「五条院は分かるけど、彼が?」
「確か、一般人って聞いたけど……」
飛鳥の言葉に、カトレアとイングリッドの二人は一夏を見た。どうやら二人は、一夏が破魔の力を使える事を知らないようだ。
「織斑くんは、破魔の力を有しています」
「え!?」
「なるほど……それなら確かに、破壊出来るわね……」
イングリッドは驚き、カトレアは感心した様子で一夏を見た。カトレアは少し考えると
「近くに重要基点の陣が一つある。それを破壊して」
と告げた。
そして到着したのは、屋上だった。
「屋上!? こんな所に!?」
一夏は驚くが、三人は
「広範囲に展開するなら、高い所に陣を敷くのは普通よ」
「そうする事で、平面だけより結界が安定するんだ」
「だから、屋上というのは理に敵ってるんです」
と語った。
これは、一夏がまだ魔術や魔法に関わって日が浅いが故だ。まだ魔術・魔法の事をよく知らないから、してしまった反応だ。
そしてカトレアは、一ヶ所にチョークで✕と書いて
「この位置が、基点の中心点よ」
と指差した。それを聞いた飛鳥は、腰のポシェットから一つの柄を取り出し
「どうぞ、これを」
と一夏に差し出した。
見た目は飛鳥の物と同一だが、柄の糸の色が違う。飛鳥のは赤系で統一されているが、それは青と白だ。
「これは……」
「前に私のを使った際に得たデータから、一応織斑くんように新しく作ってもらいました。使ってください」
飛鳥から柄を受け取った一夏は、以前やった事を思い出しながら、魔力を流し込んだ。すると、一瞬で青白い刃が形成された。
「この色……確かに、破魔ね」
「しかも、こんな綺麗に刃を造れるんだ……」
一夏が形成した魔力刃に、カトレアとイングリッドの二人は驚いていた。
因みに、魔力刃は属性で色が変わる。
青は水系
濃い緑色は木
薄緑色は風
茶色は地
赤は炎と、様々な属性の刃になる。
なお確認されている限り、世界中で破魔を使えるのは飛鳥と一夏の二人だけになる。
それほどまでに、破魔の使い手は貴重なのだ。
「わざわざ……ありがとう」
「いえ、同じ破魔の使い手ですから。破魔が使える魔道具は貴重ですからね」
破魔の使い手は、通常の魔道具は使えない。
専用の魔道具でなければ、破魔の力を発揮出来ない。そして、今のところ破魔で遠距離戦闘は出来ない。出来るのは、接近戦闘のみとなる。
一夏は飛鳥に感謝の言葉を述べると、カトレアが示した場所に近づいて、一閃。すると、空気が変わったのを感じた。
「なんか……嫌な感覚が消えた……」
「大規模魔法陣を形成してた基点の一つが消えたからね」
「バランスが崩れたのよ……待って、何か来る!」
カトレアが言った直後
「直上です!」
飛鳥の警告に、全員一斉に反応して、散開。
現れたのは、体長2mに迫る大きなフクロウだった。
「こんなサイズのフクロウが居るのか!?」
「使い魔です! このサイズとなると、相当の使い手です!」
飛鳥は一夏に説明しながら、破魔の刃を構えた。
その時
「
「
その巨大フクロウを、10を越える光の鎖と蕀が縛った。その魔法を発動したのは、カトレアとイングリッドの二人だ。
「今よ!」
「行って!」
「感謝します!」
二人の援護を受けて、飛鳥が一気に駆け出した。
飛鳥は短距離選手顔負けの速度でフクロウに肉薄し、破魔の刃を一閃しようとした。
しかし次の瞬間、フクロウが霧散した。
「こいつ!?」
「一体じゃなく、群体!?」
今まで勘違いしていた事に気付いたが、遅かった。
気付けば、周囲を夥しい数の小さなフクロウが囲んでいる。そして、全部のフクロウが嘴を開いた時
「破ああぁぁぁぁ!!」
と一夏が声を上げたと同時に、一夏の全身から無数の刃が周囲に次々と放たれた。
放たれた刃により、フクロウは次々と切断され、消えていった。
「こ、これは……!」
「
イングリッドは目を見開き、カトレアはフクロウを一掃した一夏に驚いていた。
すると一夏は、膝から崩れた。
「織斑くん!」
倒れそうになった一夏を、間一髪で飛鳥が支えた。
「なんて無茶を……!」
グッタリしてる一夏に、飛鳥は慌てた様子で処置をしていく。そこに、カトレアとイングリッドも駆け寄り
「素人があんな魔法を使ったら、魔力が枯渇するわよ!?」
「意識はある!?」
と一緒に処置をしていく。
一夏が発動した拡散する刃は、高等魔法に分類される。
魔力刃を周囲に大量に放つ為に、魔力を大量に消費する。更に遠距離戦闘に不向きな破魔で、遠距離魔法を放った。これは前代未聞で、どんな影響があるか分からなかった。
飛鳥は急いで一夏の制服の前を開き、胸元に耳を当てて
「鼓動が弱い……! 生命力が弱ってます! 急いで魔力を回復させないと!」
と一夏を屋上に設置されていたベンチに寝かせた。
「人払いします!」
イングリッドは急いで、屋上全体に人払いの結界を展開。人が屋上に来れないようにした。
そしてカトレアは、魔眼を発動し
「魔力の流れがめちゃくちゃよ!」
と一夏の胸元に、何本か針を刺した。
カトレアがしたのは、所謂針治療だ。無茶でめちゃくちゃになった魔力の流れを、魔力を通した針を使って誘導し、治す手助けをする。
しかし、一番問題なのは魔力が少ないこと。
魔力総量は、修行と実戦経験で増えていくもの。一夏は確かに、並々ならぬ魔力出力を誇る。だがそれは、魔力総量とは関係がない。
簡単に言えば、魔力タンクの容量が少ないのに、大量に出し続ける。という事になる。
しかも今回は、8割以上消費してしまっている。
生命維持に必要な最低限の魔力すら、今の一夏には残っていない。
色々と処置していくが、飛鳥は
「仕方ありませんね……!」
と決意した表情で、制服の上を脱いだ。
それを見たカトレアとイングリッドの二人も
「やっぱり、それしかないわよね」
「恥ずかしいけど、人の命には変えられないよね」
カトレアは針を抜いてからだが、二人も飛鳥に続いて制服の上を脱いだ。
そして三人は、上半身裸の一夏に抱き付いた。