インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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契約

義之と麻耶の研究室、それを見回していた簪とセシリアは、二人に勧められた席に座った。そして、簪が

 

「……そもそも、なんで桜内君はISに触ることになったの?」

 

と義之に問い掛けた。確かに、ロボット研究者がISに触る機会など、早々考えられないだろう。それを聞かれた義之は、あーと声を漏らしてから

 

「ISの技術をロボットに転用出来ないかってことで、さくらさんに頼んでISを一機回してもらって調べてたんだが……」

 

「その時に、天枷さんに叩かれてバランスを崩して偶々手を伸ばした先にあったISに触れたら、装着出来たってだけなのよ」

 

義之と麻耶の話を聞いて、セシリアと簪は運が悪いと思ってしまった。それが無かったら義之は、ISに関わる時間が減り、研究に費やせる時間が増えただろう。

だが、それが有ったから今こうして交流出来ている。

歴史に、IF(たられば)は存在しない。あるのは、確実な事実のみだ。

 

「まあ、それはさておき……っと、少しすまん」

 

義之は一言断ると、近くの机の上にあった一枚の書類を手に取り、一読した。そして、麻耶の肩を軽く叩き

 

「麻耶、この数値」

 

「ん……少し負荷が掛かってるわね……この型だったら予備も有るから、すぐに交換出来るわね」

 

どうやら、部品の一ヶ所に負荷が掛かっているようで、予備部品も有るからすぐに終わるようだ。そして、少し会話したらその書類を置いて

 

「悪いな、待たせて。他に、何か質問はあるか?」

 

と二人を見た。するとセシリアが

 

「その、お二人がロボットに関わる切っ掛けはなんだったんですの?」

 

と問い掛けてきた。確かに、まだ学生の二人がロボット研究に関わるとなったら、ロボットに関わるしかないだろう。

 

「あー……まあ、俺は偶然ある場所で天枷を起こしたし、そこから天枷をフォローしたりしていてな……そうしていく内に、興味を持ったのもあるし……何より、麻耶がロボットに深く関わってたからな」

 

「そうね……私の死んだお父さんが、ロボット開発者だったのよ。今販売されてるμのプロトタイプに当たる美冬と一世代前の美秋……その二機を作ったのが、私のお父さんだったの」

 

義之と麻耶が立て続けに説明すると、セシリアは納得した表情で頷いた。そして、一拍置いてから

 

「親子でロボット研究……それは、亡くなったお父様の遺志を継いだ……ということでしょうか?」

 

と問い掛けた。

 

「まあ、そうなるわね……お父さんが目指した世界……ロボットと人間の共存……その為に、頑張ってるわ」

 

麻耶は少し考えた後、微笑みながらそう答えた。少し考えたのは、一時期とはいえロボットを嫌うことで自身の均衡を保った時期が有ったからだろう。

 

「そうですか……よろしければ、投資も含めて色々とお手伝いをしましょうか?」

 

「え?」

 

セシリアから予想外な申し出に、麻耶が驚きの声を漏らした。するとセシリアは

 

「少し前に芳野博士ともお話しましたが、今は世界的に様々な分野の研究が停滞してきています……それを私は危惧しており、あまりにもISに偏ってしまうと後々に障害になってしまう……」

 

と現状を語り始めた。確かにISが台頭を始めてから、一気にIS関連の研究は進んでいるが、代わりに戦闘機を含めた飛行機類。自動車産業類は新型の研究・開発が停滞してしまっている。それにより、近年は既存のモデルのマイナーチェンジばかりが主流になり、見た目はさほど変わらない為に買う気にならないという理由から売れない。そういった負の連鎖により、IS関連以外の重工業が近年規模を縮小。働き手が路頭に迷う、もしくは研究者が満足に研究が出来なくなるという状況になり、経済がどんどん悪くなってきている。

それを一部の投資家達が危惧しているのだ。

 

「現在、我がオルコット家には不当な理由や人員削減で研究所から離れた研究者達が何人か身を寄せております。もしこちらの提案を受け入れてくださるならば、その者達をこちらに回すことも出来ますわ」

 

セシリアの提案は、はっきり言ってしまえば魅力的に過ぎた。義之達が研究するようになってから約2年、半年ごとに与えられる研究予算は少しずつだが減っている。

確実に、女性権利主義者の影響だろうことが予想出来る。

 

「どうでしょうか?」

 

「……はっきり言ってしまえば、魅力的な提案だわ……けど、どうしてそこまで?」

 

麻耶からの問い掛けに、セシリアは

 

「将来有望な所への投資ですわ。最近、色々な分野で停滞が目立ちますので、微力かもしれませんが助けになればと思いまして」

 

と答えた。そこまで聞いて、麻耶はセシリアに他意は無いと考えて

 

「流石に私の一存じゃあ判断出来ないけれど……貴女の提案、助かるわ」

 

「ということは……」

 

「ええ……私から、直接さくらさんに伝えておくわ……多分、全面的に話が通ると思うわ」

 

麻耶の言葉に、セシリアは安堵した表情を浮かべた。そして、右手を差し伸べて

 

「早いかもしれませんが、宜しくお願いしますわ」

 

「ええ、こちらこそ」

 

セシリアと麻耶は、握手を交わした。

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