時は僅かに戻り、初音島。芳乃家。
仕事の疲れから義之と麻耶、沢井家は寝付いており、芳乃家の縁側にはさくらとアイシアの姿があった。
二人して夜空を見上げていたのだが、さくらがスッと目を細めたタイミングで
「先生」
「やっぱり、ウチ?」
束が何処からか姿を現すと、さくらは主語を抜いて問い掛けた。
「はい。IS一機を含め、二個分隊ってところです」
「……ISは任せていい? 他はボク達で終わらせるから」
「分かりました」
さくらの指示を受けた束は姿を消し、さくらが立ち上がると、アイシアが
「狙いは、義之くんのISか……」
「だろうね。美夏ちゃんはついでだろうけど……ボクを舐めてるとしか言えないね」
さくらはそう言って、手を夜空に掲げた。
一方その頃、初音島の遥か上空。一機のロシア軍機が水のベールに包まれた状態で飛行していた。
中にはモスクワの深い霧の三号機に搭乗したロシアの代表とロシア軍諜報省特殊破壊工作班が居た。
『そろそろ予定降下ポイントだ。降下用意』
機体後部ハッチの近くに居た軍人はそう言って、後部ハッチを開放した。その直後、激しく機体が揺れた。
『なんだ! 何が起きた!?』
『不明! 突如機体の制御が効かなくなった!!』
隊長らしき男からの問い掛けに、操縦士がパニックになりかけたように声を張り上げて答えた。
そうこうしている間に、機体がミシミシと嫌な音をたて始めた。
その音を聞いたからか、隊長が
『お前は行け! 行って、ターゲットを誘拐するか殺してISを奪ってこい!』
と三号機に指示を出した。
それを聞いて、三号機は後部ハッチから夜空に飛び立った。その直後、飛行機は空から降り注いだ無数の光により消し飛ばされた。
『まさか、日本の最新鋭ISか!?』
三号機のパイロットは日本の試作第三世代機の一つが、光を操るという情報は聞いていたので、慌てて周囲を見回してISが居ないか探した。
しかし、このパイロットは知らなかった。
日本の試作第三世代機、飛燕が操れる光は
月夜の今は、光は操れない。
周囲にISが見つからず、パイロットは隠れているのかと、探しながらも芳乃家に向かおうとした。
だが不意に、ISが機能を停止した。
『な、なに!? 何が起きたの!?』
パイロットはパニックに陥り、操縦レバーやペダルを乱暴に動かした。だが、ISはウンともスンとも言わない。
如何にあらゆる現代兵器を凌駕するISだろうが、機能停止してしまったら、ただの重い鎧に過ぎない。
グングンと迫る海面に、パイロットは涙を浮かべながら
『嫌……! なんで!? 動いてよ!?』
と声を張り上げるが、ISは動かない。
こうなったら、いっそ気絶した方が楽なのに、訓練により慣らした体が理由で、簡単には気絶出来ない。
そうして、海面が後10mに迫り
『嫌アアアアァァァァァァァァ!?』
涙を流し、喉が張り裂けんばかりに叫びながら三号機とパイロットは海面に叩き付けられた。
場所は戻って、芳乃家。
「ふう……久しぶりに成功したね……星座魔法……
アイシアの呟きに、さくらは頷き
「そうだね……最低二人居ないと使えない魔法……空間把握が難しいからね」
と答えた。
星座魔法、
本来この魔法は、88星座を魔法陣として、一人が相手の位置を把握し、もう一人が出力調整。そして三人目が照準し放つという役割分担して放つ魔法で、魔法の中でも儀式魔法と呼ばれる分類になる。
並の魔法使いだったら、三人は必要な魔法だが、さくらとアイシアはそれを二人で行って放った。
そこから、二人が並外れた魔法使いだという事が伺える。
すると、束が現れて
「IS、確保しました。相手はロシアで間違いありません」
と答えた。
「そっか……そっちの対応は任せるね……流石に疲れたから」
「はい、後始末はお任せを……それと、ロシアが使ってるだろう先生の技術はどうします?」
束からの問い掛けに、さくらはしばらく唸り
「うん……自分のお尻位、自分で拭いてもらおうかな」
と告げた。
翌日、突如ロシアの有する全ISが機能を停止し、束がある声明文を発表した。
以後、ロシアは二度とISを使えないと思え。
君達は、私を怒らせたのだから。
と。
更には、ロシア国内のあらゆる芳乃理論を使った機械も機能を停止した。
ISに続いて芳乃理論まで使えなくなったロシアは大混乱に陥り、政権は崩壊。そこから連鎖的に国が崩壊を始め、ロシアという国が国際連盟から姿を消す事になる。