すいません
夕食を終えると、一夏はお風呂の時間になるまで部屋で過ごしていた。改めて見た義之の住んでた部屋は、一般的な内装になっている。
勉強机に、大きめの本棚。そして、ベッドだ。
本棚には置いていったのか、音楽に関する本が残されている。
「分かってたけど、義之もギターが出来るんだな」
一夏はその本を取り出し、パラパラと捲った。付箋が貼られている場所は、ギターの手入れに関するページだ。
義之も苦心していたらしく、ページの色んな部分に書き込みがある。
「……弾より、細かく書き込んでる」
一度友人の弾の本の書き込みを見たが、それよりも細かく書き込んでいた。恐らく、性格も起因しているだろう。その本を本棚に戻すと、もう一冊あることに気付いた。
そちらは本というより、冊子という感じで、風見学園の紹介冊子だった。興味を引かれた一夏は、それを手に取って読んでみた。
まず驚いたのは、学園長として紹介されている芳乃さくらの見た目だ。その見た目は、どう見ても10代の少女にしか見えない位に幼い。
だが、顔写真の下に書かれている役職の欄には、風見学園学園長及び、天稼研究所名誉技術顧問と書かれている。
「……ニュースだと、度々日本きっての科学者だって聞いたけど……」
さくらの名前は、一夏もニュースで何回も聞いていたから知っていたが、その顔は初めて見た為に驚いた。
驚きを覚えつつ、一夏は冊子を読み進めた。
風見学園
付属と本校があり、両方合わせて6年通える(途中編入・転校可)。
何より特徴的なのは、生徒の自主性を重視し、部活動の申請の自由。そして、一年通して多数あるイベントだった。一般的な、文化祭と体育大会、球技大会だけでなく、ハロウィーンパーティー、クリスマスパーティー、水泳大会とイベントが盛りだくさんだった。
それを読んだ一夏は
「こんなにイベントだらけなら、退屈はしないだろうな……」
と呟いた。
「そうだねぇ、退屈はしないよ。イベントもだけど、問題児も居たからね」
「うおっ! 音姫さん!?」
気付けば、間近にパジャマ姿の音姫が居た。
薄いピンク色のシンプルなパジャマだが、音姫によく似合っている。
「お風呂が空いた事を、教えに来たの。一回声を掛けたけど、返事が無かったから入ったの」
「すいません、気付かなくって」
どうやら、集中して読み過ぎていたらしい。音姫の声と、ドアを開けた音に気付かない程に集中していたようだ。
音姫は懐かしむ様子で風見学園の冊子を覗き込んでくるが、やはり風呂上がりだから良い匂いがしてくる。
(いかん……変な気を起こすなよ……信用して、泊めてもらってるんだ……)
一夏がそう思っていると、音姫が
「私ね一時期、風見学園の生徒会長だったんだ」
と説明してきた。だが、それを聞いて一夏は納得した。
音姫の授業を何回か受けたが、要点はキッチリと教えてくれるのだが、分かりやすく教えてくれて、質問にもはっきりと答えてくれる。
その姿は尊敬を覚えた程で、確かに生徒会長に向いているだろう。
「ここには書いてないけど、部活動も同好会を含めたら、数えきれない位あるんだよ。軽音楽部、野球部、卓球部、非公式新聞部」
「非公式新聞部?」
耳慣れない部活名に、一夏は思わずおうむ返しに言ってしまった。
(非公式の意味はなんだ……)
知らぬが華である。
「さてと、早くお風呂に入った方がいいよ? 由夢ちゃん、長風呂だからね」
「あ、はい。分かりました」
音姫に促されて、一夏はパジャマと下着類を持って部屋から出た。その後音姫は、一夏が置いた冊子を見てから
「……あの感じ……彼、破魔の力を宿してる……」
と呟いた。