買い物が終わった後、一夏を連れて音姫と由夢は朝倉家に向かった。一般的な二階建ての一軒家で、年季を感じるが丁寧に使われてるからか、余りボロく見えない。
その隣にあるのは、純和風の家だ。
「あ、そっちが弟くんとさくらさんの家だよ」
音姫はそう説明しながら、ドアを開けた。
「お爺ちゃん、ただいまー!」
「おう、おかえり」
直前に新聞を取ったのか、新聞を脇に抱えた老人が居た。
「お爺ちゃん。今日から二日間、彼を泊めるね」
「ん?」
「あ、初めまして! 織斑一夏です! お世話になります!」
朝倉純一が視線を向けると、一夏は慌てて自己紹介した。すると、純一は
「ああ、義之と同じ男でIS操縦者の……うん、ゆっくりしなさい」
と優しく出迎える意思を示した。あっさりと受け入れを示したのと、その優しさに一夏は驚いていた。
「え、いいんですか?」
「構わないさ……二人の人を見る目は確かだ……」
純一はそう言って、奥に向かっていった。どうやら、純一は孫娘二人を全面的に信頼しているようだ。
そして、一夏が音姫と由夢の後に上がると
「部屋は、こっちだよ」
と音姫が案内した。二階の部屋に案内され、一夏は部屋を見回し
「この部屋……誰か使ってたんですか?」
と音姫に問い掛けた。
「うん。前は、弟くんが生活してた部屋なんだ。昔はさくらさんが、中々家に帰らなかったから一緒に住んでて、風見学園付属に入学した時に弟くんはさくらさんの家に移ったの」
「なるほど……義之が使ってた部屋か……」
音姫の説明を聞きながら、一夏はキャリーバッグを部屋の隅に置いた。本棚には、楽器に関する本が残されている。恐らく、義之が残した本だろう。
『織斑くん、降りてきてくれる?』
「あ、はい!」
下の階から聞こえてきた音姫の呼び掛けに答え、一夏は階段を降りた。すると、待っていた音姫が
「一応説明するね。ここがトイレ。その向かいがお風呂があって、脱衣所には洗濯機があるの。そこの籠に入れてくれれば、大丈夫だからね」
「ありがとうございます……」
音姫から説明を聞きながら、一夏はトイレと風呂の場所を覚えた。そして考えたのは、入る前に確認するようにする事だった。
でなければ、音姫か由夢の裸を見てしまう可能性があるからだ。
「それで、ここが居間」
そう言ってドアを開けると、暖かみを感じる居間が見えた。一般的な見た目の居間で、少し大きめの机の周りに椅子が何個か置いてある。
「椅子はここ」
「はい」
音姫の説明を、一夏は覚えていく。
そこに、由夢が現れて
「お姉ちゃん、兄さんから電話だよ」
「ん? 弟くんから?」
由夢に呼ばれて、音姫は離れた。入れ替わる形で、由夢が
「一夏さん、IS学園での兄さんはどうですか?」
と質問してきた。やはり、家族同然に育ったから気になっているようだ。
「義之は、一年生達の間じゃあ頼れる兄貴分だな。俺も手伝ってもらったりしてる」
「なるほど……」
一夏の説明に、由夢は頷いた。
実際、1年生達から。特にクラスメイト達から、義之は頼りにされている。麻耶と合わせて、よく相談を受けては勉強を教えたりしている。
一夏も義之によく勉強を教えてもらっており、特にIS関連の難しい事を教えてもらっていた。そのお陰で、夏休み前に行われた定期試験は赤点を免れた。
義之に教え方は的確で、一夏にも分かり易かったのだ。
「沢井さんは、クラスで何か決める時とかに手伝ってもらったな」
「沢井先輩は風見学園でクラス委員をやってましたから、慣れてたからですよ」
一夏の話を聞いて、由夢はそう説明した。それを聞いて、一夏は麻耶の手際の良さに納得した。
経験していたのなら、的確なのも当たり前だと。
「それで、天枷さんは……」
「ああ、天枷さんはロボットだって信じられない位に人間に見えるし、普通にクラスに馴染んでるよ」
「良かった……天枷さん、何の問題も無いんですね」
一夏の話を聞いて、由夢は安心した様子で頷いていた。
由夢のその反応に、一夏が不思議そうにしていると
「その、以前は反ロボット団体のせいで、少し人間不信なところがあったので……変な問題を起こしてないか、心配だったんです」
と少し心配そうに語った。
反ロボット団体の事は、一夏も知っている。最近、介護施設に押し入り、その施設に配備されていたロボットを破壊したりしている。
反ロボット団体の言い分は、ロボットのせいで人間の仕事が無くなり、就職出来ないという物だったり、ただ単に、気に入らないからと様々だ。
確かにそれを考えると、人間不信になっても仕方ないだろう。
「大丈夫だ。1年生達には、反ロボット団体は居ないからな」
一夏のその言葉に、由夢は安堵した様子でため息を吐いた。
そこに、音姫が戻ってきて
「お待たせ。それじゃあ、夕飯作ろうか。織斑くん、手伝ってくれる?」
と一夏に声を掛けた。
「分かりました」
「私、見てていいですか?」
「ん、大丈夫だ」
一夏と由夢が普通に接しているのを見て、音姫は安心した表情をしていた。
そして、朝倉家で過ごす二日間が始まる。