That ID was Not Found【完結】   作:畑渚

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前作品群を完結させたので作者名を戻しました。この作品は前作品群とは関係のない世界の話です。
それと軽いネタバレを含んでいるのでタグ追加します。


4.大規模作戦

「こらG11、起きなさい」

 

「あと5分~」

 

「もう起きなきゃ駄目だよ~」

 

「うう、ほっぺを引っ張らないで~!」

 

 G11のほっぺは今日も良く伸びる。しばらく引っ張っていると、目をこすりながらG11は身体を起こした。

 

「9、通信するからすこし静かにしてくれない」

 

「おっと、ごめんね45姉」

 

 静かになったことを確認して45は通信機のスイッチを押した。しばらくすると、通信機がホログラムを映し出す。片眼鏡をかけた気の強そうなこの女性は、PMCのG&Kの上級代行官のヘリアンだ。

 

「404小隊に任務を言い渡す。こちらで遂行中の大規模作戦に合流し、区域開放の援護をしろ。詳細は地図と共に送信している。以上だ」

 

 それだけ述べると、ホログラムは消えてしまう。

 

 大規模作戦であれば、ハイエンドモデルとの接敵も思慮しておく必要があるだろう。私はダミーのプログラムを書き換え、臨時操作端末を誰にもばれないように右腕に取り付けた。

 

「ねえ45、この任務っておかしくないかしら」

 

「……おかしくなんてないわ。それに私たちは与えられた任務を遂行するだけよ」

 

「とぼけないで」

 

「まあまあ落ち着きなよ416」

 

 憤って立ち上がった416をなだめる。45はどこ吹く風といったように、自分の装備を点検し始めた。

 

「9、あなただっておかしいと思っているんだしょう?」

 

 416は私へと標的を変える。こういったときはいつもの言い訳をつかうに限る。

 

「私は45姉の指示に従うだけだよ」

 

「……そういうと思ったわ」

 

 416も私の返答に呆れて頭が冷えたのか、座り直した。この言い訳はまだ使い道がありそうで助かる。

 

 

__________________

 

 

 ヘリが私たちを降ろしたのは、廃虚街だった。近くに敵の反応もなく、大規模作戦は比較的静かに開始した。

 

「ここからは別行動ね。私は左から、9は右から回り込んで合流地点へ。416とG11はまっすぐ進んで」

 

 45の指示に全員がうなずく。いや、若干一名うなずくように船をこいでいた。

 

「G11!任務開始だよ!」

 

「う~ん、敵が出てきたら起こして」

 

「ほら、起きて!」

 

「うう、引っ張らないでよぉ」

 

 いつもどおりの頬の伸縮性を確かめながら、私はどこか嫌な予感がしていた。虫の知らせだろうか、どことなく気持ちが落ち着かなかった。

 

 

 

 

 任務は途中までは順調に進んでいた。しかし、途中からは明らかに鉄血兵の数が増えていた。奴らがどういう理由で集まっているのかは検討もつかないが、この大群を相手するには私では火力不足だ。

 

「45姉、聞こえる?」

 

 私は敵から離れて通信機を繋ぐ。暗号化された通信は複雑な電波の波にのり、無事に45まで届いてくれた。

 

「どうかしたの?」

 

「目の前に敵の大群がいるよ。この規模は……ハイエンドモデルがいるはず」

 

「いまどの辺りかしら」

 

 地図を表示し位置座標を送信する。

 

「……まずいわね。416たちを向かわせるわ」

 

「その必要はない」

 

 私は敵の持つ通信機をにらみつける。

 

「誰よあなた!9、聞こえているなら返事を――」

 

 敵は通信機を放り投げた。最後に聞こえた45の声は相当な焦りを感じさせた。

 

「通信機もタダじゃないんだよ?」

 

「貴様……9といったか。投降するなら破壊しないでやろう」

 

 私は精一杯の笑顔で答える。

 

「そんなのお断りだよ!」

 

「そうか、ならば切らせてもらう!」

 

 ハイエンドモデルであろう彼女は、ボウガンのようなものからレーザーブレードを出す。そして次の瞬間には、私の目の前まで接近していた。

 

「ちっ、メインフレームは無傷か」

 

 とっさに動かしたダミー人形が身代わりとなってくれたおかげで私は無傷だった。しかし、身代わりとなったダミー人形は、バラバラに切断され再起不能となっている。一回の攻撃で二体も駄目にしてしまった。

 

「これはちょっと厳しいかもね……」

 

 私は額を流れる汗を、袖で拭った。

 

 

__________________

 

 

「9、聞こえているなら返事をして!」

 

 9からの通信は突然に途絶えた。最後に聞こえた謎の声には、小隊長である私だけに送信された敵のデータに含まれていたものと似ていた。

 

「ハイエンドモデル相手に9一人じゃ……」

 

 すぐに通信機のチャンネルを変更し、416に繋ぐ。

 

「こちら416、なにか問題?」

 

「9がハイエンドモデルと接敵したわ。場所を送るわ」

 

「了解。合流でき次第戦闘していいのね」

 

「いや、待って」

 

「ん?なによ」

 

