インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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朝倉家と芳野家

風見学園から出た一夏は、朝倉家に向かった。

まだ初音島に来て二日目だと言うのに、一夏は夏に桜が咲いている光景に慣れてきていた。

 

(やっぱり、日本人だからか……?)

 

本来春の極限られた時期にしか咲かない桜だが、日本人にとっては大事な花になり、切っても切れない存在になる。

そうなると、桜を受け入れるのも当たり前なのかもしれない。

そう考えている間に、スーパーの前に来た。その時、中から音姫と由夢が出てきた。

二人の手には、それぞれ買い物袋がある事から買い物帰りらしい。二人も一夏に気付いたようで、音姫が

 

「織斑くん!」

 

と手を振りながら、一夏を呼んだ。

一夏も歩み寄り

 

「買い物帰りですか? 持ちますよ」

 

と音姫と由夢が持っていた買い物袋を、それぞれ両手に持った。

 

「あ、ありがとう。織斑くん」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ。一宿一飯の恩ってやつですよ」

 

感謝の言葉を口にした二人にそう返してから、一夏は歩き始め、二人も両隣に並んだ。

掛け値無しの美少女達が、両隣に居る。正に、両手に華の状況だが、一夏は気付いていない。

 

「今日のご飯は……んん、豚しゃぶかな?」

 

「惜しい。冷製豚しゃぶ素麺だよ」

 

「お歳暮で素麺が大量に来たので、少しでも消費したいんです」

 

買い物袋の中を見た一夏が予想するが、音姫が微笑みながら訂正する。どうやら、大量のお歳暮の素麺があるようだ。

恐らく、何処のご家庭でも悩みの種ではなかろうか。

 

「なるほど。俺も毎年悩んでます」

 

「やっぱりそうだよね」

 

「たまには、別の物が欲しくなります」

 

朝倉家でも、やはり悩みの種のようだ。

さもありなん、だろう。

そうこうしている内に、朝倉家の前に到着し

 

「お爺ちゃん、ただいまー!」

 

『おーう』

 

どうやら、純一は比較的近くに居たらしい。声が聞こえた。

音姫に僅かに遅れて、由夢と一夏も入った。

そして、台所に立つと

 

「それじゃあ、俺が豚肉の調理を始めますね」

 

「うん、お願い。由夢ちゃん! お風呂掃除してきて!」

 

「はーい」

 

音姫からの指示を聞いて、由夢は風呂掃除の為に居間から出ていった。

そして、音姫と一夏は夕食の準備を始めた。

その頃、隣の芳野家では

 

「さて……束ちゃん……何か、言いたい事はあるかな?」

 

いつの間にか帰宅したさくらが、正座した束の前で立っていた。見た目的には逆なのだが、束はさくらに対して、頭が上がらないのである。

 

「えっと、その……箒ちゃんに頼られて、つい嬉しくなっちゃって……」

 

さくらからの問い掛けに、束は両手の人差し指をチョイチョイと当てながら答えた。

束と箒の姉妹関係はかなり冷えきっており、箒は束の事で話し掛けられたら不機嫌になる程である。

しかし、一夏に専用機が与えられた日に箒から束に電話があったのだ。その内容は、専用機が欲しいというものだった。

そのお願いに舞い上がった束は、ハイテンションになって箒の専用機。紅椿の開発をして、渡したのである。

 

「だからってさ、一足飛びに第四世代機を開発して渡さないの! おかげで、今の彼女。相当面倒な立場になってるからね? ボクが知る限り、箒ちゃんを国の所属にするって息巻いてる女性権利主義者が何人も居るんだよ?」

 

「はい、ごめんなさい……」

 

流石に恩師とも言えるさくらからの説教に、束は頭を下げた。

落ち着いて考えてみれば、確かにやり過ぎたと思えた。何せ、ISコアの同調性から本体の動かし易さと全てに至って、箒専用に調整(・・・・・・)したのだから。

それにより、箒はまだ短時間しか動かしていないのにワン・オフ・アビリティを起動させ、あまつさえIS適性率がSに到達したのだから。

 

「雪ちゃんが対処してくれなかったら、過激派の人達の言いなりになってたかもしれないんだからね? もう少しは考えるように」

 

「はい、わかりました……」

 

束は今回は自分に非があると自覚しているからか、素直に受け入れた。するとさくらが

 

「まあ、頼られて嬉しいのは分かるよ……ボクだって、義之くんや麻耶ちゃん。音姫ちゃんや由夢ちゃんに頼られたら嬉しいからね。ただし、もう少し冷静になること。それと、徹夜だけはしないように」

 

と忠告しながら、束の頭を撫でた。

基本的に優しいさくらなので、一方的に怒るだけにはしないようにしているのだ。

 

「それで確認したいんだけど、束ちゃん」

 

「はい、なんでしょうか」

 

「あの展開装甲……織斑くんの機体にも採用してるの?」

 

さくらからの問い掛けに、束は少し間を置いてから

 

「……最初は、雪片弐型にだけ試験的に導入したんです……けどセカンドシフトした時、コアの判断で全身に採用されてました」

 

と答えた。

 

「……やっぱり、進化は予想出来ないか……」

 

「はい……コアの判断だから、どうなるか分かりません……本人の癖や動かし方……戦闘での勝敗等で変わります……」

 

ISの進化は、パイロットの癖をコアが読み取り、更に戦闘での勝敗等からコアが最適と判断した姿になる為、例え最初は同じ機体だろうが、機動性が大幅に上がったり、新しい特殊装備が増えたりするのだ。

故に、ISの進化は束ですら予想出来ないのである。

 

「まあ、桜花も進化して機動性とパススロットが大幅に増えて、腕部に固定装備が増えてたけど……」

 

銀の福音戦で一度撃墜され、セカンドシフトした桜花だが、機動性は約三割増し、パススロットは二割増し。そして両腕に固定装備が追加され、非固定ユニットにも装備が追加されていたのを確認した。

今現在、天枷研究所ではセカンドシフトした桜花の予備部品の生産を行っている。

 

「……亡国機業……闇魔法使い達の巣窟……」

 

「せめて、いっくん達だけでも対処出来るようになってほしいですけど……」

 

さくらと束は、心配そうな表情を浮かべながら空を見上げた。もう、崩壊の序曲は近づきつつあるのだ。

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