インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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朝倉家と芳野家 2

朝倉家

音姫は自室の窓を開けて、夜空を見ていた。

僅かに雲はあるが全体的によく晴れており、月も綺麗に見えている。とはいえ、音姫は星空を見ていた訳ではなく、ある物を待っていた。

どれ程待ったのか、音姫はそれを見つけた。こちらに飛んでくる、一羽の鳥。

その鳥は開いていた窓から中に入り、音姫の机の上に留まった。それを見た音姫は静かに窓を閉めて、その鳥に歩み寄ると鳥の顔の前に手を翳した。

その数秒後、鳥の姿は消えて、一通の封筒になった。封蝋が施された、一通の封筒。

音姫は封筒を開けると、中から手紙を取り出して読み始めた。

長い手紙だったが、要約すると、今世界各地で闇の魔法使い達が活発になってきている。

そして、日本にある組織の要注意魔法使い達が入った、という連絡と二枚の写真だった。

それを見た音姫は、手紙を机の引き出しにしまい

 

「……狙いは、織斑くん……だよね……」

 

と呟いた。音姫にもさくらから話が行っており、一夏が破魔の力を有している事を知っている。

破魔の力は、あらゆる魔法に対する切り札に成りうる鬼札(ジョーカー)だ。

あらゆる組織からしたら、喉から手が出る程欲しいのは間違いない。

 

「……一応先生なんだから、守らないとね」

 

音姫はそう言うと、一冊の本を開いて勉強を始めたのだった。

同時刻、芳野家。

そこでは、さくらが電話をしていた。

 

「あ、久しぶり。十蔵くん。今大丈夫かな?」

 

『おや、久しぶりです』

 

どうやら、さくらが掛けた相手はIS学園の学園長の轡木十蔵のようだ。

 

『それで、どのような要件で?』

 

「義之くんから聞いたけど、IS学園。もう退学者が出たんだって?」

 

『ええ、まあ……ある意味、何時もの事ですがね……やはり、IS関連の事件で怖くなってしまったようです』

 

さくらの問い掛けに、十蔵はため息混じりに告げた。

トーナメント大会の無人機襲撃事件。そして、臨海学校での軍用IS暴走事件。

この二件の事件により、既に退学者は10名以上出ている。

 

「それで……亡国機業のスパイは何人入ってきてるのかな?」

 

『ストレートですね……まあ、最低でも二人は居るかと……』

 

さくらからの問い掛けに、十蔵は頭が痛そうに答えた。実際問題、頭の痛いネタなのは間違いないだろう。

 

「ならさ……日本から腕利きの魔法使い……入れようか?」

 

『……日本から? 日本は他国に比べて、IS学園に入っている魔法使いは少ないですが……』

 

「まあ、日本は自衛隊と同じように魔法使いも防衛に専念してるからねぇ……魔法の技術とか、秘匿してるのさ」

 

日本は昔から、魔法技術を秘匿してきており、一部を除いてイギリスの学校に行ったのは名が知られた者のみになっている。

 

「もう、政府と本人達とは交渉済み。後は、十蔵くんの判断次第だよ」

 

『……その方々の力量は?』

 

「一人目は、国際ランク10位……五条院飛鳥ちゃんだよ」

 

『あの五条院の……』

 

さくらが告げた名前を聞いて、十蔵は息を飲んだ。一夏に破魔の使い方を教えた飛鳥だが、実は国際ランクという戦闘魔法使いのランキングで、トップランクの一人だったのだ。

これまで、幾つかの国際魔法テロを未然に防いだ実績もある実力者だ。

 

「実は、織斑くんに破魔が使える事が分かってね……だったら、飛鳥ちゃんが居た方が色々と都合が良いんだ」

 

『彼が破魔の力を……それで、二人目は?』

 

「もう一人は、江戸川家のご令嬢だよ」

 

『あの人形使いの……』

 

探偵としても知られる人形使い。江戸川家。

遥か昔、平安時代にその基礎を構築し、戦国時代には一人で軍隊に匹敵するとすら言われた破軍と呼ばれた強力な魔法使いの一族である。

過去には一万体の人形を操り、侵略を許さなかったという話すらある。

 

「飛鳥ちゃんはIS適性がAプラス……江戸川家のご令嬢は、整備士希望だよ。まあ、人形の整備士が今の表の仕事だからね」

 

『……AプラスのIS操縦者候補に、整備士希望ですか……まあ、ねじ込めますね……諸事情あり、入学が遅れていた、とすれば問題ないかと』

 

実際、家の事情等でIS学園にまだ入学出来てない少女達は居るのだ。その内の一人とすれば、何ら問題は無い。

 

「お……じゃあ、良いんだね?」

 

『ええ……渡りに船です……少し前に、新しいIS教師も引き入れましたし……対闇の魔法使いに防備を強化しようと思っていましたからね……分かりました。受け入れましょう』

 

「ありがとう! 欲しい技術が有ったら、言ってね? 格安で提供するから」

 

『タダ、と言わない辺り、きっちりしてますね』

 

「知ってる、十蔵くん? タダほど、怖いモノは無いんだよ?」

 

その会話を最後に、さくらは電話を切った。

そして、夜空を見上げたのだった。

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