私はエンリ・エモット。カルネ村に暮らす普通の村娘です。
ある日、何時ものように過ごしていると少し村が騒がしいことに気付きました。そしてそれは直ぐに情報として伝わって来ました。何と、帝国兵が村を襲撃していると言うのです。
それを聞いたお父さんが私を守るために家に匿って守ろうとしてくれたのですが、やはり見逃されませんでした。やがて帝国兵が家にやって来て問答無用でお母さんを切り殺してしまいました。
私にはそれが怖くて怖くて、それを見まいと必死に目を反らしました。
そんな蛮行に対してお父さんが抵抗しましたがやはり、剣で刺されてしまいました。
そんなお父さんは私とネムに逃げろと言いました。幸い、私とネムの近くには兵士は居なくて私の足でも逃げることが出来ました。
しかし、やはり女子供の足では直ぐに追い付かれてしまい、私は背中を斬られてしまいました。
本当に、その時は死んだ方がマシだと思えるほどの痛みが私に襲いかかりました。でも、それでもネムだけでも助かるようにと必死にネムを庇いましたが、数回斬りつけられて私の意識は今にも途切れてしまいそうで───その次の瞬間です。兵士がその振り上げた剣を振り下ろそうとしたとき────その兵士が硬直して私は不思議に思いました。
どうやら兵士は私を見ていません。更にその後ろ。だから私も辛うじて動く首を頑張って後ろに振り向けました。
そこには
正直、恐怖よりも混乱が打ち勝っていました。目の前で行われた一連の行為が頭に入って来ませんでした。
そしてやがて、もう一人居るのにも気が付きました。そちらは先程の絶望とは対照的に、光に溢れる存在でした。直感的に私はその存在を天使様と思いました。あれほど神々しい存在は天使様だけだと思いましたから。
そして、その天使様も一言。それだけでもう一人いた兵士も肉が腐り果て死んでしまいました。正直、そちらの方が恐怖を煽るような死に方だったと思います。何せ、肉が腐るのを生で見てしまいましたから。
でも、それでも天使様はこちらに近づいてきて私に何か一言を言っただけであっという間に私の傷を癒してしまいました。
一方、アンデッドの方は何と天使様の友人だと言うのです。ですが、命の恩人の方々ですので私はそれを信じました。
天使様が出てきたお二方の天使様と話している内に、アンデッドの恩人?が近づいてきて私にいくつか質問をしてきました。
魔法を知っているか?とか、マジックキャスターを知っているか?とか。
私がそれに答えた後にその人?が何か唱えると私とネムの周りを囲うように透明の膜が張りました。そこに何かを渡され、それがどう言った物かを説明された後に、その人は天使様の方に向かいました。
そして、天使様と何かを話している内により衝撃的な光景を見てしまいました。何と、人間がスケルトンになってしまったのです。今度こそ恐怖してしまいました。もしかしたら私もああなってしまうのでは?という恐怖が私の頭を支配しました。しかし、その考えとは裏腹に、天使様と恩人のアンデッドが行ってしまいそうになったので、私は咄嗟にお二方のお名前を聞きました。
すると、天使様は少し微笑みながら『シエル』と名乗って下さいました。そして、アンデッドの方は重厚な声で『アインズ・ウール・ゴウン』と名乗って下さいました。
私はそのお名前を忘れないよう、お二方の姿が見えなくなった後も頭の中でお二方のお名前を反芻するのでした。
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あれから主に私が村長さんに質問をして、ここがどんな場所なのか、彼らが何者なのか、それと金銭の価値を説明してもらった。
そして、もらった金貨等はアインズと折半することになった。
「アインズ様、シエル様。どうやらこの村に何者かが近づいてきているようです。」
そう報告するのはアインズの守護者のアルベド。何故、私にも様付けしているのかと言うとアインズがそう言うように命じたから。私としては別に様付けじゃなくて良かったんですけどね。アルベドも嫌々そうに言っていますから。
「ふむ、そうか。村長さん。一緒に広場に来てもらえませんか?」
アインズのその提案に村長はただ肯定するだけだった。
それから暫くすると馬に乗った、先程とは違う装備の兵士が数十人やって来た。
「村長さん。彼等が誰だか分かりますか?」
「え、えぇ。あの方達は王国兵士の方々で、先頭に居られるのは王国戦士長のガゼフ・ストロノーフ様です。」
ふぅーん。王国戦士長かぁ。
「それはどれ程の強さですか?」
おぉー、ざっくりと切り込んでいくねぇ。
「戦士長様は周辺国家最強と言われておりますが。」
「ふむ、そうですか。取り敢えず彼らと接触しましょう。彼がどんなものか見てみたいものですからねぇ。」
と、アインズと村長さんがそう話していると後ろからアテナが私に報告してきた。
「シエル様。あの戦士長とやらですがはっきり言って弱いです。30レベル位ですので。」
「やっぱりね。まあいいわ。それでもこの世界ではそれなりの強さなのでしょうから、会ってみる価値は十分にあるわね。」
こうして、アインズとシエルは王国戦士長を待ち構えるのであった。