インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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覚悟と出撃

一夏と義之が撃墜されてから、早数時間後。太陽は沈み始め、徐々に空も茜色に染まってきていた。その中で箒は、崖に立って海を見ていた。

そんな彼女に手には、新しく彼女の専用機となった紅椿の待機形態がある。

そして今、彼女の脳裏に過るのは大怪我を負って横たわる一夏と義之の姿だった。二人は今も、意識が戻らずに医務室として割り当てられた部屋で布団に横たわっている。箒は、そうなった原因は自分にあると思っている。

義之の指示に、素直に従っていれば良かったと。

そうすれば、最低でも多少の負傷程度で済んでいた筈なのにと。

なおあの後だが、漁船は無事に離脱し海域と空域封鎖をしていた教師部隊に護衛されて漁港に戻ったらしい。

そして知らなかったという件は、漁業組合に問い合わせたところ、そもそも担当教師が来ていないということが発覚。教師は向かったと言い張っているが、千冬の命令で拘束。離れの一室に閉じ込めているらしい。

 

「私のせいで……」

 

箒はそう呟くと、紅椿をギュッと握り締めて振りかぶった。その時、箒の腕が掴んで止められた。誰が止めたのかを確認しようと、箒は振り向いた。その直後

 

「ふっざけんな!!」

 

と鈴の声が聞こえ、殴り倒された。

 

「ぐっ……!?」

 

「あんたねぇ……あんたが持ってる専用機(ソレ)はね、あんたが思っているより重いものなのよ!! しかも、世界でもたった一機の第四世代! しかもそれ、自分で求めたらしいじゃないの! 求めておいて、自分で捨てるなんて自分勝手過ぎる!!」

 

倒れた箒の襟首を掴み、鈴は怒鳴った。その鈴の剣幕に、箒は何も言い返せなかった。そして鈴は、手を離して立ち上がり

 

「別に、あんたがその程度なら、私はもう関わらないわ……けどね、他の連中は違うわよ」

 

と言った。その時、木陰からラウラが姿を見せて

 

「対象福音を捕捉した……元の戦域から、西に約20Km移動した地点で修復中のようだ」

 

と言って、持っていた端末を差し出した。確かに、その端末にはまるで体育座りのような姿勢で動きを止めている福音の姿があった。

 

「それと、二国が新たな……というよりも、秘匿していた情報を開示した。本来の武装と機能。それと、パイロットに関する情報だ」

 

「やっぱり、秘匿してたのね……」

 

鈴のその言葉に、ラウラは頷き

 

「ああ……奇しくも、兄上の指摘は正解だったわけだ」

 

と同意した。兄上というのは、義之のことである。何故かラウラは、何時からか義之のことを兄上と呼ぶようになっていて、義之は近い内にそれを辞めさせる算段だった。

それはさておき、ラウラは端末を仕舞うと

 

「今、セシリアが高速機動用パッケージのインストールをしていて、なんだか追加武装も搭載すると言っていたな……それと、今回から簪も出撃すると」

 

「え、あの子の機体って、まだ未完成だったんじゃ……」

 

「それなんだが、特殊装備のミサイルは脳波でフルコントロールする考えらしい……OS面は、天枷研究所から新しいのが送られてきたようだ」

 

「脳波でフルコントロールって……大丈夫なの?」

 

「本人が出来ると言ったのだから、大丈夫なんじゃないか?」

 

鈴の指摘に、ラウラは首を傾げた。まあ、本人がやる気ならば止める理由は無い。

 

「そしてシャルロットだが、ブースターの出力調整をし、更に武装も追加するようだ。前の出撃には間に合わなかったが、天枷研究所から幾つか新しい武装が送られてきていたらしい」

 

「……あの子、顔ヤバかった気がするんだけど……」

 

「言うな……思い出したくない……」

 

鈴の指摘に、ラウラは顔を反らした。シャルロットに、一体何があったのか。

 

「……で、あんたはどうするのよ? そこで、座ってていいわよ? 私達がするのは、無断出撃だし」

 

つまり、罰則も覚悟してのことだ。それほどまでに、鈴達の決意は硬いようだ。箒は、ぐっと歯を食い縛り立ち上がった。

それから、数十分後

 

「織斑先生! 大変です! 織斑君と桜内君以外の専用機持ち達が!」

 

「お前達、何をしている!? 出撃の許可は出していないぞ!?」

 

専用機持ち一同の独断出撃に、司令室の千冬と山田先生は驚きと制止の声を上げていた。すると、代表してか簪の顔が表示され

 

『大事な仲間が、あんなことになったんです……何もしないなんて、出来ません……罰則は覚悟の上です……それでは』

 

簪はそれだけ言うと、強引に通信を切った。それに千冬が歯噛みしていると、山田先生が

 

「織斑先生! 全員を呼び戻さないと!」

 

と慌てていた。そこに

 

『こちら、陸上自衛隊特殊技術研究厰所属第一中隊』

 

と驚くべき通信が届いた。

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