「義之の知り合い……?」
「うむ。同志桜内の言葉を借りるなら、悪友という奴だな」
一夏が困惑していると、杉並がそう補足説明した。そして杉並は、懐から手帳を取り出して
「織斑一夏、姉はかの有名な織斑千冬。ほほう、中学生時代は皆勤賞か。凄いな、君は。それに、倉持技研から引き渡されたISは白式。現在はセカンドシフトして、白式・雪崩。短期間でセカンドシフトするとは、中々ISとの親和性は高いようだな」
つらつらと自分の情報を語り始め、一部は秘匿されている筈の情報もあり、一夏は警戒した。すると杉並は
「おっと、申し訳ない。情報収集が特技でね。非公式新聞部には、集められない情報はないと思ってもらいたい」
最早諜報機関並とも言える情報収集能力に、一夏は困惑した。
(非公式新聞部……学校の部活の一つの筈だよな……というか、非公式の意味は?)
一夏はそう思ったが、聞かないでおいた。
そして一夏は
「それで、俺に話し掛けた理由は……」
「おっと、そうだった……これを渡しておく」
一夏からの問い掛けに対して、杉並は手帳を開いてサラサラと何かを書くと、破いて一夏に差し出した。それを受け取った一夏は、そのメモ帳を見た。書いてあるのは、電話番号とメールアドレスだった。
「これは……」
「俺の電話番号とメールアドレスだ。欲しい情報があったら、言ってくれ。すぐに収集して、教えよう」
使うか分からないが、そのメモ帳をポシェットに仕舞い、杉並の居た位置に視線を向けたが、いつの間にか居なくなっていた。
「……謎だ……」
一夏はそう言って、その場から離れたのだが、一ヶ所が僅かに浮いているのに気付かなかった。そして、校舎に入って回っていると
「あら、貴方が由夢先輩から聞いた方ですね?」
と声を掛けられて、見てみたら金髪の美少女が居た。
「えっと、君は……」
「申し遅れました。私は、風見学園生徒会の風紀委員会所属のエリカ・ムラサキです」
「あ、えっと、織斑一夏です。初めまして」
金髪の美少女、エリカが名乗ると、一夏も軽く自己紹介した。するとエリカが
「学園長が、貴方に会いたいと言ってましたので、着いてきてください」
「え、あの芳乃さくらさんが?」
まさか、さくらから呼ばれるとは思っていなかった一夏は驚いた。そして、エリカの後ろに着いて、少し歩くと
「こちらです」
学園長室、と書かれた看板と高級そうな黒いドアの前に案内された。エリカはノックすると
「学園長。織斑さんをお連れしました」
『お、入ってもらってー!』
中から元気な声が聞こえて、エリカは一夏を手招きした。一夏がドアの前に立つと、エリカは会釈して離れた。それを見送ってから、一夏は
「し、失礼します」
とドアをゆっくりと開けた。そして、固まった。
何せ、純和風な内装だったのだ。畳に平机、座布団と一夏の予想外の内装だった。
「いらっしゃい、織斑一夏くん! ボクが、芳乃さくらだよ! よろしくねー♪」
しかも、そこに居るのは金髪碧眼の少女にしか見えない人物。芳乃さくら。知っていなかったら、迷子になった子供としか思えないだろう。
「は、初めまして。織斑一夏です。芳乃さくらさん」
「そんなに硬くならなくてもいいよ! 気楽に気楽に♪」
さくらはそう言って、一夏を手招きした。一夏は一段高くなっている座敷に上がる前に靴を脱ぎ、胡座をかいた。すると、さくらが湯飲みを一夏の前に置いた。
「はい、お茶とお菓子だよ! 好きに食べていいからね♪」
「ありがとうございます」
まず湯飲みを持った一夏は、一口飲んだ。すると、口の中に緑茶の風味だけでなく、桜の香りが広がった。
「桜の香りだ……」
「お、気付いてくれた? それはね、お茶の名産地の静岡県の知り合いの業者と初音島のコラボ商品だよ!」
「……いいですね、これ」
一夏が本心を言うと、さくらは嬉しそうに
「気に入ってくれたなら、良かった! お茶葉は初音島ならスーパーでも売ってるし、花より団子って和菓子屋さんでも買えるよ!」
とお茶の袋を見せてくれた。一夏は、その袋を写真に撮っておき
「あの……それで、俺を呼んだ理由は何でしょうか?」
とさくらに問い掛けた。するとさくらは、お茶を飲んでから
「……君、魔法を覚える気はあるかな?」
と問い掛けた。
これが、一夏の運命の別れ道になる。