「織斑くん、本当に料理上手なんだね」
「まあ、小さい時からやってますから」
「うわぁ……凄い手際……」
音姫は一夏の手際を褒め、由夢は驚いていた。初めて立った朝倉家のキッチンだが、一切の淀みなく料理を作っている。
今音姫と一夏が作っているのは、グラタンである。
音姫がマカロニや具材の下拵えをしていて、一夏はホワイトソースを作っている。
このホワイトソースだが、作るとなったら非常に手間である。市販品もあるが、一夏はこだわりがある為に作ることにした。
「けど、よくホワイトソースを作れるようになったね」
「何回も失敗して、焦がしては調べましたよ」
音姫が感心していると、一夏は懐かしみながら返答した。そもそもホワイトソース作りは、プロの料理人でも失敗してしまうこともある程に、非常に難しいのだ。
火加減、ヘラを回す早さ。そういった要素が複雑に絡んでいるのが、ホワイトソース作りだ。
「何か、秘訣でもあるんですか?」
「ホワイトソース作りは、根気だな……トロトロになるまで一定の早さでかき混ぜるのが大事だ……俺は追加で、チーズとみじん切りにしたタマネギを入れるけど……」
由夢に説明しながら一夏は、事前に用意しておいた粉チーズとみじん切りのタマネギを少量入れた。その後に、味の調整として塩胡椒を軽く振った。
その後、極少量を器によそって、由夢と音姫に差し出し
「味見どうぞ」
「あ、はい」
「うん」
一夏から受け取った二人は、それぞれ軽く冷ましてから味見した。
「なるほど……軽くチーズを入れたことで、味が濃くなるんだ……」
「しかも、タマネギを入れることでしつこく無くなってる……少しの工夫で、変わるんですね……」
音姫も時間が有る時は作るが、基本はやはり市販のホワイトソースを使う。それとの差に、二人して驚いた。
「さて、グラタンだから……」
「下拵えは終わってるよ」
一夏が視線を動かすと、音姫が下拵えが終わった食材を出した。シーフードを主体にしつつ、バランス良く準備されている。
「それじゃあ、私はシーフードグラタンを作るから……」
「俺は、スタンダードのを作りますね」
「お願いね」
そこからは、二人が手際良く調理。シーフードとスタンダードの2つを作り、オーブンに入れて
「由夢ちゃん、お皿とか用意して」
「うん、分かった」
音姫の指示を聞いて、由夢は食器棚から食器の用意を始めた。それを見た音姫は、キッチンから出ていき
『お爺ちゃん、そろそろご飯だよ』
『あいよ』
どうやら、純一を呼びに行ったらしい。純一が返事したのを確認してから、音姫はキッチンに戻ってきた。
そして、数分後
「焼けました。今持っていきますね」
焼けたのを確認した一夏は、鍋つかみを両手に填めてからグラタンの皿を掴んだ。鍋つかみ越しに熱さが伝わってくるが、それを我慢して机の上にある鍋敷きの上に置いた。一つ目は、音姫が作ったシーフード。2つ目が、一夏が作ったスタンダードだ。
『いただきます』
四人は手を合わせて言ってから、食べ始めた。純一は、スタンダードのを一口食べると
「ん……何時もと、少し違う?」
と首を傾げた。すると、音姫が
「あ、気付いた? ホワイトソースだけど、織斑くんが作ったの」
「ほう……君、料理上手なんだな……」
「あ、ありがとうございます」
純一が褒めると、一夏は少し恥ずかしそうに後頭部を掻いた。今まで数えきれない程作ってきたが、千冬や友人達以外に褒められたのは初めてで、少し照れ臭かった。
その後、順調に食事は進み
「うん、御馳走様……」
「お粗末さまです」
食べ終わり、使われた食器が全てシンクに運ばれた。
すると、一夏が
「食器は、俺が洗いますね」
と言って、スポンジと食器洗い用の洗剤を持った。すると、由夢が
「いえ、それは私がやりますよ」
「そうだよ。只でさえ、織斑くんには調理も手伝ってもらったんだから……それに、由夢ちゃんの家事能力がどの位上がったか確認したいし」
由夢に続いて音姫が、一夏を止めた。少し考えてから、一夏は
「分かりました……じゃあ」
と由夢にスポンジと洗剤を渡した。それを受け取ってから、由夢は洗い始めた。
それを音姫と一夏が見ていたが、慣れてないというのは本当らしい。音姫や一夏に比べて、若干動きがぎこちなく、無駄があった。
「由夢ちゃん、先にコップとかからの方が洗いやすいよ。油物を洗ってからだと、スポンジに付けておいた洗剤が弱まるし、汚れが他に移るから」
「あ、はい。分かりました」
一夏が指摘すると、由夢は素直に頷いた。
こうして、食事は終わった。