一夏の特別特訓チームが編成され、初日の特訓が終わった。
「つ、疲れた……」
「お疲れ様です、織斑くん」
まさに疲労困憊という様子の一夏に、ヴィシュヌが飲み物を手渡した。
そんな横では、江戸川杏花が白式の整備をしている。
「ふむ……このエネルギー回路は、別のに交換した方が良いね……そうすれば、エネルギーの減りも改善出来そう」
杏花はそう言いながら、飛鳥が持ってきた部品と交換していく。その手際はかなり良い。
すると、生徒会メンバーが現れて
「今日はお疲れ様。どうだったかしら?」
「疲れましたけど……何か掴めたような気がします」
一夏はそう言いながら、手を握った。
どうやら、何らかの手がかりは掴めたようだ。
「そう、それは良かったわ」
一夏の言葉に、楯無が満足そうに頷いた。
そして
「明日は、ISの整備もあるから休みね。ただし、一人で無理な特訓はしないように」
と一夏に忠告し、整備室から出た。
整備室から出た楯無は、虚が出した端末を見て
「……やっぱり、あり得ないわね……これ」
と呟いた。最後の模擬戦。楯無はわりと本気で戦っていて、蛇腹剣。ラスティーネイルを一本破壊された。それだけでなく、アクアクリスタルも破壊された。
ラスティーネイルは連結部分が伸びた瞬間を斬られ、アクアクリスタルは瞬間加速ですれ違い様に斬られた。
どちらも、ほんの一瞬の早業だった。
その時
「お嬢様……つい先ほど、ロシア政府から連絡がありました」
「ロシアから?」
虚から予想外な報告を受けて、楯無は片眉を上げた。
ロシア政府から最後に連絡があったのは、一夏と義之がIS学園に来た時だった。
義之に関しては、友好的に接せよ。
一夏は、どんな形でも構わないから接点を作れ。
という内容だった。
義之に関しては、バックにさくらという強力な人物が居るから、機嫌を損ねるような事をするな、という意味だと楯無は考えていた。
一夏に関しては、ロシア政府は恐らくはノーマークだったから、少しでも友好関係になれ、ということだろう。
それから数ヶ月は連絡が無かったのだが、今さら何の要件が、と楯無は思いながら端末で確認し
「……は?」
と声を漏らした。
「お嬢様? どうなさいました?」
「……バカだとは思ってたけど、とうとうなりふり構わなくなってきたわね……」
虚からの問い掛けに呟きながら、楯無は端末を虚に差し出した。最初は躊躇っていた虚だが、連絡内容を見て
「そんな……! これは、幾らなんでも……!」
と狼狽えた。
その内容は
《翌日未明、特殊部隊が織斑一夏。並びに桜内義之の誘拐。または暗殺を行い、ISを奪取する。補助せよ》
という、あり得ない内容だった。
確かに、楯無はロシアの代表であり、ロシア政府からの指令ならば従う義務がある。
だが同時に、楯無は日本を裏から守る公儀隠密の家の人間である。
本来の帰属は、日本にある。
「……流石に、国民に危害を加えるという指示内容には従えないわね……」
「お嬢様……ということは」
「……簪ちゃんにも手伝ってもらって……ロシア軍を殲滅します……」
楯無は、ロシアに反抗することを決めた。