「そっか……もう少人数じゃ、対処は出来ないレベルなんだね?」
「はい。今回はたまたま上手く対処出来ましたが……」
「次は相手もそれなりに対処してくるかと」
魔法陣を潰した日の夜、音姫の部屋にカトレア、イングリット、飛鳥の三人が集まって、音姫に何があったのかを報告していた。
「実は私も、魔法陣を一つ破壊したんだ……マンホールに重ねてあったやつを」
「マンホールに?」
音姫から告げられた内容に、カトレアが片眉を上げた。
信じられないのと、見逃したからだろう。すると音姫は
「あれは多分、ここ2、3日な間に追加されたんだと思う……まだ新しい魔法陣だったから」
と告げた。
「ということは、間違いなく……」
「学生の中に、闇の魔法使いが居る……」
音姫から教えられた情報から、イングリットと飛鳥が難しい表情を浮かべた。別に、闇の魔法使いが居る事が問題ではない。問題なのは、何人居るか分からないのが問題なのだ。
だが少なくとも、一人ではない筈である。でなければ、魔法陣の数が多すぎるのだ。
「……待って……もしかして、一人なのかも」
「音姫さん?」
「その根拠は?」
音姫の呟きに、カトレアが問い掛ける。
「今まで私たちは、学園全体の魔法陣を短期間で設置してるって思ってた……けど、もし年単位だったら?」
音姫のその言葉に、三人はあっと声を漏らした。
「もし一年以上掛けて設置してきたのなら、数の多さにも頷ける……」
「確かに……それなら一人でも数を多く設置出来る……」
音姫の考えを聞いて、飛鳥は同意していた。
「なら、敵は少なくとも二年生以上に限定出来るわね……」
「そうですね……しかし、それでも500人以上は居ます……特定するにも、時間が掛かるかと」
IS学園は1クラス約40人で8クラスあり、一年生は約320人居る。それは二年生、三年生も同じだ。
しかし例年、進級するまでに一年生は一年間に最低で約20人が退学し、二年生も多少のバラつきは出るが退学者は出る。
今現在、IS学園の在籍生徒人数は878人だ。
一年生の約320人を抜いても、560人近く居る。その中からたった一人の闇の魔法使いを見つけるのは、簡単ではないだろう。
「……江戸川さんに、お願いしましょう」
「人形使い、ですか……」
音姫の言葉に、飛鳥が呟いた。
江戸川家は人形使いの魔法使いで、その動きや見た目は本物と見紛うという。
人間型なら生きた人間のように、犬型なら生きた犬のように動かせる。それが、江戸川家の魔法特性らしい。
そしてこれは個人差があるが、一人で複数の人形を操れる。
過去には、一人で百体以上の人形を操り、日本を攻めようとした闇の魔法使いの集団を撃滅した、という記録もある。
そして操れる数は、命令が単純ならば増やせる。逆に、複雑な命令だと減ってしまう。
「……けど、江戸川さん……引き受けてくれるかな……」
実は音姫には、一つ懸念事項があった。
江戸川家だが、確かに日本を守る魔法使いの一族だが、同時に傭兵のような立ち位置の一族でもあるのだ。
つまり、お金を要求される事も多々ある。それも、割りと高額な金額を。
過去には、億単位で要求してきた事もある。
それを知っている音姫は、内心で不安だった。
そして、呼ばれた江戸川杏花は
「2000万で引き受けます」
と告げた。