インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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いらっしゃい、初音島

「ここが初音島か……本当に、春以外にも桜が咲いてるんだな……」

 

そう驚いていたのは、フェリーの発着場から出てきた一夏だった。一夏は義之達の故郷たる初音島が気になり、夏休みを機に観光も兼ねて来ていた。

 

「しかも、本当に男女平等なんだな……なんか、久しぶりに見た……」

 

ISが発表されて、早10年。その10年という歳月で、女尊男卑が当たり前になってしまい、最早聞かなくなった男女平等。

しかし、初音島では未だに男女平等が続いていた。

故に、誰かが呼び始めたのが最後の楽園(ラスト・エデン)

この初音島には、女尊男卑に馴染めなかったり、不当な理由で居場所を失った人達がドンドンと集まってきているという。それに伴い、三日月形の島の周囲に一つずつ人工島が造られてきている。

 

「しかし、知らないだけで人工島(メガフロート)が造られてたなんてな……まるでSF小説の世界だ……」

 

一夏はそう言いながら、巨大なクレーンの着いた船を見た。そのクレーンの先には、巨大な部材が吊られている。

 

「すげぇな、初音島……」

 

一夏が感心しながら歩いていると

 

「ほら、義之。芳野博士に頼まれたんだから」

 

「分かってるって」

 

と聞き覚えがある声が聞こえ、一夏は振り向いた。その先には、麻耶と義之が居た。

 

「って、一夏か? なんで初音島に?」

 

「あら、織斑君」

 

どうやら義之と麻耶も気づいたらしく、近づいてきた。二人は白衣姿な為に、天枷研究所の職員として動いているようだ。

 

「観光ついでに来たんだ……しかし凄いな、初音島。噂には聞いてたけど……最新技術の集まりだな」

 

一夏が言ったのは、人工島のことだ。

 

「観光なら、さくら公園に行きな。ほい、地図」

 

「おお、ありがとう」

 

義之は何処からか、初音島の地図を取り出すと一夏に手渡した。すると一夏は

 

「それで二人は、何の用事でここに?」

 

「ああ、あそこにさくらさんの代わりに行くんだよ」

 

一夏の問い掛けに、義之は人工島の建設をしている船を指差した。

 

「……まさに、技術の最先端じゃないか……」

 

「ああ、そうだわ……織斑君」

 

「はい? っと、これは?」

 

船の方を見ていた一夏に声を掛けると、麻耶は一夏に名刺を手渡した。その裏には、一夏が麻耶と義之の知り合いだと書かれてある。

 

「もし興味が有るなら、天枷研究所にも来てね。それを警備員に見せれば、中を見せてくれると思うし、なんならさくらさんに会えると思うわ」

 

「マジか」

 

ロボット開発の最先端たる天枷研究所。一夏も年頃の少年の為、ロボットには凄く興味があった。

まさか天枷研究所に入れるかもしれない、と一夏が考えている間に麻耶が腕時計を見て

 

「っと、義之。そろそろ時間が」

 

「ああ、行かないとな……じゃあな、一夏」

 

軽く挨拶すると二人は、船着き場の方に向かっていった。それを見送った一夏は、地図を見てから

 

「……最初はさくら公園に行くか」

 

と地図を頼りに歩き始めた。歩き始めて、しばらくしてその公園に到着した一夏は、驚きで固まった。

 

「これは、凄いな……一面桜だ……」

 

桜並木だけでなく、地面にも桜の花びらが大量に舞っている。そんな光景は初めて見たのだ。

 

「幻想的って表現がしっくりくるな……」

 

一夏が歩いていると、少し先に一台のバンが停まっていた。近寄ってみると、チョコバナナが売られていた。

 

「チョコバナナだ……懐かしいな……」

 

チョコバナナ、お祭りの時等に出店で出される定番の一つだろう。一夏も小さい時は千冬と共に祭りに向かっては、チョコバナナを食べた記憶がある。

 

「流石は初音島……桜味とかある……」

 

一夏は興味本位もあり、桜味を購入。近くのベンチに座って食べ始めた。

 

(こんなにのんびりしたの、久しぶりだな……)

 

特にIS学園に入ってからは、激動と言っても過言ではなかった。それは、この先も続くことになるだろう。

だけど、今の一時だけでも休もう。一夏はそう考えながら、のんびりと過ごした。

 

(さて、次は何処に行くか……)

 

チョコバナナの棒を捨てながら一夏は、次に行く場所を考えていた。すると

 

「あれ、織斑君?」

 

と聞き覚えがある声を聞き、一夏は振り向いた。その先に居たのは、音姫だった。その後ろには、一夏の知らない少女がいる。

 

「あ、朝倉先生!」

 

「あはは、音姫さんでいいよ。学校の中じゃないからね。観光に来たのかな?」

 

一夏が狼狽えていると、音姫は笑みを浮かべながら問い掛けた。

 

「は、はい。そうです……音姫、さんは、どうして……」

 

「私は初音島(ここ)の出身だから、帰省中だよ。あ、由夢ちゃん、こっちに」

 

音姫に呼ばれて、少し離れた位置に居た少女。

音姫の妹の朝倉由夢(ゆめ)が近寄り

 

「なに、お姉ちゃん。彼、IS学園の生徒さん?」

 

「そ。弟君と同じ、ISを扱える男性の織斑一夏君だよ。ほら、ご挨拶」

 

「初めまして、兄さんやお姉ちゃんがお世話になってます。朝倉由夢です」

 

「え、えっと、こちらこそ二人にはお世話になってます。織斑一夏です」

 

一夏は緊張した様子で、由夢に自己紹介した。音姫もだったが、由夢もかなりの美少女である。緊張するな、というのは土台無理な話だろう。

 

「それで、織斑君は観光に来たんだよね?」

 

「はい、そうです。まあ、前から興味はあったんですが……今なら、金銭的にも余裕があったので」

 

音姫からの再度の問い掛けに、一夏は答えた。

義之もだが、一夏も専用機持ちとして企業から給料を支払われているのだ。その給料は、バイトとは比較に成らない程だ。

 

「なるほどね……」

 

「音姫さんは、妹さんと買い物ですか?」

 

「うん、そうだよ。今日は久しぶりに、弟君の家でご飯を作ろうかなって思ってね」

 

一夏の問い掛けに、音姫は朗らかに答えた。

IS学園では教師として公平に接している音姫だが、今の方が自然なように一夏には見えた。すると由夢が

 

「えっと、織斑さんは……」

 

「ああ、一夏でいいよ。年齢、そんなに離れてないだろうし」

 

一夏の言葉に、由夢は少し黙考。そして頷いてから

 

「一夏さん、宿は大丈夫ですか?」

 

と問い掛けた。

 

「え……確か、初音島にもホテルが有ったよね?」

 

「はい。ですが、毎年観光期はホテルは満員ですよ?」

 

由夢はそう言って、ホテルの空き部屋状態が見れるホームページを開き、一夏に見せた。そこには、満員御礼の文字が表示されていた。

 

「やっば……」

 

「あちゃー……予約してなかったんだ……んー……弟君の家は、沢井さんの家族やアイシアさんで結構手狭だし……うん、決めた……織斑君」

 

「は、はい?」

 

一夏が顔を青ざめていると、音姫はピンと人差し指を立てて

 

「私達の家に、泊まる?」

 

と提案した。

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