光の女神   作:うどん麺

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9話 カルネ村

 

 

 

ナザリックと同盟を結んでから数日が経った。その間私はラファエルからの逐一の報告や、アテナやヘカテーに癒されたり、ミカエルに癒されたりと色々していた。

 

ナザリックのモモンガからも逐一メッセージを受けていて情報の共有等はしていた。こちらとしてはありがたい限りだ。

 

で、先ほどラファエルより緊急の連絡があって、どうやら眷属を忍ばせていた村────カルネ村が謎の騎士団に襲われているとのことだった。

 

別にそんなことはどうでも良いが、損得勘定で決めてしまえば助けた方が有益ではある。助けたという名目で人間達と友好関係を結べるかもしれないし、今以上の情報を望むことも出来る。

 

尤も、それを行うにはやはりナザリックとの共同戦線になりそうだけれども。

 

 

「それで、いかが致しますか?我が主よ。」

 

と、凛とした声音で私に意向を尋ねてくるのは勿論今私に報告をしてくれたラファエル。

 

「そうね・・・・私としては助けに入って友好関係を築くというのが一番のシナリオだと考えているけど、ナザリックの出方次第ね。もし、ナザリックも行くのならば共同戦線を張る。ナザリックが行かないのならば向こうに連絡を入れた上で単独で介入しましょう。これはチャンスですからね。上手く行けば更なる情報やあわよくばこの世界の金銭も得られるでしょう。ですから、直ちにメンバーを選定します。向こうに行くのは私とアテナ、ヘカテーですね。彼女達には完全武装で来るように伝えてください。」

 

「承知した。我が主よ。」

 

それだけ言い残してラファエルは二人を呼びに行った。

 

さて、こちらはこちらでモモンガに連絡を入れますか。

 

私は会談の時に登録したモモンガへの伝言(メッセージ)を行使する。

 

「モモンガさん。聞こえていますか?シエルです。」

 

と、伝言は念話では無いのでこのように声を出す必要があるが問題なく使えるので重宝している。

 

「ああ!シエルさん!何ですか?」

 

「えーと、そちらでは確認しているか分かりませんが近くの村が襲われている様なので、そこを助けて情報を得ようと思っているのですが・・・・どうですか?」

 

「村ですか。それならこちらでも確認は出来てますよ。丁度今、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で確認したばかりですよ。それで、少し考えた結果我々も行くことにしたんですが・・・・折角ですから一緒に行きましょうか。」

 

「ええ、そうですね。折角ですからね。」

 

こうして初の共闘が決まったのだった。

 

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

カルネ村の外れ。

 

 

 

「ちっ!手間かけさせやがって!」

 

そう毒づくのは帝国兵に偽装した法国の工作部隊員の一人。そんな彼の目線の先にはここまで走って逃げてきた娘。エンリ・エモットとその妹のネム・エモットの二人だった。

 

しかし、その姉の背には深い裂傷が刻み込まれておりその様子から剣で斬られたのだろう事は容易に想像が出来た。

 

「お姉ちゃん!!」

 

ネムはそう叫ぶが姉の反応は薄い。せいぜいが妹を自分の身で庇うのが精一杯だった。

 

「ネム・・・・私は、大丈夫、だから、お願い、逃げて・・・・」

 

「嫌だよ!お姉ちゃんも一緒に逃げようよ!!」

 

そのようなやり取りも既に姉は息も絶え絶えと言った様子で、その命は今にも尽きそうな程に弱っていた。

 

そんな様子の二人にも死は刻々と近づいてくる。その剣を振り上げ、まさに下ろそうとしたその時────男の動きが止まった。

 

その男の驚愕の視線で見詰める先には黒い異様な渦が二つも出現していたのだ。

 

そして、その片方の渦から出てきたのは───人間の手ではない、骸骨の骨のみの手だった。

 

そして、もう片方の渦からは普通の人間の手が。しかし、それは全身が出てきてから言葉を失うのだった。何故なら──────その出てきた人物。シエルの背からは六対十二枚という枚数の羽を広げ神々しく降臨する神の姿があったからだ。

 

そして、もう一方。そちらにはまさに死を体現したような、豪華なローブを着込み、その空洞の目を妖しく赤く光らせるスケルトン(オーバーロード)が出てきた。

 

その光景はまさに、天と地獄が隣り合うような光景だった事だろう。

 

しかし、それを語り継ぐ者はこの場にはいない。

 

 

 

そして、スケルトン(モモンガ)がたった一言。

 

心臓掌握(グラスプ・ハート)

 

それだけで、今にも剣を振り下ろそうとしていた男は事切れて地に倒れ伏した。

 

そして、神々しく輝く女神も一言。

 

過剰回復(オーバー・リカバリー)

 

そして、もう片方控えていた男の肉体が腐り始め、やがてその肉体は消滅した。

 

 

そんな光景を目の前で見せられた姉妹だが、そこに恐怖はなく、ただただ状況に着いていけずに混乱する姿のみがあった。

 

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

 

うわぁー、めっちゃ弱いなぁー。

 

 

シエルは死んでいく人間(殲滅対象)を見てそう思う。

 

「たかが第八位階魔法で死ぬなんて弱すぎでしょう・・・・」

 

「ええ、本当にそうですね。何でしょうね?この人たちの装備、お粗末にも程がある気がしますがね。」

 

「まあ、別にいいです。」

 

それよりも。とシエルは姉妹の方に振り返り

 

中傷治癒(ミドル・キュア・ウーンズ)

 

その一言だけで、あれだけの瀕死の傷を無に返した。

 

それを驚くような目で見るエンリとネム。そんな狼狽している彼女達に一言。

 

「貴女達は助かりました。」

 

と、シエルは告げるのだった。

 

 

 


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