一夏が目覚めたのは、倒れてから約2時間後だった。
最初は視界がぼやけ、まるで風邪をひいたように体はダルかった。しかし少しずつだが、体の感覚が戻ってきて、自身の上に柔らかい感触がある事に気付いた。
「……何が……」
「つっ!? 起きたんですね!?」
一夏が小さく呟くと、飛鳥の顔が目の前に現れた。飛鳥は一夏の顔をガッシリと両手で挟み
「貴方は、自分がどんな無茶をしたのか、分かってるんですか!? 下手したら、死んでたかもしれないんですよ!!」
と怒鳴られながら、頭をガクガクと揺さぶられた。一夏が混乱していると
「はいはい。怒る気持ちは分かるけど、貴女は服を着る」
と飛鳥をカトレアが引き剥がした。その時になり、一夏も自身が上半身裸になっている事に気付いた。
「はへ!?」
「はい。君の制服」
手早く制服を着たイングリットが、一夏にワイシャツと制服の上着を差し出した。とりあえず一夏は、手早く制服を着て少しの間、三人に背中を向けながら、一夏は何をしていたのか思い出していた。
(確か……闇の魔法使いが仕掛けたっていう魔法陣を壊しに来て……そうしたら、デカイ梟が現れて……攻撃したら無数に分裂したんだよな……いかん、その後が思い出せない……)
と一夏が思い出そうとしていたら
「もうこっちを向いても、大丈夫です」
と飛鳥の声が聞こえた。
振り向くと、三人が真剣な表情を浮かべているのが分かる。
「……前に言いましたよね……魔力とは、魂の力……無理に使えば、それは即ち死に至る……」
「だな……」
それは、初音島で言われた事だった。
それに、音姫に言われたのは、魔法で無理は厳禁。対価は自分自身になる、とも。
「今回は、私達が居たから助かりましたが……そんな幸運は何回も続かないと思ってください」
「ああ……肝に命じる」
一夏の言葉に、飛鳥は頷いて
「しかし、貴方のおかげで助かったのも確かです……ありがとうございました」
と頭を下げた。
「えっと、つまりは……この場所の魔法陣は破壊出来たってことでいいのか?」
「はい、その通りです」
飛鳥が視線を向けた先には、何も無い。しかし、何らかの不思議な気配は残留している。
「問題は、これが幾つあるのか……」
「IS学園は無駄に広いからね……確実に数十はあるわよ……」
飛鳥の呟きに、カトレアは周囲を見回しながら辟易とした様子だった。
IS学園は時々だがISの試合にも用いられるドームが、全部で5つあり、全長1kmにもなる陸上トラックを擁する校庭も2つある、と言えば、どれだけ広いかは分かるだろう。
下手したら小さな町が一つ入る広大な敷地から、小さな魔法陣をしらみ潰しに探しては破壊する。
まさに、広大な砂場の中から石を探すようなものだ。しかも、相手も何もしない訳がなく、増やしていくのは確かだ。
いたちごっこで、相手が一日に最大何ヵ所に魔法陣を敷設してるのか分からない。
「……こうなったら、IS学園に居る善の魔法使い全員に協力してもらうしかないわね……」
「人海戦術……まあ、それが一番確実ですか……」
相手の人数も分からないが、少人数なのは確実。ならば、それを上回る人数で魔法陣をしらみ潰しに破壊する。それが、今現在出来る選択だった。
「そうなったら、色々根回ししないといけないわね……」
「少し、実家に協力要請しないといけないかな?」
「私も、実家に連絡します」
カトレアに続いて、イングリット、飛鳥も携帯を取り出した。どうやら、一夏が思っていた以上に大事らしいということを、一夏は理解した。