国が秘匿していた情報は、以下になる。

1、福音が有人機であり、パイロットの情報

2、福音に搭載されていた武装

3、修復用のナノマシン

 

これらの情報を、二ヶ国は秘匿していた。特に、武装に関しては冗談にならないレベルである。

 

「……それで、防衛省からは?」

 

「……ダメです。返事は……」

 

山田先生の返事に、千冬はギリッと歯を噛み鳴らした。この時二人は知らなかったが、実は防衛省は大騒ぎになっていた。

今から、約3時間程前。防衛省

その中では、様々な職員が駆け回ったり、電話対応に襲われていた。

 

「はい、はい! 今回のことに対しましては、我々にとっても完全に寝耳に水でして……」

 

「おい! 対象機の詳細なデータは!?」

 

「IS学園側から、渡されたデータがこちらです!!」

 

「報道屋共が、門を超えた!」

 

「警備員に頼んで、捕まえろ! 不法侵入で!!」

 

困惑と怒号が飛び交う中、一人の男が堂々と廊下を歩いていた。それは、冬也である。すると、一人の職員が気付き

 

「神代議員! まだ入院してる筈では!?」

 

と驚いていた。しかし冬也は、スタスタと歩きながら

 

「ただ寝ているなど、出来るものか……状況はどうなっている」

 

とその職員に問いかけた。するとその職員は、脇に抱えていたバインダーから書類を取り

 

「こちらをご覧ください」

 

と冬也に差し出した。それを受け取った冬也は、一読してから

 

「こんな無理難題を、学生に押し付けたバカ共はどうした!?」

 

「今は、外部への通信等を一切制限し、第5会議室に監禁しています」

 

職員の話を聞いた冬也は、その第5会議室に向かった。同時刻、第5会議室。その会議室には、二人の女性が居た。その二人が、IS学園に銀の福音撃破を命じた防衛省議員である。

 

「くそっ……端末を没収されたから、IS学園の作戦状況が分からないではないか」

 

「最低でも、IS学園に入ったという男共が排除出来れば……」

 

実はその議員達は、過激派の女性権利主義者だった。そして、IS学園内に居る仲間に、漁業組合に連絡しないように命じたのも彼女達だった。

だが彼女達は、端末や携帯の全てを没収され、どうなっているのか全く知らないでいた。そこに、冬也が先ほどの職員を伴って、ドアを乱暴に開けて入ってきた。

 

「おやおや、負傷して入院している筈の神代議員ではありませんか」

 

「そのように乱暴に入ってくるなど、育ちが知れますよ?」

 

女性議員達は嫌みったらしく言うが、冬也は一切気にした様子もなく

 

「貴様らだな、IS学園に軍用ISの撃破を命じたバカ共は」

 

「なんだと!?」

 

「我々に、何の非が有ると!?」

 

二人がそう言った直後、冬也は会議室に据え付けられているテレビの電源を入れて、ニュースチャンネルに切り替えた。

 

『では、現場の益田アナウンサー!』

 

『はい! こちらは、現場の益田です! 今から約1時間程前に、IS学園の生徒二名が重傷を負って帰還したのを確認しました! 調べましたところ、どうやら防衛省議員からIS学園に対し、暴走した軍用ISの撃破命令が下されたようです!』

 

なんと、IS学園が臨海学校として使用している華月荘を遠くから撮影している。しかもその内容は、自分達がIS学園に命じた内容までニュースキャスターが語っていた。その内容に驚きで固まっていると、冬也が

 

「貴様らは知らなかったようだがな、IS学園が毎年あの旅館で臨海学校をしていることなど、地元の方々やメディアは知っていたんだよ。メディアの中には、ISを毛嫌いしている局もあるからな……貴様らは、そのメディアに格好のエサをばら蒔いたんだよ! そのせいで、今防衛省は、教育委員会や生徒の親御さん方、果てにはメディアが殺到してきている!! 貴様ら、どうやって責任を取るつもりだ!?」

 

そこまで大声を張り上げた冬也だったが、傷口が痛んだようで脇腹を抑え、前屈みになった。

 

「神代議員!?」

 

