翌日、朝倉家で起きた一夏は一瞬混乱してから
「そうだった……先生の家だった」
と呟きながら、体を起こした。時間は、朝の6時少し手前。夏だから日は既に登っており、今日も暑くなりそうだ。
なぜこんなに早く起きたのかは、最早習慣だった。
一夏は中学時代は千冬からの仕送りを無駄遣いしないようにと、知り合いの新聞配達のバイトをしていて、その時は3時前に起きて早朝の新聞配達。そして、学校が終わったらまた新聞配達をしていた。
IS学園に入ってからは、体力を付ける為にランニングをするようになっていて、6時前に起きるようになっていた。
「……ランニングしに行くか」
一夏はそう呟きながら、バッグの中からタオルを取り出し、動き易い服装に着替えてから部屋から出た。すると、早起きしていたらしい純一に出会い
「おはよう、随分早起きだね……ランニングかな?」
「あ、おはようございます。体力作りの為に走るようにしてまして……」
純一からの問い掛けに、一夏は答えた。すると、純一は
「だったら、さくら公園を走ってみなさい。外側のコースは、何時も色んな人が走るコースにしてるからね」
とオススメらしいコースを告げた。その場所は、先日行ったばかりなので分かる。
「ありがとうございます、純一さん。さくら公園ですね? 行ってみます」
一夏はそう言って、朝倉家から出た。
一夏は頭の中の地図を開き、さくら公園に向かった。早朝とはいえ、やはり夏。既に登っている太陽がジリジリと肌を焼き、暑さから汗が流れる。
そのまま、さくら公園に入って、軽く公園入り口にあった地図を確認し、公園外側のコースを走り始めた。
桜並木の下を走る為に桜の花びらが舞っている。
夏だというのに桜の花びらが舞っているのは違和感があるが、一夏は何故か気に入っていた。
時々、反対側から走ってきた人とすれ違い、軽く手を挙げて挨拶する。中には犬の散歩もしている人も混じっていて、中々に面白い。
IS学園ではグラウンドを走る為に変化などなく、たまに朝練で走っている陸上部の少女達が居る位だ。
(確かに……走るには良いコースだ……)
時々ある蛇行の変化も、刺激になる。そして一夏は、最初入ってきた入り口に差し掛かり
(戻るか)
と考えて、そちらに向かった。すると、すれ違いそうになったのは、まゆきだった。
「お、織斑くんじゃん。君もランニング?」
「はい。ISの操縦って、結構体力勝負なんで……高坂さんは……」
「まあ、日課の訓練だね。陸上選手だし。1日もサボれないのよ」
一夏からの問い掛けに、まゆきは快活そうな笑みを浮かべた。一夏も体育会系な為に、まゆきの考えは分かる。
ISの操縦もだが、日々の家事なんかも繰り返し行って、体に覚えさせてきた。だから、1日休んだりすると、体の感覚にズレが生じてしまうのだ。
「んじゃ、アタシは走ってくるね。頑張ってねー」
「はい、高坂さんも!」
まゆきを見送ってから、一夏は朝倉家目指して走るのを再開した。時間は7時に差し掛かってきているからか、徐々にお店が開店の準備を始めている。
「お、和菓子屋さんがある……後で寄ってみようかな」
花より団子を見つけた一夏は、お土産を買う候補に花より団子を入れた。そして、朝倉家に到着し
「ただいま戻りましたー」
「あ、外に行ってたんだ。おかえり。今起こしに二階に行ったら、居なかったから気になってたんだ。ランニング?」
ちょうど二階から降りてきたらしい音姫が、一夏を出迎えた。
「おはようございます、音姫さん。はい、IS操縦の為の体力作りにランニングを始めたんです」
「そっか。頑張ってるね! ほら、シャワー浴びて汗を流してきたら? その間に、朝食作っておくから」
「すいません、ありがとうございます」
音姫に促された一夏は、シャワーを浴びる為に着替えを取りに部屋に戻った。そして、シャワーを浴び終わると居間に向かったのだが
「んー……」
酷く眠そうな由夢の姿があった。
「ほら、由夢ちゃん! ちゃんと起きなさい!」
「音姫さん……えっと……」
「……はっ! おはようございます!」
一夏の声が聞こえたからか、それまで眠そうだった由夢が一瞬にして目覚めた。そんな由夢に、音姫は嘆息しながら
「今のが、本当の由夢ちゃんなの……お爺ちゃんの血を強く引いててね……かったるいが口癖なの」
音姫が説明すると、由夢は必死に顔を逸らしている。それが、如実に現実を物語っている。
「っと、朝食持っていってね」
「あ、はい。分かりました」
音姫の言葉に従って、一夏はスクランブルエッグが乗ったお皿を持って机に向かった。綺麗に出来ていて、音姫の腕を物語っている。
「お、出来たか」
「あ、お爺ちゃん。おはよう」
「おはよう、お爺ちゃん」
朝食が机に並んだタイミングで、純一が居間に現れた。そして、朝食が終わると一夏は観光巡りを始めた。