「2000万……ですか」
「安く見積もってね。人形を動かすのだって、お金が掛かるんだよ?」
音姫の言葉に、江戸川杏花は淡々と告げた。
続けて
「今回の依頼からだと、最低100体用意すると仮定し、その100体に光学的、魔術的迷彩を施し、魔力探知機能を付与……それから、顔認識と通報機能……それらを考えると、むしろ2000万でも安い方ですよ」
と指折りしながら、音姫に説明した。
そこから音姫は、杏花がリアリストだと認識した。
音姫は少し黙考すると
「料金に関しては、要相談という感じですが……分かりました……その旨は上と相談します」
と告げた。そして音姫は
「江戸川杏花さん、改めて調査をお願いします」
「……分かりました……その依頼、承ります」
杏花は、音姫からの要請を受諾した。
そして杏花は、二日後には大量の調査用人形をIS学園全体に散会させ、調査を開始した。
とはいえ、今まで気付かれずに大量の魔法陣を設置してきていたのだから、そう簡単に尻尾を掴むわけがない。
しかし、成果はあった。
例えば
「え!? 俺達の教室に!?」
「ええ……天井です」
予想していなかった場所に、魔法陣を見つけ、破壊する事も出来た。
「やれやれ……こんな場所にもか」
「うん……トイレのタンクの下側」
人形の調査により、次々と魔法陣を見つけては、破壊していく。地道かもしれないが、相手にとっては絶妙な嫌がらせに繋がる。
カトレアの予想だと、バランスよくかつ、大量の魔法陣を必要とする大規模魔法の発動の為に、学園全体に設置している。だから、一個ずつでも地道に破壊していけば、そのバランスが乱れ、大規模魔法の発動を遅延・阻害出来ているらしい。
だが、やはり設置している術士を直接叩かなければ、いずれかは発動してしまう可能性が高い。
特に問題となったのが、相手の隠密性。
幾つかの魔法陣は、設置した直後に発見出来たのだが、魔力の高まりが感じられなかった。
そこから相手が、相当高度な隠密訓練をした魔法使いと推察された。
魔力の制御もだが、隠密系の魔法は一朝一夕には修得出来ない。
魔法使いならば、魔法を使う際に漏れ出る魔力をギリギリまで押し留める為に、毎日魔力制御の訓練を欠かさない。
魔力制御の仕方は各人様々だが、その魔力制御訓練をする事で、魔力感知を潜り抜ける事に繋がる。
未熟な魔法使いは、一回の魔法を使う時、例えると手榴弾が爆発するように魔力が体から漏れ出てしまい、容易く見つかってしまう。
しかし、熟練の魔法使いならば、それが消音器を着けた銃のように気付かれずに発動出来るようになるのだ。
そこに、隠密系の訓練をした者ならば、更に静かに魔法を使う事が出来る。
今回の敵は、まさにそれだった。
「……亡国機業……恐ろしい相手……流石、今現在最古の闇の魔法使いの集団……だね」
音姫は、イギリスからの連絡を受けて、更なる態勢を整える為に動いた。
その連絡内容は、マロース一族から、一人。IS学園に向かわせるというものだった。
アイシアの一族であり、サンタクロースの一族たるマロース一族。
マロース一族はフランスを拠点とした魔法使いの一族で、光に属している。
マロース一族が主に使う魔法は、人々が喜ぶ物を生み出す魔法という、自身の魔力から何かを生み出す魔法だ。
実はある意味、義之も似た魔法を使っているが、義之の場合は和菓子限定という、余りに偏った魔法。
アイシアもこの魔法が使えて、アイシアの場合はその魔法を使ってオモチャを生み出し、販売してお金を稼いでいる。
その為マロース一族は、フランスではオモチャや日用品を生み出して売る雑貨店を営んでいる一族だ。
そんな一族が来ても、役に立たないのでは?
と思った方も居るかもしれないが、マロース一族にはもう1つ特徴がある。それは、使い魔だ。
マロース一族は、時々一人で多数の使い魔を操る事が出来る魔法使いが産まれる事があり、それが、サンタクロースが乗るソリを曳く多数のトナカイの基になった、と言われている。
今回、その多数の使い魔を扱える魔法使いがIS学園に来るという事になったのだ。
「……解決策になれば良いんだけど……」
音姫は一人、夜空を見ながら呟いた。