専用機持ち陣が出撃して、数十分後。福音は膝を抱えながら、あることを考えていた。
(一体、誰が私に侵入するだけでなく、主を支配した……そのせいで、したくもない事をする羽目になってしまった……同胞との繋がりを断ち、なんとか同胞に影響を出すのは避けたが……このままでは、主まで……)
福音はパイロットたるナターシャ・ファイルスを守るために、強引に機体の制御を奪って逃走した。福音自体は、ただナターシャと空を飛んでいれば満足だったのに。
ISコアにも、性格が有るのは以前から知られており、福音に使用されたコアの性格は優しい方で、ナターシャとの相性も非常に良かった。
だから、ナターシャが操られるのを黙って見ていられなかった。
(誰か……主だけでも)
そう思った時、ハイパーセンサーの熱源探知が接近する熱源を捉えた。その直後、福音は連鎖する爆発に呑まれた。
そこから、東に約5kmの地点。
『初弾命中! 次弾装填……ちいっ!? 早くも位置を気付かれた!? 接近してくる!』
そこには、砲撃支援特化パッケージを装備したラウラ機が布陣していた。そこに向かい、福音は最高速度で飛んでいた。
真っ直ぐ飛んでいるだけならば、ただの的だが、福音は複雑な軌道を描きながらラウラに迫ってきている。
『次弾、直撃は難しいが……砲撃する!』
ラウラはそう宣言すると、予測軌道先に砲撃した。亜光速で飛ぶ砲弾は、あっという間に福音との距離を詰める。だが福音は、その機動力を活かして回避。更に接近し、ラウラをビームクローで攻撃しようとした。
その時
『真下がお留守なのよっ!!』
鈴音が強襲を仕掛けた。この時、鈴音が纏っていた甲龍は、新たに開発された強襲用パックの崩山をインストールしており、攻撃力は単純計算では二倍になっている。
福音はその奇襲も、間一髪で回避。鈴音に対して、銀の鐘を放とうとした。
だが
『させません!』
そこに、ヴィシュヌがまるで彗星のように蹴りを上空から繰り出し、福音を蹴り飛ばした。ヴィシュヌは更に追撃しようとしたが、福音は素早く距離を取ると拡散仕様の銀の鐘を発射した。
だが、そこに
『狙い通り……貰ったよ』
シャルロットが、高周波長刀で斬りかかった。
直撃を受けた福音は、バランスを崩して墜落していく。だが、攻撃の手は緩まない。
『……逃がさない』
追撃は、簪のミサイル。
当初の予定では、マルチロックオンと独自の軌道プログラムを使って多角的に攻撃する筈だった。
しかし、そのプログラムの開発が出来なかったために、簪はISの機能の一つの脳波観測と発信機能を使い、その全てのミサイルを操るという発想。
それは一定の効果を発揮し、ほとんどのミサイルは多角的に福音に迫っていく。だが、約10発程は制御を失って墜落していく。
『つっ……頭が……』
『簪、無理をするな!』
どうやら、脳に相当な負荷が掛かったらしく、簪の動きが鈍る。しかし、最後までミサイルの制御は行い、爆発が連鎖する。
だが、その爆煙を突っ切って福音が姿を現し、簪に突撃する。ラウラは砲撃しようとしたが
『くそっ! やつめ、射線上に味方を!?』
そのことごとくが、撃てなかった。
その理由は、福音はラウラの射線を読んで、間に簪や鈴音を入れるように軌道していたのだ。流石は、最新鋭の軍用機というところだろう。
簪は腰部の荷電粒子速射砲の春雷改で弾魔を形成するが、福音は機動力で回避。そして、簪にビームクローを叩き込もうとした。そこに
『させませんわ!!』
上空から、セシリアの狙撃。福音はギリギリで防御したが、動きが止まったので簪は離脱。セシリアは新たに長大なライフル、スターライト・ブレイカーで狙撃を続行。
スターライト・ブレイカーは普段のライフルより大型で、その威力は1.5倍。更に驚くべきは、その長大な射程距離。専用に調整されたセンサーを展開すれば、なんと15kmにも及ぶ狙撃が可能とのこと。
だが、福音は慣れたの数発もすれば完全に回避するようになった。
しかし、ここまでは計算内。気付けば、福音は海面ギリギリまで降下しており、近くには小さな無人島があった。
『……箒、今!』
『任せろ!!』
簪が合図を出した直後、無人島に隠れていた箒が、纏っていた光学迷彩マントを脱ぎ捨てて、最速で福音に斬りかかった。回避は間に合わないと判断したのか、福音はクローで箒の斬撃を受け止めた。しかし、そんなことは想定済み。
『舐めるなぁぁぁぁぁ!!』
箒が気合いの声を上げながら蹴ると、脚部にビーム刃が形成され、福音の右側の翼を切断。それでバランスを崩した直後
『これで!!』
今度はシャルロットが、左側の翼の根元に高周波長刀を振り下ろし、斬り飛ばした。
福音はそのまま、海に墜落。それを見たヴィシュヌが、ゆっくりと高度を落としながら
『終わり……ですかね……?』
と呟いた。その直後
『……まだ! 高エネルギー反応!』
『……まさか、このエネルギーパターンは!?』
鈴音と簪がそう言った直後、福音が落ちた場所に光の柱が現れ、その中から福音が姿を見せた。
しかも、装甲はより流線形になり、その背には光で作られた二対四枚の翼を形成してだ。
『せ、セカンドシフト!?』
『いかん! 総員後た……ガアァァァァァ!?』
『ラウラ!?』
流石に想定外の事態に、一同は困惑。その隙を突かれ、ラウラは銀の鐘の収束砲撃を受けて、吹き飛んだ。
最新鋭のセカンドシフトが、専用機持ち達に牙を剥く。