「さて、これで見せられる区画は全部だな」
「見学は、どうだったかしら?」
見学の案内を終えて、義之と麻耶は一夏に問い掛けた。
「いや、凄かったよ……今のロボットって、あんな風になってるんだな」
一夏は、見学した際に見たμや新型を思い出して興奮しているようだ。今はISばかりが注目されているが、確かに技術は進んでいるのだ。
「実はな、IS学園から大口の発注があったらしいんだよ」
「IS学園から!?」
義之の言葉に、一夏は驚いていた。
IS学園には、様々な分野での上位の人材が揃い、料理や掃除、設備の維持に務めている。
それなのに、μの大口発注というのは予想外だったのだ。
「ええ……IS学園で立て続けにトラブルが起きたから……怖くなって辞めたんでしょうね……」
「あぁ……」
麻耶の言葉に、一夏は同意するように頷いた。
今年に入り、イベントの度にトラブルが起きている。IS学園の職員とはいえ、結局は一般人な為に恐怖心で辞めるのは仕方ないだろう。
「既に第一陣は送ったから、一夏がIS学園に戻った時には既に居る筈だ」
「そうなのか……」
第一陣という事は、他に第二第三も有るという証拠で、総数が気になる一夏だった。
すると、受付に到着し
「はーい。ここで、簡易IDカードを受け取るからねー」
と水越女史が、一夏に声を掛けた。
それを聞いた一夏は、首に掛けていたネームプレートホルダーを外して、水越女史に返却した。
「はーい、確かに」
「今日はありがとうございました」
「また、IS学園でな」
「夏休みの宿題、忘れないようにね」
義之と麻耶に見送られて、一夏は天枷研究所から出た。
これから一度朝倉家に戻り、玄関付近に置いといた荷物を回収し、フェリー埠頭に向かう途中で、初音島土産を買うつもりである。
「さて……朝倉家に行くか」
二泊した朝倉家は居心地が良かった。
一夏が初めて経験した、有る意味家族の団欒。千冬は中々実家に帰ってこなかったので、一夏はかなりの回数は五反田食堂で食事したのだが、やはりお金を払っていたので外食という感覚だった。
「……暖かいっていうのかな、あの感覚が……」
千冬よりかは若いが、年上の音姫に年下の由夢。そして音姫と由夢の祖父の純一。
「……また、来てみたいな」
そう呟きながら、一夏は朝倉家に向かった。
一方その頃、IS学園。
その職員室にて、千冬は山田先生と共にある書類を見て頭を抱えていた。
「ち……女権共め……」
「まさか、こんな形で……」
二人が見ている書類には、要約すればこう書かれてある。
《貴重なセカンドシフトISを、ISに不慣れな男に使わせる訳にはいかない。今すぐ、二機のセカンドシフトISを自衛隊のIS部隊に引き渡せ》
という、横暴にも程がある内容だった。
勿論だが、千冬達は従う気は毛頭無い。そもそも、セカンドシフト機を無理やり操縦者から引き離しても、機能を十全に活かせる訳が無い。
「山田君……これを、至急学園長に」
「はい、分かりました」
千冬の指示に従い、山田先生はその書類を持って職員室から出た。それを見送り、千冬は
「……最近、女権共が増長し過ぎだな……」
と低い声音で呟いた。