光の女神   作:うどん麺

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14話 束の間

 

 

 

あれより、スレイン法国との一件を片付けた私達はカルネ村に軽く連絡要員を残して、一路ギルドへと戻った。結局アテナとヘカテーを連れていった意味は殆ど無かった気がするけど、まあ今はそれは良いとしよう。

 

取り敢えずこれでこの世界の初接触は好感触で終えることが出来たので安心して一息つけると言うものだ。

 

「今度はどうしようかなぁ。」

 

ふとそう言ってしまうが、はっきり言ってこれから次のこと等は考えてもいなかった。せいぜいがナザリックと協調して行こう。ということ位で他には特にはなにも考えていなかったのだ。

 

まあ、アテナとヘカテーと共にこの世界に存在する冒険者になって活動する。という方針はあるが、それ以外は全くの白紙で取り敢えずこの世界の情報を集めているという状態が原状だ。

 

「そうだねぇ。私的にはスレイン法国が気になるんだけど────先ずはバハルス帝国からからなぁ。それに、アインズは多分、リ・エスティーゼ王国で活動するだろうしね。」

 

実際にそうなるかは知らないがまあ、そうなるだろうと思う。確かに王国は金を稼ぐにはもってこいだが。主に八本指とかの件でね。そこに関しては既にラファエルの手に及んでいる所だ。今のところラファエルの諜報網は帝国、王国、法国に加え、聖王国、竜王国、ドワーフ国にまで及んでいる。竜王国とか中々気になる所だけど、いささか距離があるし、何よりビーストマンに滅ぼされかけてるとか。

 

更には最近ではアーグランド評議国とか言うのも耳にしている。流石にその国の情報は多くはない。今のところその国名と位置位しか情報はない。

 

私としてのこれからの戦略としてはやはりリ・エスティーゼ王国を取り込む方針で、多分私が女神だと言うことを全面に押し出せばスレイン法国も言うことを聞いてくれそうだ。

 

バハルス帝国は今のところ手の出せる余地は無いが、いずれこの帝国にも何かしらのアクションは起こしたいものだ。

 

第一優先目標としてはリ・エスティーゼ王国の掌握だ。具体的には八本指を制圧、支配下にすれば王国での大抵は通るだろう。その為に後ろ楯だがスレイン法国を利用したい。どうやらスレイン法国はリ・エスティーゼ王国を解体したい様子だったし、その為にバハルス帝国と争わせようとしている。その証拠が先の偽装襲撃なんだしね。で、スレイン法国だけど天使とかに随分と信心深いから私の言うことを聞いてくれそうなんだよね。ラファエルによるとかの国はビーストマンなる敵から人類を守るために様々な国に部隊を派遣しているようだし。

 

だから、それを盾に譲歩を引きずり出す。まあ、プラン変更だ。当初、バハルス帝国にギルドがあったため帝国に協力してもらおうかとも思ったけど、介在の余地は(今のところ)無さそうだし、それならば私の種族的に信仰の対象であるスレイン法国ならばと思った訳だ。実際に言うことを聞いてくれるのかは疑問に思うが交渉してみる価値はあるだろう。上手くいけば傀儡なり、支配下なりになってくれるだろう。まあそれはおいおいでいい。今はこの世界を楽しみたいし、そんな面倒事は後回しにするのが一番だ。

 

そうと決まれば早速冒険者になるための幾らか準備をしておこうと早速取り掛かることにした。

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

「なんやかんやで上手くいくもんだなぁ。」

 

一人アインズはそう独り言をこぼす。

 

先日のスレイン法国相手のシエルさんの交渉を思い出してみて思う。

 

「いやはや、まさかシエルさんがあそこまで凝って女神のロールをするなんてねぇ。」

 

まあ、そのお陰で情報をたんまりと引き出すことが出来たんですが。

 

実際、アインズの考えでは脅して情報を引き出すことが作戦だったし、どのみち殺すつもりであった。まあ、一人二人は魔法の実験に連れ帰ろうとも考えていたが。それもシエルの見事なロールにより無に帰した。その代わりにこの世界の様々な情報や状況を引き出すことが出来た上に、更に今後も情報を提供させることに成功した。いわば支配下だった。

 

彼等は恐らく天使様(シエルさん)に屈したのだろうな。何だかんだで天使か神のことを信仰しているんだろうし。

 

そんなことを考えている間に時間も過ぎた様で、アルベドがやって来た。

 

「アインズ様。先の件の処理は完了致しました。」

 

「うむ、ご苦労だ。さて、これからだが私は人間の街に向かいそこで冒険者になろうと思う。」

 

それを聞いたアルベドはかなり驚いたようでアインズに理由を尋ねた。

 

「まあ、理由としては更にこの世界の情報を得る為だ。他にも色々あるが─────」

 

ホントは楽しみたいだけなんだよなぁ。と、アインズは心中そう思う。

 

アインズ。いや、ここでは敢えて鈴木悟と言おう。

 

鈴木悟はこの異世界に来てからというもの、守護者達には過大な忠誠を向けられ、休む暇もなく、だから彼はこの世界を純粋に楽しみたいと思っていたのだ。

 

「─────主には私の名声を広げるためだ。」

 

と、内心とは関係なく無難な事を言った。

 

それを聞いたアルベドは何故か尊敬の眼差しで己の主人を見つめてこう言った。

 

「流石はアインズ様!!御自ら下等種族(人間)共の住みかに向かい支配されるのですね!!」

 

と、狂喜乱舞していた。これにはさしものアインズも宥めて宥めて、説得し、それは違うと言うことを説明したのだった。

 

前途多難だなぁ。

 

アインズはそう思った。

 

 


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