「合流しなくていいわ」

 

「あきれた。あんた9まで犠牲に」

 

「9との連絡が取れないのよ?急行したって間に合うとは限らないわ」

 

 そう、だからこれは仕方のないことだ。ここで突撃したとしても、被害が増える結果につながる可能性が高い。

 

 だから……だから……

 

「お願い……耐えて……」

 

 私は腕章を掴みながら、最大出力で街を駆け抜けた。

 

 

 

 

「虫ケラが!」

 

 大群というだけあって、まだ9から送られてきた地点から離れているのに雑魚の鉄血兵がワラワラと群がってくる。

 こんな雑魚は私の相手ではない。素早く無力化して先へと進む。早く9のところへ行かなければ……

 

「9!」

 

 遠くの交差点でハイエンドモデルと戦う9の姿が見えた。

 

 よかった、間に合った。

 

 しかし胸を撫で下ろす暇すら無かった。脚をやられているのか9の動きは遅く、ハイエンドモデルは大技を出す準備をしている。

 

「45姉、一度退いて」

 

 9の手には通信機が握られている。404小隊の共有回線で9はそう言った。

 

「そんなことしたら9が――」

 

「了解したわ」

 

 私の言葉を遮ったのは416だった。

 

「行くわよ45」

 

 何故、416が私のすぐ後ろにいる?私は予測戦闘地点にほど近い場所で狙撃ポイントを探すように伝えたはずだ。

 

「待って!それじゃあ9は」

 

「あなたが言ったんでしょう。このまま突撃しても無駄よ」

 

 416が私の肩を掴み、無理やり引きずっていこうとする。私は出力を高めるが、416はびくともしない。

 

 ほら、こんなことをしている合間にも9が――

 

 

 

 

 ハイエンドモデルは目にも留まらぬ速さで9へと接近し、通り過ぎる。すぐさま反転し再び9の側を通り過ぎる。

 遅れて、9の正面に居たダミー人形がバラバラになり、9自身の背中から血が噴き出る。9は身体を前のめりにし、そのまま倒れる。

 

「9!お願い416!9が!」

 

「ばか!今のうちに逃げるのよ!」

 

 416は私を肩に担ぎ、走り出す。9は倒れたまま立ち上がらない。

 

「離して!離してよ!」

 

「もう子供みたいにゴネないで!」

 

 ああ、私は9までも失ってしまう。また、私は助けられない。大切な姉妹を、私は失ってしまうの?

 

 

__________________

 

 

 あぶなかった。

 

 あのまま45がこの場にいたらバレてしまったかもしれない。416には礼を言わなければいけない。

 

 まあ生きて帰れたらの話だが。

 

「貴様、人形ではないな。もっと脆い……まさか人間か?」

 

「はは、だったらなんだっていうのよ」

 

 鎮痛剤を打ち込み、目がチカチカするような痛みを和らげる。

 

「なに、貴様は価値がありそうだ。いまなら降伏を認めよう。なに、命は失いたくないだろう?」

 

「そうか、バレちゃったか~」

 

 私は起き上がる。ダミーは残り一体。私もいつまで動けるかわからない。

 

「貴様……笑っているのか」

 

「バレちゃったなら……何が何でも殺さないとね!」

 

 UMP9で牽制しつつ、近くの物陰へと身をひそめる。奥の手が残って入るが、ダミー人形一体だけでは心もとない。そして、その奥の手のチャンスも一回きりだ。

 

「ちっ、気狂いか?」

 

「まったく心外だなぁ!」

 

 準備が終わった私は物陰から出る。どうやら敵さんはこちらの様子を見るようだ。

 

「何故人間が人形の部隊にいる?」

 

「無駄口を叩いている場合?」

 

 UMP9ではハイエンドモデルに有効弾を撃ち込めない。だからこそ、私は対ハイエンドモデルの装備を持ち込んでいた。まったく自分の勘の良さには惚れ惚れする。

 

「たかが人間に負ける私ではない」

 

「これでも?」

 

 閃光手榴弾の光が、辺りを満たす。

 

「バカが、私たちのモデルにソレは効かない」

 

 知っている。彼女らハイエンドモデルには視覚以外から環境把握するシステムがある。だがしかし、この光は目を潰すだけの物ではない。

 

「交渉不成立だな。せめて痛みを感じずに殺してやる。動くなよ」

 

「ベーっだ。誰が避けないもんか!」

 

 突撃体勢をとった敵は、一度のステップだけでまっすぐに突っ込んでくる。そう、まっすぐだ。

 

 ダミーを盾にして一撃目を凌ぐ。ダミーの腕が吹き飛ぶが、なんとか無傷だ。

 

 そして二撃目。反転後は二撃目も、一撃目と同じくまっすぐに進んでくる。

 ダミーをその場に置いて、私は思い切り横へと飛ぶ。着地姿勢をうまく取れなかったが、これで攻撃コースからは逸れたはずだ。

 

 

 

 

 

 

「愚かだ」

 

 すでに反転し私がもともといた場所に踏み込み始めていたはずだ。

 

 なのにどうして二度目のステップを踏み、私の方へと方向転換をしているのだろうか。

 

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