インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

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窮地と救援

裏庭に向かった簪が見たのは、ロシア軍兵士に連れていかれそうになっている楯無の姿だった。

何があったのかと言うと、楯無はロシア軍のモスクワの深い霧一号機と交戦。終始優勢に戦っていたが、ある時に突如ミステリアス・レイディが機能停止し、楯無から解除された。

その時、最新の光学迷彩を纏っていた一人の兵士が、楯無に気付かれないように近付き、対IS用試作装置、ISリムーバーをミステリアス・レイディに取り付けたのだ。

このISリムーバーは、取り付けたISの機能を停止させて、ISパイロットから強制的に引き剥がすという機能を有しており、恐らくロシア軍は、それを用いて一夏や義之からISを奪う気だったのだろう。

そこまでは知らない簪だったが、楯無を連れていこうとしているロシア軍兵士達を見て

 

「お姉ちゃんを離せぇ!!」

 

と怒声を張り上げながら、打鉄弐式を展開した。

打鉄弐式

現在日本で主力ISとして配備されている第二世代IS、打鉄の後継機として開発されている第三世代ISの試作ISである。

本来はまだ開発期間だったのだが、一夏の白式の調整に人手が割かれた為に、開発期間が無期限延長になり、それに耐えきれなくなったのと、姉に追い付きたい一心で、簪は強引に受領し、自分で開発を続けていた。

それを、天枷研究所の協力もあり、完成に漕ぎ着けたのだ。

武装は、腰部に連装式荷電粒子砲の春雷を二門。多連装式ミサイルの雪崩。そして、高周波薙刀の夢現を装備しており、打鉄が防御型だったのに対して高機動型となっている。

 

「はああああぁ!」

 

簪は夢現を出現させ、モスクワの深い霧一号機に斬りかかった。それを、相手は出現させた妙に刺々しい長剣で受け止め

 

「ふん……祖国を裏切った女の妹か……そうだな、貴様のISも頂く!」

 

と言って、左手に50口径機関砲のRPKー58を出現させた。次の瞬間、長剣の刺々が高速回転を始めた。

 

「噂に聞いてた、チェーンソーソード!?」

 

「これで、頭をかち割ってやる!」

 

相手はそう言うと、大上段からチェーンソーソード。正式名モーターソードを振り下ろした。

簪はそれを、夢現の長柄で受け止めたのだが

 

(つっ!? 夢現の柄に、食い込んだ!? このままじゃ、斬られる!)

 

簪の予想を超えて、モーターソードは恐ろしいまでの切れ味を有していたようだ。絶対防御も過信出来ない為、もしかしたら直接パイロットを傷付ける事も可能かもしれない。簪はそう考えて、春嵐を起動させて至近距離で撃とうとした。だが

 

「いいのかな? 私にばかり時間を掛けて」

 

「つっ!?」

 

その言葉に、簪は気付いた。

先ほど楯無を連れて離れた軍人達が、楯無に銃口を向けている事に。

 

「やめてぇぇぇぇぇ!」

 

「撃てぇ!」

 

簪と相手の声が重なり、軍人達は引き金を引こうとした。正にその時

 

「させるかよぉぉ!!」

 

という声が聞こえて、白が軍人達を凪払った。

 

「え」

 

「まさか!?」

 

そこに居たのは、ロシア軍の標的の一人。一夏だった。

実は一夏は、虚が料理に混入させた睡眠薬で眠らされ、安全な地下区画の一室に入れられていたのだ。

楯無達の予想では、最低でも翌朝まで起きない筈であったのだ。

しかし、何故か起きてこの場に現れた。

 

「楯無さん! 大丈夫ですか!?」

 

一夏は左手に新しく現れた兵装。エネルギーシールドの六花により他の軍人が撃つ銃弾を防ぎながら、楯無に声を掛けた。

 

「なん……とかね……ぐっ……!」

 

楯無は何とか返答するが、脇腹から激しく出血している。早く治療する必要がある。そう考えた一夏は

 

「お前ら、邪魔だ!」

 

と怒号を上げながら、雪片弐型・雪華を振るった。

すると青白いエネルギー刃が飛び、軍人達を次々と打ち据えた。

今のは、進化した雪片弐型・雪華の遠距離攻撃方法。飛刃だ。

エネルギー刃を飛ばし、相手を攻撃するというシンプルな技である。

 

「後は、お前だ!」

 

一夏はモスクワの深い霧一号機を睨み付け、一歩踏み出そうとした。だが

 

「気をつけ、なさい……光学迷彩を着た奴が、居るわ……!」

 

という楯無の言葉を聞いて、直ぐに視界フィルターの熱源探知に切り替えて、ある場所に

 

「そこだ!」

 

と先ほどと同じように、飛刃を飛ばして、光学迷彩を纏っていた一人を吹き飛ばした。

 

「おのれ! よくも!!」

 

モスクワの深い霧一号機は一度簪を蹴飛ばし、一夏にモーターソードを振りかぶりながら突撃した。

だが

 

「遅ぇ!!」

 

胴体に雪片弐型・雪華の直撃を受けて、モスクワの深い霧一号機は機能停止した。

 

「り、個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)!?」

 

少し離れて見ていたから、簪は一夏が使った高等技術に驚いた。

個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)

これは、全身にあるスラスターにエネルギーを貯めた後、個別に連続で使用するという、モンド・グロッソに出場する選手レベルが使う高等技術だ。

一夏の新しい白式・白麗(はくれい)は背部に二対四基のアンロックユニットのスラスターと両足下腿部にスラスターがある為に非常に高い機動性を得ている。

今回一夏は、その内の背部の二機にエネルギーを貯めて使って加速したのだ。

 

「簪も、大丈夫か?」

 

「私は平気……それより、お姉ちゃん!」

 

立ち上がった簪は、直ぐに打鉄弐式を解除し、楯無に駆け寄って傷口を確認してから、治療を始めた。

その間に一夏は、光学迷彩を纏っていた軍人から楯無のミステリアス・レイディを取り返し

 

「こいつら……ロシア軍か……」

 

と気付いたようだった。そして、少し考えて

 

「……もしかして、俺や義之を狙ったのか……」

 

と自分が狙われた事に気付いた。

 

「すいません、楯無さん……俺のせいで……」

 

「……気にしないで……トチ狂ったバカのせいだから……」

 

「お姉ちゃん……」

 

簪の様子から、どうやら主要な臓器は外れているのが分かり、僅かだが安堵する一夏。

そして、大きなバッグを抱えて走ってくる虚や本音を見つけてから、夜空を見上げて

 

「……義之の方は、大丈夫なのか……?」

 

と呟いた。

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