インフィニット・ストラトス・桜花舞う   作:京勇樹

9 / 86
模擬戦開始

なんやかんやあって、一週間が経過した。

あれからだが、まずセシリアは以前の発言を謝罪した。

そして義之は、楯無達と訓練を繰り返した。

だが、問題が一つあった。それは、専用機がなかなか来ないのだ。

そして、模擬戦の日

 

「なあ、箒よ……」

 

「なんだ」

 

「俺は確か、ISに関する練習を頼んだ筈だよな……なのにこの一週間、剣道しかしてなかったんだが」

 

一夏のその言葉に、箒はまるで錆びたブリキ人形みたいに視線を明後日の方向に向けた。

 

「おい、こっちを見ろ」

 

一夏は突っ込むが、箒はカタカタと体を震わせるのみである。それを見た義之が

 

「素直に、よく分からないって白状しろ」

 

と言った。そこに

 

「織斑君! 桜内君! お二人の専用機が来ました!」

 

と山田先生が現れた。

 

「おお! ようやくですか!!」

 

「ギリギリパターンだったか……」

 

山田先生の言葉を聞き、一夏はテンションが上がり、義之は後頭部を掻いた。

そして二人は、山田先生の案内でピット前のハンガーに入った。

そして先ず目に入ったのは、白一色の機体だった。

 

「まず、こちらが織斑君のISの白式(びゃくしき)です!」

 

「白式……」

 

山田先生が告げた名前を聞いて、一夏は白式に触れた。

すると、一夏の頭の中に白式の情報が一気に流れ込んできた。

 

「……なるほど、これが……」

 

と一夏が呟いていると、義之が

 

「さて……なんで居るんだ……天枷」

 

とある一ヶ所を見た。

すると、壁に背中を預けた美夏が居た。

 

「誰だ、貴様は……関係者以外は、立ち入り禁止だ」

 

その美夏を見て、千冬は片眉を上げたが

 

「なに、ここに居るのならば、美夏は桜内の知人だ。何よりも……美夏が桜内のISだ」

 

と告げた。

 

「……麻耶とさくらさんか?」

 

「それと、あの人もだな」

 

義之の問い掛けに、美夏はそう返答した。

だが、箒が

 

「待て、その者がISとは、一体……」

 

と困惑した様子で問い掛けてきた。

すると、美夏が

 

「それよりも、どっちが先に行くのだ? 相手は、既に待っているようだが?」

 

とモニターを指差した。

気付けば、セシリアが既に待機していた。

それを見た千冬が

 

「織斑、直ぐに準備しろ」

 

と一夏に指示を下した。

それを聞いた一夏は、頷いてから白式を纏った。

そして、カタパルトに向かうと

 

「箒……行ってくる」

 

と言って、親指を立てた。

それを聞いた箒は、胸元で右手を握り締めて

 

「ああ……勝ってこい!」

 

と見送った。

そして一夏は空に舞い……

結果を述べれば、一夏は負けた。

 

「機体特性を把握しきれなかったのが敗因だな」

 

と告げたのは、千冬である。

白式は近接格闘特化型の機体で、武装は刀一本だけだった。

しかしその刀は、千冬が現役時代に使っていた物の進化系だった。

銘は、雪片弐型。千冬の現役時代の機体たる暮桜とその武装たる雪片を純粋に発展強化したのが、白式のコンセプトだった。

 

「仕方ないと思うがなぁ……知る前に放り出されてるし……むしろ、後一歩ってところまで追い詰めたのは評価できるが……」

 

千冬の言葉に、義之は後頭部を掻きながらそう呟いた。

確かに一夏は負けたが、それは雪片弐型を使いすぎたことによる自滅なのだ。

雪片弐型は、自身のSE(シールドエネルギー)を犠牲にして、相手のSEを一撃で大幅に削ることが出きる武装なのである。

つまりそれは、短期決戦機なのだ。

 

「桜内、ファーストシフトが終わったぞ」

 

「ああ、だから静かだったのか。天枷」

 

美夏の言葉に、義之は思わず納得した。

そこに、千冬が

 

「桜内、改めて説明しろ。そいつは、何者だ?」

 

と美夏を見た。

すると美夏が、快活な笑みを浮かべて

 

「なに、簡単な話だ。美夏は、ロボットだ」

 

と告げて、義之に触れた。

その直後、義之の身をISが覆っていた。

機体名は、桜花(おうか)

桜色とまるで空を彷彿させる蒼い装甲のISだった。

 

「ろ、ロボット!?」

 

「バカな!? 人間にしか見えなかったぞ!?」

 

山田先生と箒は驚くが、一夏が

 

「んあ? 天枷……って、天枷研究所!?」

 

と美夏の姓から、何やら声を上げた。

 

「まさか、最新型のロボット!?」

 

『いや、美夏はむしろ旧式だぞ? 作られたのは、今から約50年前だ』

 

一夏の言葉に、美夏が自分の顔をウインドウで表示させて返答した。

 

「50年前に……人間にしか見えないロボットが……」

 

美夏の説明に、山田先生は驚愕で固まっていた。

すると電子音が鳴り響き、セシリアが再び出てきたことが分かった。

それを聞いた義之は、カタパルトに足を固定した。

すると、山田先生が

 

「カタパルトのボルテージ、上昇……射出を桜内君に譲渡します!」

 

と射出する準備が整ったことを、義之に教えた。

それを聞いた義之は、スキージャンプみたいにしゃがんで

 

「行きます!」

 

と告げて、飛んだ。

 

「よ、待たせたな……」

 

「いえ、然程ではありませんわ……」

 

セシリアの専用機、ブルーティアーズ。

遠隔独立兵装を装備した、第三世代ISに当たる機体だ。

 

「んじゃま……始めようか」

 

「ええ……よろしくお願いしますわ」

 

二人は短く会話すると、武装を構えた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。