魔力をほぼ使い果たして倒れた一夏は、不思議な光景を見ていた。まるで、何処かの研究所に見える。
「なんだ、ここ……」
一夏は知らない場所だったのだが、何故か知ってるような感じがした。そして、ある部屋に入ったのだが
「なんだ、これ……!」
その部屋には、赤ちゃんが入れられたポッドが規則的に並んでいる。あまりにも常軌を逸した光景。しかし、そのポッドを見ている研究者達は
「ダメだな……骨密度が規定値以下だ。503番は廃棄」
「こいつは、思考速度が遅い……505番も廃棄だ」
とまるで、路傍の石に対するように、無造作に告げる。
「こいつら、何をしてるんだよ……!?」
一夏は気が狂ったとしか言えない所業をしている研究者達に、眩暈を覚えながら先に進んだ。すると、一人の研究者が
「主任、副主任。本当に上手くいくのですか、織斑プロジェクトは?」
と言った。
「……織斑……プロジェクト……?」
自身の姓と同じ計画名に、一夏は動揺しながらその声の方を見た。すると、千冬によく似た顔立ちの女性が
「理論上は出来ます。人工天才誕生計画は……」
と告げた。
「人工天才誕生計画……!?」
一夏が近づくと、もう一人。一夏に似た顔立ちの男が
「産まれた時からの天才と、学習機能が桁外れな天才……アプローチは二通りだがな……」
と冷徹に告げる。
そこで一旦景色が揺らいで、見えるようになったら
「成功です! 1000番の身体能力と思考能力は規定値以上です!」
と一人の研究者が興奮した様子で、先ほどの男女に一人の女の子を指し示した。
すると、女性の方がその女の子を抱えあげ
「おめでとう、1000番……いえ、名前を与えましょう……千冬と」
「千冬姉!?」
女性が告げた名前を言った時、またしても光景が一瞬揺らいで
「予想外です! まさか、双子になるなど!」
「11001番……まさか、一卵性双生児になるとは。しかも異性……」
「興味深いな……本来は計画は終了だが……特別だ、この二人も計測しよう……名前を与えるか……一夏に円夏だ」
男が告げた名前に、一夏は完全に驚き固まっていた。
そこで、光景は途切れ、視界が真っ暗になった。
かと思えば、いきなり真っ赤に染まり、耳障りな警報音が鳴り響く。
『総員退避! 繰り返す! 総員退避せよ! 研究所Cー33区画にて爆発発生! これ以上の延焼の阻止は不可能と判断する! 各自、決められた避難ルートで退避せよ!!』
どうやら、何らかの事故が発生したらしい。
一夏が混乱していると
「ちーちゃん! こっち! 急いで!」
「分かっている!」
と幼いが、聞き覚えのある声が聞こえた。
見てみれば、小学生位の千冬がまだ赤ん坊の一夏と女の子を抱えて走っている。その前には、同じ位の少女。顔立ちから、束が居た。
どうやら二人は、逃げている最中らしい。しかし、周囲には大人の姿は無い。
「しかし、派手にやったな!」
「試験段階のISを使ったんだ! いや、いいデータが取れたよ! だけどこんな狂った研究は終わりだよ!」
どうやら、束が手引きしたらしい。そのまま、外に出ようとしたが、銃声が鳴り響き、千冬の左手を掠めた。
被弾した痛みから、千冬は左腕で抱えていた女の子。円夏を落としてしまった。
円夏は泣き、千冬は何とか円夏を回収しようとしたが
「無理だよ! ちーちゃん! 向こうから、相手の増援が!!」
と束が指差した方向から、銃を構えた部隊が迫ってきていた。それを見た千冬は、ギリッと歯を噛み鳴らし
「すまない……!」
と呟くと、踵を返して、試作機らしいISを纏った束の手を掴んで、空に舞い上がった。