「すまない……言っておくが、今上層部は貴様らへの処分を検討中だ……貴様らは」

 

「少し落ち着きなさい、神代君」

 

職員に支えられた冬也を止めたのは、一人の女性だった。長い黒髪に、整った容姿。街中を歩けば、誰もが振り向くような美人。その名は、五条院雪(ごじょういんせつ)。若くして防衛省の大臣になった女傑であり、名門と知られる五条院家の若き当主だ。

 

「五条院大臣!」

 

「君。すまないが、彼の為に水を用意してくれ。これ、彼の痛み止めだ。見舞いに行ったら、医師から渡されたんだ。まったく、君も無理をするね? まだ入院している筈なのに」

 

雪が呆れた表情で見ると、椅子に座らされた冬也は

 

「すいません、五条院大臣……しかし、ただ寝ている訳にもいかず……」

 

「いや。君が怒っていなければ、私がこいつらを殴り倒していたかもしれん……」

 

冬也の謝罪に雪は返答しながら、椅子に座り

 

「さて、貴様ら……貴様らの安直な行動のせいで、今我々は大バッシングを受けているぞ? 更に言えば、国の未来を担うべき子供たちが、二人も瀕死の重傷を負った……この責任、貴様らはどう取るというのかな?」

 

と二人を睨んだ。その眼力に、二人は一瞬怖じ気づくが

 

「しかし、傷付いたのは、たかが男でしょう?」

 

「でしたら、替えなど幾らでも」

 

と言った。その直後、二人の顔面を、それぞれ冬也と雪が殴って倒した。

 

「貴様らは、誰が傷付いたのか知らんのか!?」

 

「テレビを見てみろ!!」

 

と指差した。殴られた二人は、一度怒りと困惑の表情を浮かべ、テレビを見た。今テレビには、二人の少年の顔写真。一夏と義之の顔写真と名前が表示されている。

 

「ふん、男の顔と名前など、どうでも……」

 

「いや、待て……織斑……?」

 

一人は侮蔑の表情を浮かべていたが、もう一人は一夏の名前に覚えがあったようだ。

 

「そうだ……この少年は、貴様らが敬愛している織斑千冬のたった一人の弟だ」

 

「そして、こっちの少年……こちらは、日本が世界に誇る天才の一人……芳野さくら博士の義理の息子だ! 貴様らは、そんな初歩的なことすら知らなかったのか!?」

 

雪の怒声に、二人は完全に固まってしまった。そして雪は、机を強く叩き

 

「貴様らのあらゆる議員権限を剥奪し、しばらくこの部屋に監禁する! トイレに行きたい時は、そこの内線を使って、警備員でも呼ぶんだな! 二度と、その顔を私に見せるな!!」

 

と言って、冬也を伴い、会議室を出た。そして、端末を使い

 

「第5会議室の周囲に、手練れの警備員を10人近く配備。バカ共が外に出ないよう見張れ。もし逃げようとしたら、攻撃することも許可する」

 

と通達した。恐らく、少ししたら警備員達が駆け付けるだろう。雪は端末を胸元に仕舞い

 

「神代君……大丈夫かい?」

 

と優しく問いかけた。すると冬也は、近くの椅子に腰掛けて

 

「……すいません、五条院さん……実は、痛みで立つのもやっとです……」

 

荒く呼吸しながら、返答した。実は雪と冬也は、古馴染みなのだ。日本を守る魔法使いの家系。神代家と五条院家。二人は若い頃、イギリスの英国王立魔法魔術学校に在籍していた。その時、二人して上級生の役を担っていたが、そこは割愛する。

 

「さて、IS学園に応援を送らないと……」

 

「でしたら、特技研に連絡を……俺の名前を出せば、すぐに動くはずです……」

 

冬也の告げた名前を聞いて、雪はニヤリと笑い

 

「あいつらか……確かに、腕利きの連中だ。分かった……私から連絡するから、君は暫く休みなさい」

 

「すいません、五条院さん……」

 

冬也が謝ると、雪は微笑んで

 

「冬也君は悪くないよ……今は、ゆっくり休んで」

 

と昔みたいに、女性らしい口調で冬也を諭した。

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